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日本企業が「外される」リスク(一目均衡)
アジア総局編集委員 小平龍四郎

2019/4/8 6:00
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ESG(環境、社会、ガバナンス)を重視する欧米の投資家と、東南アジア企業との緊張関係が続いている。

ノルウェー公的年金GPFGの運用を担うノルウェー銀行投資部門は、シンガポールの天然ゴム大手ハルシオン・アグリの株式を運用対象から外すことを決めた。ハルシオンのプランテーション事業が熱帯雨林の破壊につながりかねないと判断したからだ。

東証1部上場企業では時価総額ベースで6割近くが「統合報告書」を公表しているが……(東証、中央区)

東証1部上場企業では時価総額ベースで6割近くが「統合報告書」を公表しているが……(東証、中央区)

問題がある企業の株式を売却することで受託者責任を果たし、結果として企業に改革を促していく、「ダイベストメント(投資撤退)」という手法だ。ESG投資家の間で広がっている。

昨年9月にはシンガポールの大手農産物商社、シンガポールのオラム・インターナショナルがゴムや砂糖など、環境や健康の面で問題含みの事業から撤退すると発表した。決断の背景には、投資家から「外される」リスクがあった。同社の大株主、政府系ファンドのテマセク・ホールディングスは欧米流のESG投資で知られる。

国境を接するマレーシアでも事情は同じだ。同国を代表するプランテーション運営会社サイム・ダービーは、常にESG投資家や環境保護の非政府組織から攻撃されている。

「『マレーシア=プランテーション』の偏見も強い。我が国の市場は環境問題に関係ない企業の株式も欧米の投資家から売り込まれるリスクがある」。同国の機関投資家評議会副会長を務めるモハマドナシル・アブラティフ氏から、こんな話を聞いた。

評議会はマレーシアの企業統治改革の一環として設立された政府系の組織で、通常は企業に利益還元や情報開示を求める。ことESGに関しては企業側に立ち、欧米勢の誤解をただすこともある。それほどまでに「外される」リスクは高い。

欧米にはタイとマレーシアとシンガポールを区別しない投資家もいる――。東南アジア諸国を回ると、市場関係者のこんな嘆きも耳にする。欧米勢のアジア理解はまだ初歩段階のようだが、資金量にものをいわせ、アジア企業にもESGの判断基準をざっくりと当てはめてくる。

今やESG投資の規模は、全世界の投資マネーの約4分の1を占めるという。タイとマレーシアの区別もつかないような投資家の資金もその中に含まれている。そうならば、アジア企業は正しい企業価値を株価に反映させるための情報発信が欠かせない。マレーシアの評議会のような動きは広がるのではないか。

日本企業の取り組みはどうだろうか。

経営戦略や企業価値とESGの関係を記す統合報告書が、日本企業の間に広まっている。KPMGによると、2018年に統合報告書を公表した日本企業は414社と17年に比べて79社増加。東京証券取引所の市場第1部では、公表企業の時価総額は全体の6割近くに達している。これだけ見れば日本は「統合報告書先進国」であり、そう断言する専門家もいる。

しかし、である。

ESGの専門家、英オックスフォード大学のロバート・エクルズ客員教授らが実施した世界調査によると、日本企業の評価は米国やブラジルと並び、3段階評価で最も低い3位グループだった。アジアの韓国は2位グループ。新興国の南アフリカが最高の1位グループに入ったことも目を引いた。

韓国は市民団体の企業監視が厳しく、ESGの問題がブランド力に直結するという緊張感が強い。南アは証券取引所が統合報告書の普及を指導してきた長年の蓄積がものをいった。

日本企業は自社の経営にとって何がリスクであり、どこに収益機会を見いだそうとしているかといった説明が弱いと判断されたようだ。全般に報告書の記述が海外の企業に比べて「紋切り型でおおざっぱ」という印象を持たれてしまった可能性もある。

米ニューヨーク大学ビジネススクールのバルーク・レブ教授らは近著「会計の再生」の中で、米企業の業績の伸びや財務の改善と、株価推移の関係を分析している。それによると、利益と純資産の株価への反映度は、1950~60年には80~90%だったが、現在は50%にまで下がっているとの結論になった。

もうかっていれば株主も文句はないはずだ、とは決して言えない時代だ。レブ教授らは既存の財務諸表を大胆に組み替え、人材や知財など「見えない資産」を投資家に分かりやすく開示するよう提言している。経営者がESGへの取り組みや企業戦略を語る統合報告も、そうした財務諸表改革の延長線上にある。

日本の株式市場は今も、PBR(株価純資産倍率)が1倍に届かない企業が珍しくない。ジャパン・ディスカウントとも言うべき状態が続くのは、一つには、既存の財務諸表に載らない情報や企業努力が可視化されていないという理由もあるのだろう。

冒頭で紹介したノルウェー銀行でESG投資の判断をする倫理委員会は、ダイベストメント基準を公表している。環境問題だけでなく、人権侵害や腐敗、特定国への武器供与など幅広い項目が並ぶ。企業は実に多様な情報を発信し続けなければならない。さもなければ「外される」。ESG全盛時代の市場の怖さを、日本企業は実感しているだろうか。

(シンガポールで)

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