2019年5月20日(月)

アルジェリア大統領が辞任表明 長期支配下の経済閉塞に国民不満
強権下の「安定」危うく、中東危機の本質映す

中東・アフリカ
2019/4/2 18:40
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【ドバイ=岐部秀光】北アフリカの有力産油国アルジェリアのブーテフリカ大統領が4期目の任期満了となる28日を前に辞任する見通しとなった。今月に予定されていた選挙で再選に向け立候補を表明したことが、長期支配に反発する市民らの怒りを招いたためだ。しかし、エリート集団による不透明な支配の仕組みは維持されかねず、民衆は不信感を持ち続けている。そこにはアラブの権威主義国家に共通する「見せかけの安定」の危機も映る。

3月29日、アルジェでブーテフリカ氏の辞任を求めるデモに参加した人々=ロイター

2011年に中東に広がった「アラブの春」の波が8年遅れで、アルジェリアに戻ってきたかのようだ。アルジェリアでは19年2月にブーテフリカ氏が5選を目指し出馬すると表明して以来、大規模なデモが続いていたが、ようやく同氏が退任を表明したからだ。

同国は4200万の人口と、アフリカ最大の国土を持ち、アラブ人でも理解するのが難しい独特のアラビア語方言が話される。他のアラブ地域とは異なる歴史の時間軸を持つ国だ。

しかし、混乱と圧政が交互に出現するパターンは多くのアラブ諸国に共通する。民主化が進むとイスラム過激派が勢いを増し、強権的指導者がそれを力で抑えつけると経済が停滞し、再び過激派が盛り返す。今回も混乱が懸念される。

アルジェリアでは1980年代の原油価格低迷時には民衆の怒りをイスラム過激派が利用し、勢力を拡大。92年選挙でイスラム原理主義勢力が躍進したのをみた政府は軍を用いて強引に選挙に介入し内戦が泥沼化した。

ブーテフリカ氏は強引な取り締まりで過激派を掃討。その一方で軍や経済エリートで構成する「プーボワール(権力)」と呼ばれる不透明なネットワークによる支配の体制を築き上げた。

原油収入の増大で治安は安定したが、がんじがらめの規制と汚職がはびこる中で、経済は活力を失っていった。

過激派を完全に封じ込めることができたわけでもない。13年1月には南東部イナメナスにある天然ガスプラントでイスラム過激派によるテロが発生し、建設にかかわっていた日揮の社員らが死亡する事件が起きた。

「アラブの春」をブーテフリカ氏が乗り切れたのは、原油の販売収入を元手に、公務員給与の引き上げや様々な手当て、補助金の支給で民衆の歓心を買うことができたからだ。しかし、危機の緩衝材の役割を果たしてきた外貨準備高はピークから半減した。

雇用環境の厳しさを実感する若者たちは、自分たちが親の世代よりも豊かになれない現実を、まのあたりにしている。既得権益をにぎる独立戦争の英雄ら高齢者と、若者たちの世代間対立が先鋭化しかねない。

13年にブーテフリカ氏が発作で倒れて以降、発言する姿を誰も目撃しないようになると、プーボワールによる不透明な支配システムは一段と強固なものになった。ブーテフリカ氏が出馬を断念したとはいえ、国民が期待する民主化が進むとは限らない。

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