多部未華子 リラックマとの暮らし、意外にシュール
恋する映画 『リラックマとカオルさん』の声優熱演

癒やし系クマのキャラクター「リラックマ」が、4月19日より配信がスタートするNetflixオリジナルシリーズのアニメ『リラックマとカオルさん』で帰ってくる。本作は全13話からなるリラックマ初のストップモーション・アニメ(コマ撮りアニメ)としても注目を集めている。カオルさんの声の役を務めた実力派女優の多部未華子さんに、作品づくりの裏側や共感したエピソード、初挑戦した「プレスコ」(映像よりも声を先に録音する手法)の感想などを聞いた。
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忙しい毎日を乗り切るために欠かせないものといえば、心がリラックスできる時間。そんなときにぴったりの癒やしを与えてくれるキャラクターの筆頭といえば、子どもから大人まで長年にわたって愛されているリラックマです。もともとリラックマは、「都内に住むアラサーOLのカオルさんの家に住み着いている」という設定。それゆえに、本作ではカオルさんとリラックマ、さらにコリラックマとキイロイトリとのちょっぴり奇妙な同居生活が描かれています。

全体的に刺さる部分が多い作品
――リラックマは2003年に登場して以来、国内外で高い人気を誇っています。リラックマに対して、どのような印象をお持ちでしたか。
多部未華子さん(以下、多部):もちろんリラックマのことは知っていましたが、背中にチャックがあることや、初めて知ることも多かったですね。「実は中におじさんが入っているらしい」という噂もあるみたいですが、意外とシュールな作品なんだなと思いました。
――リラックマは一見子ども向けのようですが、実際は大人の女性の方が共感度の高い作品。多部さんはカオルさんを演じてみてどのように感じましたか。
多部:私も共感するところがたくさんありました。例えば、会社の同僚から辛辣なことを言われたときに平然を装ってしまうところや、女友達と花見の約束をしたのにその友達に彼氏ができたから来られなくなったところなど、「わかる、わかる!」みたいな感じでした。
――多部さんもカオルさんのように女子会をされることはよくありますか。
多部:女子で集まることは多いですが、友達が妊婦さんだったり、子どもを旦那さんに預けていたりすることもあるので、最近は前よりも早めに集合をして早い時間に解散するようになりました(笑)。
――カオルさんというキャラクターは、ちょっとこじらせているようなところもありますが、ご自身にもそういう部分はありますか。
多部:ありますね。例えば、人とは違うポイントで悩みがちなところです。あまり考えなくてもいいところでリスクを考えてしまうので、「そこでそんなに悩むのだったら、この前はっきり結論を出していたこっちをもっと悩むべきなんじゃない」みたいなことはよく周りから言われますね(笑)。
――本作では映像よりも声を先に録音する「プレスコ」という方法に挑戦されたそうですが、いかがでしたか。
多部:そもそも声だけというのは難しいのですが、今回は私の声に合わせて表情をつくることもできると言っていただいていたので、それが支えになっていました。アフレコでは出来上がった映像に秒数ごとに照らし合わせてセリフを言わなければいけないですが、プレスコだと逆に自由にできるところもありましたし、人がリラックマを動かしている映像も見せていただけたので、やりやすい環境にしていただいたと思っています。
忙しい日々で癒やされる瞬間とは
――今回はリラックマたちとの不思議な同居関係が描かれていますが、多部さんもこんな生活をしてみたいと思いますか。
多部:どうでしょうか……。でも、いまは飼っている犬といるときが私にとって癒やしの時間なので、「話せたらいいな」とたまに思うこともあります。でも、きっと話せたら話せたで、「ご飯もっと入れてよ」などと言われ始めたりして、うるさいと感じるかもしれないですね(笑)。

