フェイスブックCEO、悪質投稿「規制当局の役割必要」

2019/3/31 8:50
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【シリコンバレー=中西豊紀】米フェイスブックの最高経営責任者(CEO)は30日、悪質な投稿対策などへの考え方をインターネット上に投稿し「政府や規制当局の活発な役割が必要だ」との見解を示した。企業単独では悪質性の判断が難しい投稿も多い中、政府の介入を容認したかたち。自由を重んじるネットの世界で、その中核企業が転換を模索しはじめた。

ワシントンでの公聴会に臨むザッカーバーグ氏(左)。同社のビジネスモデルの「逆回転」はこの時に始まった

マーク・ザッカーバーグCEOが同日発行の米ワシントン・ポストの意見ページに寄稿。同じ文言を自身のフェイスブックページにも書き込んだ。

「4つの分野で規制が必要」とする同氏があげたのは(1)人を傷つけるような悪質投稿、(2)公正な選挙、(3)プライバシー、そして(4)個人データを企業をまたいだサービス間で移管可能にするデータポータビリティーだ。

特にザッカーバーグ氏が重視するのは悪質投稿への対応と見られる。15日のニュージーランドでの銃乱射では犯人による事件の中継投稿を許し世界の批判を浴びた。28日には住宅広告に差別があるとして米住宅当局から提訴された。世界で20億人超が使う同社サイトは、不正なコンテンツも集まりやすい。

同氏は「政治家はよく我々が人の発言に強大な影響力を持っていると言うが、正直その通りだ」と投稿。そのうえ「我々だけで発言内容について重要な決断をくだすべきではない」との考えを示し、「規制当局が何を禁じるかの線引きをし、企業にコンテンツ摘発の最低ラインを求めるべきだ」との見解を示した。

「自分たちだけでなく責任を各国政府にも負わせる」(元フェイスブック幹部)というしたたかさもちらつく今回の意見表明だが、巨大化したいまのネット企業がかかえる限界も代弁してはいる。

フェイスブックは現在、人工知能(AI)を駆使して悪質投稿の摘発を進めているが、「何が悪質かを最初に決めるのは人」(ダートマス大コンピューターサイエンス学部のハニイ・ハリド教授)という点で、限界がある。さらにその人も、国や文化で異なる「悪質性」の線引きに直面し、ヘイトスピーチなどで摘発ミスが相次いでいる。

悪質投稿や広告のまん延についてはグーグルやツイッターなど巨大ネット企業全体に批判が集まっており各社は対応中だ。とはいえフェイスブックだけで一日20~30億もの投稿があり、いたちごっこは終わらない。「民間努力に加えて国も摘発基準となるルールを定めるべきだ」(グーグルの広告部門幹部)との声は複数企業から出ていた。

今回の声明が、日本も含めた各国当局を動かすきっかけになるのかは現時点では不透明だ。プライバシーでは米国でも欧州の一般データ保護規則(GDPR)に近いルールの整備で議論が進む。一方で過度な規制は資金力に劣る他社を市場から締め出しかねないとの意見も根強い。不正排除に向けたフェイスブック自身の行動も欠かせない。

ここ数年、米ネット企業のなかでザッカーバーグ氏ほど各国政界や政府の糾弾を浴び続けている経営者もいない。社会的な「裁き」が始まっているなかで、執行猶予を求めるいいわけに規制強化を持ち出しては本末転倒。誕生から50年を過ぎたインターネットがこの先も社会で支持され続けられるか。同氏だけでなく関係する企業や政府すべてが時代の転換点に立っている。

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