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パラスノボ金の成田緑夢選手、なぜ走り高跳びに挑戦

パラ卓球、岩渕幸洋選手と対談

東京パラリンピック出場への意欲を語る成田選手

2020年東京パラリンピックまで500日を切った。今後、日本代表の選考が本格化し、世界の舞台に立つ選手の顔ぶれに熱い視線が注がれる。日本経済新聞社は3月、都内でパラリンピアンの応援イベントを開催した。スノーボードから陸上走り高跳びに転向した成田緑夢選手、パラ卓球で世界の頂点を狙う岩渕幸洋選手をゲストに迎え、パラリンピックで戦うための工夫などについて聞いた。

――パラリンピアンとしての実績を自分自身はどう評価していますか。

成田 「昨年の平昌大会に出場してパラスノーボードで銅メダル(種目はスノーボードクロス)と金メダル(同バンクドスラローム)をとりました。左ひざ下の腓(ひ)骨神経まひという障害があり、左足首を上げることができません。これは比較的軽度な障害ですが、(出場したクラスの)競技レベルは高いため、その中でメダルがとれて良かったなと思っています」

岩渕 「(16年夏の)リオデジャネイロ大会に出場しましたが、成田さんのようにメダルを持って帰ることができなかったので、東京大会でリベンジできるようにがんばっています。昨年の世界選手権は3位。今は世界ランキング6位ですが、東京での金メダルを目指しているので、もっと高い順位にいないといけないですね」

――パラアスリートは道具をうまく使って競技力を高めていますね。

成田 「左足首を上げられず、左にターンできないので、スノーボードなのに、左足にはスキーブーツを履いています。ギプスをつけているのと同じで、(左足を)完全に固定した状態にします。そこで思いっきり、膝を下げることによって、つま先を上げて、ターンの動作をしています。走り高跳びでも、テーピングによって左足を固定していますが、動きが複雑なので柔軟性があるものにしています」

岩渕 「左の足首を自分の力で動かせないという生まれつきの障害があるので、『短下肢装具』という道具を使って足首を固定してプレーします。ただプレーしていると、3カ月ぐらいでヒビが入って壊れてしまいます。装具業者に調整してもらいながら装具を使っています」

競技力を高める方法について語り合う成田選手(左)と岩渕選手

――体の機能を有効に使うために、どんな工夫をしていますか。

成田 「スキーブーツを導入する前は、手でウエアをつかんで左足を引っ張っていました。これでも多少は左足のつま先が上がります。そんな方法で左にターンする練習をしていましたね。平昌大会でもその時の癖が残っています。左手が内ももの方に入っていたら、それは足を引っ張り上げているのです」

岩渕 「パラ卓球は相手の障害がそれぞれ違うので、それを見極めて相手の弱点を突きます。互いの強み、弱みについて駆け引きをしながらプレーするのがパラ卓球のおもしろさです。障害を抱える部位を鍛えるのもパフォーマンスの向上には大切です。以前は左足での片足立ちができなかったのですが、リオ大会後、(左右の)バランスが大事だと思い、練習をして片足立ちができるようになりました」

――成田選手がスノーボードを始めたきっかけは何ですか。

成田 「物心がついたころからスノーボードを始めていたのですが、12歳のときにやめて、スキーやトランポリンに取り組んでいました。フリースタイルスキーで14年ソチ五輪の出場を目指していたとき、足に重りをつけてトランポリンで練習をしていたら、足を滑らせてしまいました。膝がバキッと曲がって、そのまま病院に半年入院という感じです。その後、パラアスリートから『障害があってもスポーツは楽しめるよ』と聞いて、何かできる競技はないかと探したんです。スノーボードでパラリンピックに出られるならば最高だなと思いました」

東京パラで「金メダル獲得は最低条件」と話す岩渕選手

――岩渕選手がパラ卓球を始めた経緯を教えてください。

岩渕 「中学1年から卓球を始めました。当時は自分が障害者という意識はなかったですね。中学3年のときにパラリンピックの世界に挑戦できると知ったのが、本格的に始めた理由です。ただ障害者の試合に出てみると、(各選手に)障害を乗り越えるための戦術があって、最初はそれに対応できずにまったく勝てなかったですね」

――早稲田大学に進学してからは世界で戦える実力が備わりました。

岩渕 「早大卓球部は誰にでも門戸を開いていました。健常者のトップレベルの選手もいて、その中で卓球ができたのは、実力を伸ばせた理由としては大きかったですね。パラ卓球は独特で、ここに打てば(対戦相手が)対応できないというコースがあります。そうしたパラに特化した練習にも皆に協力してもらえたのです。(現在所属する)協和発酵キリンの卓球部でも健常者と一緒です。毎日、ボコボコにされながら練習できる環境です」