――確かに、わからないほうがいい場合もありますよね。そんなカオルさんとリラックマたちが暮らすお部屋もかわいらしいですが、どのように感じましたか。
多部:こぢんまりとしたアパートの一室ですが、とても丁寧に描かれています。色合いや全体の世界観もかわいくて、すてきだなと思いました。
――ちなみに、多部さんはご自身のお部屋でこだわっているところはありますか。
多部:友達にカメラマンがいるので、写真展に行くたびに気に入った風景やお花の写真を見つけてはサイズを大きくして家に飾っています。ただ、それがどんどん増えていって、いまでは家がギャラリーみたいになってしまいました(笑)。
いつでもチャンスは逃したくない
――本シリーズではいろんなエピソードが描かれており、カオルさんが占いにハマる回などは共感する女性も多いと思いますが、多部さんはいかがですか。
多部:私もカオルさんみたいに占いにハマることもありますが、楽しいですよね。よく当たると言われている人がいるお店へ会いに行ったこともあるくらいです(笑)。
――そのほかにも、配達のお兄さんを好きになって、ネットショッピングをどんどんしてしまう回も印象的ですが、そういうアプローチの仕方も理解できますか。
多部:そうですね。ただ、これはあくまでも妄想ですが、もしコンビニの店員さんがかっこよかったら、毎日通って顔を覚えてもらうのではなく、私はすぐに連絡先を渡すタイプだと思います。特に積極的というわけではないのですが、「いつかする」というのができない性格で、チャンスを逃したくないんです。
――ということは、その部分に関してはカオルさんとは正反対なんですね。
多部:そうかもしれないです。ですが、それしか会う口実がなかったら、わかる気もします。とはいえ、カオルさんと違うのは、もし好きだと思っていたら、「あなたに好意があります」くらいは伝えてしまうかもしれないです(笑)。

――出来上がったものをご覧になったとき、作品全体をどのように感じましたか。
多部:今回は一話ずつがとても短いのですが、すべてがちょうどいい絶妙なバランスだなと思いました。そして、最後にまとめの一言のようなものが毎回ありますが、少し心に留まるくらいの言葉がすごくいいと思います。
――ちなみに、多部さんが普段から大切にしている言葉はありますか。
多部:具体的な言葉ではないですが、最近思うのは言霊は本当にあるんだなということ。それは、言った通りに次から次へと夢をかなえていく友人の姿を見て、実感しているからです。
なので、以前はネガティブなことも結構言っていましたが、いまは「ダメかも」と思っていても、口では「うまくいく」とポジティブなことを言うようにしています。自分の思考を切り替えるのはなかなか難しくても、前向きなことを言うことはできますから。
好奇心旺盛なので挑戦することが楽しい
――今年で30歳を迎えましたが、心境の変化はありましたか。
多部:あまり年齢を気にしないので、何も変わらないですね。とりあえずいまは、「健康に気を付けて、栄養のあるものを食べる」というのが、30代への意気込みです(笑)。

――映画、ドラマ、舞台と幅広くご活躍されていますが、挑戦することの楽しさはどんなところですか。
多部:この仕事はとにかく挑戦の連続。新しいジャンルや作品だけでなく、出会う監督さんや演出家さん含め、同じことはひとつもないので、毎回緊張しています。でも、私は好奇心旺盛な性格なので、そういう意味では自分に合っていると思いますし、おかげで毎日楽しく仕事ができています。
――デビューされて15年以上がたちますが、女優としてやりがいや喜びを感じるときはどんなときですか。
多部:体力的に辛いことも多いですが、ひとつの作品に向かっていろんなプロの人たちが集まって、いいものを作ろうとするところにやりがいを感じています。そんなところがすてきだといつも思っていますし、そういう現場にいられることが幸せです。
――最後に、同じ働く女性に向けて一言お願いします。
多部:30代からはさらにキャリアを積んで、やりたいことをできようになる人も多いと思うので、これからも好きなように自分の道を進んでいってほしいなと思います。

【キャスト】多部未華子ほか
【スタッフ】原作:脚本:荻上直子/音楽:岸田繁・主題歌:くるり「SAMPO」/ クリエイティブアドバイザー:コンドウアキ/
監督:小林雅仁/製作著作:サンエックス株式会社/監修:サンエックス"リラックマチーム"/
アニメーション制作:ドワーフ
13話・各11分/4K対応
【ストーリー】
都内の小さな商社で働く普通のOLカオルさん。ひとつ変わっているのは、リラックマとコリラックマ、さらに掃除が大好きなキイロイトリと暮らしていることだった。真面目で少しコンプレックスを抱いているカオルさんとのんきな生活を送るリラックマたち。そんな彼らの温かくて、ほろ苦い12か月が描かれている。
(ライター 志村昌美、写真 武田光司、ヘアメーク 赤松絵利=ESPER、スタイリスト 轟木節子)
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