2019年8月18日(日)

中小賃上げ、サービスは大手上回る 製造業は足踏み

2019/4/2 22:08
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中小企業の賃上げ動向で、産業別の明暗が分かれている。人手不足感が強い食品・小売りなどは賃上げ率で大手を上回り前年実績以上の上げ幅となっている。一方で、製造業は賃上げ率が縮小した。米中貿易摩擦や大手企業のベースアップ(ベア)の抑制を受けて、昨年並みの賃上げをためらう中小も少なくない。

中小製造業の賃上げ動向には足踏み感が漂う

2019年の春季労使交渉では、中小の小売りや外食企業の賃上げ幅が大きかった。流通や繊維などの労働組合が加盟するUAゼンセンが3月下旬時点にまとめた集計では、定期昇給とベアを含んだ中小の組合の賃上げ率が大手を上回った。

18年と比較可能な166組合で組合員数が300人未満の組合は1人当たりの賃上げ額は月6631円となり、賃上げ率は2.44%だった。大手も含めた全体平均の賃上げ率(2.36%)を上回る。賃上げ率を前年と比較すると300人未満は0.14ポイント増だったのに対して、全体では0.04ポイント減だった。

沖縄県でレストランや結婚式場を運営するオービーエヌは19年春から基本給を8~9%(月2万~3万円相当)引き上げるベアを行った。レストランの客足は好調だが、ホテルなどの周辺のサービス業も賃上げが進んでおり「相場に合わせ賃金を上げないと人手が集まらない」(那須丈穂取締役)と判断した。同社の従業員数は約10人。人手不足で今年に入りランチの営業を中止するなど業務の見直しを進めている。

UAゼンセンの松浦昭彦会長は「中小の流通やサービス業では経営者の判断もあるので、今後も大手以上に高い賃上げが出る可能性はある」とみる。ただ、人手不足を受けて企業の体力以上の賃上げを迫られる可能性もあり、今後の課題になりそうだ。

一方、昨年に比べ足踏み感が出ているのが中小製造業だ。中小製造業を中心に構成するJAM(ものづくり産業労働組合)が2日発表した同日時点の集計結果では、組合員数が300人未満の平均賃上げ額は5708円となり、賃上げ率は2.2%となった。前年の賃上げ率と比べると0.03ポイント減った。

JAMの上部団体である金属労協の浅沼弘一事務局長は「中小と大手であまり差が無かった18年に比べて、19年は中小が相当な努力をして回答を引き出している」と強調する。ただ、要求を提出した金属労協全体の2567組合のうち回答を得たのは49%にとどまる。18年同時期の55%より少なく、交渉が難航したことを物語る。

精密金型のワークス(福岡県遠賀町)は昨年、定期昇給とベア込みで約2万円の賃上げをした。事業改革を進め高収益化を進めた結果だ。一方で今年は2千円前後の賃上げにとどまりそうだ。「米中貿易摩擦の影響で、受注が激減し一気に氷河期となった」(三重野計滋社長)

五輪需要に沸く建設業でも先行き不安感から賃上げをためらう企業が出ている。空調設備など設計・施工のローヤルエンジニアリング(東京・豊島)は昨年まで2年連続でベアと定昇込みで平均1万円超の賃上げを実施してきたが、今年は同水準に届かないもようだ。「資材価格が上がる一方で五輪後の受注減に備える必要がある」(河原八洋社長)

大手に比べて給与水準が低い中小は人手確保に苦しんでおり、業種を問わず大手よりも高い賃上げ率で踏ん張っている。一方で絶対額には依然大きな差がある。景況感の悪化が懸念されるなか、格差是正への道のりは遠い。

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