成田 「めちゃめちゃ良い環境ですね。仲間に恵まれているのは、最高にうらやましい。スノーボードでもフィンランドのマッティ・スールハマリ選手は健常者と一緒に練習していますから、バリバリに速いですよ。健常者と障害者が一緒に練習するのは、大切なテーマですね。障害の有無は関係なく、レベルが同じならば一緒にやればいい。パラリンピアンがやらなければならないのは、可能な限り、健常者のレベルに近づくこと。一方、健常者は(障害者と一緒に練習するのを)ブロックしないようにすればいいと思います」

――平昌でマッティ選手らを抑えて金メダルをとった後、スノーボードをやめたのはなぜですか。

成田 「母国で開催されるパラリンピックに出られるのは、なかなかレアだと思うんですよ。東京大会で自分の競技ができるアスリートはうらやましい。だから、何か出場できそうな競技はないかなあと思って、何種類もの競技をやってみました。パラ卓球もやってみたんですよ。走り高跳びは(2月の大会で)1メートル81センチを跳び、自己新記録を出しました。ただ世界ランキング6位ぐらいが(パラリンピックに)出場できるレベルと言われています。世界には2メートルジャンパーが4人いるので、(自分も)2メートルを飛びたいと思っています」

――岩渕選手は昨秋の世界選手権で銅メダルに輝きました。

岩渕 「リオ大会は予選敗退だったので、東京では金メダルが目標です。その道筋で世界選手権でメダルをとることは最低限必要と考えていました。最低ラインはクリアできたと思っています。リオではまったく何もできず、悲しかった。世界選手権ではチャンピオンであるベルギーのローレンス・デボス選手に負けはしましたが、1セットをとることができたので、自分にも勝てるチャンスがあると感じられる瞬間がありました」

練習方法などについて語る岩渕選手(右)と成田選手

――東京パラリンピックに向けた目標や決意を聞かせてください。

成田 「好きな言葉は『目の前の一歩に全力で』です。走り高跳びは始めたばかりの競技なので、正直に言えば、東京大会への出場は挑戦。出られるかどうかは自分の中でもわからないけれど、目の前の一歩に全力でやりきったら、結果はどうなるかな。とりあえず、自分にできる『全力で』は、やりたいと思っています」

岩渕 「東京大会では『金メダル以上』が目標です。パラスポーツは今、盛り上がっていますけど、東京大会で終わりになってしまったら悲しい。その先が大事だと思っています。だから、金メダルをとることは最低条件。20年以降にパラスポーツを盛り上げていくためにも、金メダルをとってパラスポーツのおもしろさ、すばらしさを伝えていきたいですね」

(聞き手は摂待卓)

成田緑夢 なりた・ぐりむ
1994年大阪府生まれ。2013年にトランポリンでの練習中の事故で左足に障害を負う。18年平昌パラリンピックに出場し、スノーボードバンクドスラロームで金メダルを獲得。現在はスノーボードから引退し、走り高跳びで20年東京パラリンピックの出場を目指す。
岩渕幸洋 いわぶち・こうよう
1994年東京都生まれ。両足に先天性の障害があり、左足ひざ下に装具を着用して卓球をプレーする。早大在学中にナショナルチームに入り、2016年リオデジャネイロパラリンピックに出場。17年協和発酵キリン入社。18年世界選手権で銅メダルを獲得。

◇    ◇    ◇

東証で初のスポーツイベント開催

2020年東京五輪・パラリンピック大会組織委員会と野村ホールディングスが3月30日と31日に東京証券取引所で小学生のスポーツ体験イベント「東京2020 Let's55 with 野村ホールディングス」を開いた。東証がスポーツ関連のイベント会場になるのは初めて。このイベントの一環として日本経済新聞社は30日にパラリンピアンの成田緑夢選手と岩渕幸洋選手による「パラアスリートトークショー」を開催した。

成田選手と岩渕選手はいずれも足の障害を乗り越えて、パラリンピックなどの国際大会で実績を残している一線級のアスリート。動かない足を抱えながらも競技力を高めるための工夫を凝らしているエピソードなどを小学生と保護者らは真剣に聞き入っていた。成田選手が平昌パラリンピックの金メダルを披露すると、金メダルを手に持った子供たちからは「ずっしりと重たいね」といった感想が聞かれた。

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