鴻海、営業益2割増 18年、市場予想上回る
【台北=伊原健作】電子機器の受託製造サービス(EMS)世界最大手、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が29日に発表した2018年12月期連結決算は、営業利益が1361億台湾ドル(約4880億円)と前の期比21%増えた。2期ぶりに増益となった。米アップルのスマートフォン(スマホ)の販売不振で苦戦が見込まれていたが、市場関係者の予想を上回る採算の改善を見せた。

売上高は12%増の5兆2938億台湾ドルだった。鴻海は売上高の5割超をアップル向けが占めてきた。iPhoneの販売が苦戦するなか、中国勢のスマホやデータセンターのサーバーなど新たな需要の開拓が進んだ。
純利益は1290億台湾ドルと7%減った。前の期は保有するシャープ株式の一部を売却したことで利益がかさ上げされており、その反動が出た。
鴻海は売上高が伸びている半面、コスト削減要求が厳しく採算悪化につながる中国スマホなどの比重が高まり、利益では苦戦が予想されていた。今回の決算では10~12月期の純利益額は調査会社リフィニティブがまとめた事前のアナリスト予想の平均を約7割上回り、「信じられない改善だ」(台湾の投資顧問企業)との驚きの声が出ている。
鴻海は「売上高が増えたため」とし、利益改善の背景について詳細な説明をしていない。市場ではスマホに比べ採算性が高いサーバーの比率が高まったり、高精細の有機ELパネルを搭載したiPhoneの生産ノウハウの蓄積によって良品率が改善したりした可能性が指摘されている。
一方で先行きには課題が山積している。主力拠点の中国では人件費の上昇が続き、採算を圧迫している。18年12月期の売上高営業利益率は小幅に改善したものの、2.57%となお低水準だ。16年に買収したシャープと付加価値の高い独自ブランド事業を模索するが、成果はまだ見えていない。
米中貿易摩擦も懸念材料だ。中国で生産した製品を米国などの市場に送り出すビジネスが主体のため、米国が中国からの輸入品に対する関税を一段と引き上げれば悪影響が広がる。株価は1年間で3割超下落しており、今後本格的に上向くか不透明感もある。