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イチローが語る「頭を使わなくてもできる野球」とは
スポーツライター 丹羽政善

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2019/4/1 6:30
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もう長く、マリナーズのクラブハウスへ行くと、ロッカーにイチローがいるかどうか確認するのが当たり前のようになっていた。ホームの場合、入ってすぐ正面にその場所はあった。整然としていたそこには今、段ボールが無造作に置かれ、もうイチローが使っていたという痕跡は消えている。

引退から1週間。米国に戻り、マリナーズの2019年シーズンが改めて開幕したが、フィールドにはもはや「51番」の背中はない。まだ実感がわかないが、いつかそれも当たり前になるのか。

3月28日、レッドソックスとのホーム開幕戦を戦うマリナーズ。イチローのいないシーズンが始まった=AP

3月28日、レッドソックスとのホーム開幕戦を戦うマリナーズ。イチローのいないシーズンが始まった=AP

3月27日、東京からシアトルに戻った。珍しく日本より早く、街の桜が咲き誇っていた。

おそらく今後、長く語り継がれるであろう、あの深夜の引退記者会見。これからも折に触れて取り上げていきたいが、誤解されて伝わったり、そもそもどう解釈していいか分からない、という言葉も少なくなかった。

例えば、「頭を使わなくてもできてしまう野球になりつつある」という一言。どこかで、パワー全盛で本塁打が乱れ飛ぶ派手な野球、と説明されていたが、それは20年以上も前の話である。

もちろん、そういうことではない、イチローが危惧しているのは。

もう2年半以上も前のこと。イチローにスイングスピードについて聞いたことがある。

打率が.229に終わった15年と.291だった16年。比較すると、後者の平均スイングスピードが、明らかに速くなっていた。そのスイングスピードの増加は、何を意味するのか。

スポーツバイオメカニクスが専門で、国立スポーツ科学センターで野球の打者のスイング技術の評価を研究している森下義隆さんに伺うと、例えば、100キロと90キロのスイングスピードを比較した場合(始動からコンタクトまでの時間を0.15秒と仮定)、同じポイントでボールを打つとすると「100キロの方が、約20センチ分遅くスイングを開始することが可能になる」とのことだった。

その20センチを時間に置き換えると0.015秒。150キロの球で考えれば、0.015秒で約60センチ、ボールが進む計算だという。その解釈をイチローに求めると、「0.015秒と聞いただけで、そりゃ、デカイ」と即答だった。

「全然、違う。でも、わざと遅くしているケースだってある。単純な比較はできないから難しいところだけれど、本当に振った結果としてその差が出ているなら、それは、デカイよね」

そのデータの意味を理解しているか

わずか0.015秒。しかし、そこには情報量が詰まっている。

が、そこから何を読み取るかは、選手次第だ。その意味を理解したときに初めて、そうしたデータは価値を持つ。ところが、今の大リーグは、スイングスピードや打球の初速が速ければ速いほどいい、と短絡的に考えている選手が少なくない。イチローが憂えているのはそこだ。

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