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日本の大学運動部は男性ばかり? 女性の成長機会奪う

ドーム社長 安田秀一 学生スポーツの機会均等(下)

全国高校駅伝で活躍した女子選手も卒業後は実業団が活動の中心となることが多い(2016年12月)=共同

米スポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店、ドームで社長を務める安田秀一氏が前編(「女性CEOの8割が運動部系 米国学生スポーツの公平」)に続き、学生スポーツの意義と価値を説きます。米国では教育における男女の機会均等を求める「タイトルナイン」という法律が制定されています。同氏は自身の経験を踏まえつつ、日本で真の平等を実現するための環境改善を若者と国に対して提言しています。

◇   ◇   ◇

日本の大学運動部に関しても伝統的に「体育会は人を成長させる」 という考え方はあります。ところが、その中身は「忍耐力がつく」とか、「指示に従う」といった程度のものばかり。僕自身も法政大学アメリカンフットボール部出身ですが、就職活動の時に先輩たちから「体育会らしく元気をアピールすること!」というステレオタイプ的なアドバイスをされました。スポーツの価値はそんなに単純ではなく、もっと深いものです。

アメフト経験が企業経営に生かされている

僕は大学時代にアメフト部のキャプテンを務めました。最大の目標は当時無敵だった、篠竹幹夫監督率いる日本大学を倒すことでした。勝ちたいのはもちろんですが、自分がどこまでできるのか、つまりは「人生のリトマス試験紙」になると感じていました。4年生の時に日大の連勝記録を止めたのですが、勝利の満足感よりも、これから長く続く人生への自信を手に入れたと感じました。勝利に向けて、綿密な戦略を立て、それを着実に実行する方法を考える。部員全員にそれを浸透させる。必死で取り組んだ当時の経験が、現在の企業経営においてどれだけ生かされているか。ここで書ききれるものではありません。

日本で大学運動部への参画率は男子が圧倒的に高いと思います。マラソンもバレーボールもバスケットボールも、高いレベルの女子アスリートは高校卒業した後、実業団がその活動の中心になります。スポーツは充実した人生を送るために必要な能力を育ててくれるのに、学生時代にそれを享受するのは男子ばかりというのはおかしな事態です。運動部に入るかどうかは個人の自由だから差別ではない、という考え方もあるでしょうが、現実にこうした状況が生まれる理由があるのです。学生スポーツの指導者には男性の方が多かったり、軍隊的な慣行や厳しい上下関係、体罰やパワハラ体質を抱えることと無縁ではないでしょう。

男女の平等という課題解決には、さらに先があります。この課題に真剣に向かい合うと、さらに立場の弱いマイノリティーの存在にも気がつくようになります。数が少ない人々が理由もなく我慢を強いられる社会への疑問も生まれます。このコラムを読んだ若者たちが、これをきっかけに米国の法律「タイトルナイン」とそれがもたらした変化に関心を持って、検索して、日本の社会をどう変革していくべきか、そんなイメージを持ってくれたらと思います。

ソフトボールなど人気の女子スポーツもあるが…(2018年6月)

もちろん、大学スポーツへの女性の参画率が上がればリーダーとして活躍する女性がすぐに続々と誕生するわけではないでしょう。ドームはスポーツ好きが集まる会社なので、女子社員の7、8割が大学の運動部出身、高校まで含めればほぼ全員がスポーツを経験しています。ただ、リーダーとしての資質をみれば、明確な男女差があると感じています。

真の男女平等へ法律の整備を

そこには高校や大学の部活動における男女のヒエラルキーとか、複雑な問題が絡んでいると思っています。そうなってしまう要因がどこかにあるわけです。まずは部活に参加している個人が、タイトルナインを学び、今すぐ改善できることをすることだと思います。同時に、国としてスポーツが人を成長させる価値をきちんと定義し、高校や大学で男女がスポーツに平等に参画できるように法律や制度を整備することです。阻害要因は徐々に取り除かれ、リーダーの資質を開花させる女性は確実に増えていくでしょう。

少なくとも会社など組織の役員に女性を増やすという、出口で数字の帳尻を合わせる方法より、社会は確実によい方向に変わっていくと思います。

かくいう僕も、学生時代は運動部に入る女性が少ないのは当たり前だと思っていました。「男らしい」のはカッコいい。スポーツこそ男らしさの象徴のように考えていました。でも、タイトルナインを知り、学んでいくことで、そんな自分がとても恥ずかしくなりました。以来「男らしい」という言葉は使っていません。「男らしい」=「カッコいい」という考え方が女性の機会を奪っている。タイトルナインのおかげで、そんな考え方を持てるようになりました。今の僕の方が少しばかり「カッコいい」と、僕は思っています。

安田秀一
1969年東京都生まれ。92年法政大文学部卒、三菱商事に入社。96年同社を退社し、ドーム創業。98年に米アンダーアーマーと日本の総代理店契約を結んだ。現在は同社代表取締役。アメリカンフットボールは法政二高時代から始め、キャプテンとして同校を全国ベスト8に導く。大学ではアメフト部主将として常勝の日大に勝利し、大学全日本選抜チームの主将に就く。2016年から18年春まで法政大アメフト部の監督(後に総監督)として同部の改革を指揮した。18年春までスポーツ庁の「日本版NCAA創設に向けた学産官連携協議会」の委員を務めたほか、筑波大の客員教授として同大の運動部改革にも携わる。

(「SPORTSデモクラシー」は毎月掲載します)

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