ゆったり織って 肌さらり 神藤タオル(もっと関西)
ここに技あり シャトル織機
旧式から最新の織機まで17台が稼働する工場。様々なリズムの機械音が複雑に絡み合い、「ザー」という豪雨のような音が響く。

神藤タオル(大阪府泉佐野市)は創業110年超の老舗タオル会社。フェースタオルやバスタオルなど一般的なタオルを作り続けながら、6代目の神藤貴志社長(33)が「世にないものを」と独自商品を展開する。注力するのが看板商品「インナーパイル」だ。
一般的なタオルは輪っか状のパイルが表面にあるが、段ボールの断面から着想を得た同商品は、ガーゼの内側にパイルを織り込んだ特殊な構造を持つ。厚みがありつつ軽量でやさしい肌触りが特徴だ。
その構造を可能にするのが約40年前に導入したシャトル織機と工場長の日根野谷徳広さん(78)の存在だ。横糸を通すための木製シャトルが左右に行ったり来たりする旧式で、横糸を空気の力で運ぶ最新のエアジェット織機に比べると動きが大きくゆっくりだ。そのため、1日に作れるのはバスタオルで20枚ほどと大量生産には向かないが、歯車などの部品がむき出しのため改造もでき調整の幅が広い。
日根野谷さんはこの道60年の大ベテラン。「機大工」として修理をこなしてきた経験を持ち、織機の仕組みを知りつくす。部品を削ったり別の部品を取り付けるなど改造を施すことによって、通常では織れない構造を可能にした。部品どうしがこすれて発する臭いや音から織機の異常も分かるといい、工場内を縫うように歩き、次々と調節していく。生地に触れるだけで、見えない内側のパイルの密度も判断する。
泉佐野市を含む大阪府南部の泉州地域は国産タオル発祥の地。泉州タオルは織った後に糸の油分やノリなどを洗い流す「後ざらし」という製法が特徴で高い吸水性を誇る。
廉価な輸入品の攻勢に苦しむ国内のタオル市場。泉州タオルのメーカーでつくる大阪タオル工業組合の加盟企業数は、最盛期の1983年には694社だったが、現在は85社にまで減少した。「海外からの安価な商品に品質や機能で対抗する必要がある」と話すのは同組合の樫井学専務理事。各企業は独自のタオル作りを模索する。
「価格と品質を下げず、新しいことをやれ」。神藤社長の胸には先代の祖父の言葉が刻まれている。「タオルという従来の枠にとらわれず、膝掛けやおくるみなど様々な用途で気軽に使えるものを目指したい」(神藤社長)。世界にも発信しようと2年前には自社ブランド「SHINTO TOWEL」を立ち上げた。使う人の生活に寄り添い、世界で愛される商品を紡ぐ挑戦は続く。
文・写真 大阪写真部 目良友樹

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