2019年5月23日(木)

1世帯の自転車保有数 滋賀トップ(もっと関西)
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関西
2019/4/4 11:30
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大阪は街中に自転車があふれている――。こんな印象を裏付けるデータを探すと、自転車産業振興協会(東京・品川)の都道府県別調査にたどり着いた。予想通り大阪府の1世帯当たりの自転車保有台数(2018年、推計)は1.508台で2位だったが、トップは同1.595台の滋賀県。担当者は「詳しい理由は分からない」と言う。全国一の「自転車県」のナゾに迫った。

県内でも特に自転車の普及に力を入れていると聞いて、守山市を訪ねた。出迎えてくれた地域振興・交通政策課の杉本悠太さん(36)は「住民の自転車利用を促してきたことで、『自転車の街』としてのイメージが定着してきた」と胸を張る。

市は16年度から、市民向けに自転車購入費用を補助する制度を始めた。指定された店舗(19年度は11店)で買うことなどが条件で、高齢者向けの三輪自転車、電動アシスト付き、幼児が同乗できるタイプ、長距離走に適したスポーツ用の4種類が対象。現在は最大1万5千円を補助する。電動自転車向けの補助は他地域にもあるが、スポーツ用は珍しい。毎年約200~300件の申請があり、19年度も継続する。

普及が進む背景には地形が関係している。市内は最も高い地点と低い地点の標高差が約22メートルと平たんで、自転車での移動に適している。自動車やバスに比べて環境に優しい交通手段として活用してもらう狙いもあるが、杉本さんは「『自転車の街』としての認知度を高め、愛好者を呼び込みたい」と力を込める。

補助対象となっているスポーツ自転車専門店「スクアドラ滋賀守山」。専務の草川岳士さん(42)によると、店内は普段から購入を検討したり、メンテナンスに訪れたりする地元客らで活気にあふれる。「店での出会いが縁となり、休日に一緒にツーリングに出かける人も少なくない」と草川さん。地域に根ざす店は自転車の普及を促すだけでなく、住民らが交流を深める場所にもなっている。

取材を進めると、「自転車の街」への取り組みは県レベルでも存在することが分かった。1周約200キロの琵琶湖を自転車で回る「ビワイチ」はその一つ。県随一の観光資源と自転車を連動させて新たな付加価値を付け、県内外から自転車好きを呼び込む狙いだ。

旗振り役は県内のNPOや企業などが09年に設立した「輪の国びわ湖推進協議会」。事務局長の佐々木和之さん(45)によると、ビワイチはもともと、琵琶湖周辺の小中高校生らの間で定着していた。地域に密着した文化を内外に広げようと、県と組んで琵琶湖を周遊するコースを紹介したり、シンポジウムを開催したりしている。

琵琶湖を一周した人には認定証も発行しており、17年は約1800枚に上った。ビワイチに挑戦しようと、近年は全国各地からサイクリストが琵琶湖を訪れているといい、佐々木さんは「自転車の魅力は日常生活からスポーツまで幅広い使い方ができること。今後もビワイチのブランド力を高める工夫を凝らしたい」と意気込む。

琵琶湖のイメージが先行しがちだが、滋賀県は近年、「長寿県」としても注目されている。厚生労働省によると、15年の都道府県別の平均寿命は男性が全国1位、女性は4位。禁煙対策やボランティアの健康推進員を通じた減塩指導など、県ぐるみの長年の取り組みが実を結んだとの指摘もあるが、県健康寿命推進課の担当者は「健康作りの基本は体を適度に動かすこと。自転車は年齢を問わずに使えるので、長寿県を維持していく上でも重要なツールになる」と訴える。

滋賀県の自転車事情を調べて強く感じたのは、平たんな土地や琵琶湖など住民には当たり前の存在の中に新しい価値を見いだし、魅力発信に生かしていること。人口減少など地方を取り巻く環境は厳しいが、全国一の「自転車県」の取り組みは、身近なところにこそ地域振興のヒントが埋もれていると教えてくれた。

(大阪社会部 島田直哉)

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