「次のがん治療薬」で競争激化 第一三共、新薬開発で英社と提携

2019/3/29 18:30
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次世代のがん治療薬を巡る主導権争いが激しくなってきた。第一三共は29日、新型の医薬品の開発・販売で英アストラゼネカと提携し、最大69億ドル(約7600億円)を受け取ると発表。がん治療薬の世界市場は今後5年ほどで25兆円に倍増するとの予測もある。「オプジーボ」など現在主流の免疫薬に続く成長領域を狙い、世界の製薬大手がしのぎを削る。

「アストラゼネカはがん治療薬で豊富な経験があり、単独の場合より薬の価値を高められる」。第一三共の中山譲治会長は29日の記者会見で提携の意義をこう説明した。

対象の薬は第一三共が開発中の「トラスツズマブ・デルクステカン(開発名DS-8201)」。2019年度前半に乳がんを対象に米国で承認を申請する計画で、肺がんや胃がんの臨床試験(治験)も実施中だ。

提携では今後の治験などの費用を両者で折半する。売上高については、日米欧が第一三共、中国や豪州などその他の地域はアストラゼネカがそれぞれ計上する。

第一三共はがん治療薬の経験がほぼないが、アストラゼネカは収入の3割をがん治療薬で稼ぐ。中山会長は「販売する地域や対象疾患を素早く広げられる」と強調した。

巨額の資金が動く背景にはがん治療薬市場の急拡大がある。先進国の高齢化などでがん患者は増加が続き、18年に新たにがんを発症した人は世界で1800万人。薬の使用機会が増えるため、英調査会社エバリュエートによると世界市場は17年の1040億ドルから24年に2330億ドルとなる。

日本の製薬各社は化学合成で製造する「低分子薬」を主な製品としている。一方、欧米企業は生物の力を利用する「バイオ医薬品」に強みを持つ。バイオ医薬品は効果が高いとして、日本企業も開発を急いでいる。14年に小野薬品工業が発売し高額薬として話題となったオプジーボなども「がん免疫薬」と呼ぶバイオ医薬品の一種だ。

トラスツズマブ・デルクステカンはADC(抗体薬物複合体)と呼ばれるバイオ医薬品の一種。目標のがん細胞にくっついた後で薬物を投下し、がん細胞だけを効率的に攻撃する次世代薬として期待されている。第一三共のADC技術は世界でも評価が高く、アストラゼネカが巨費を払って販売権を手に入れたのはその裏付けとも言える。

ADC以外にも新型の薬が相次ぐ。ウイルスをがん細胞に感染させる「腫瘍溶解性ウイルス」は米アムジェンが発売済みだ。スイス・ノバルティスが製品化した「キムリア」のように細胞を遺伝子操作した「細胞医薬」や、遺伝子の成分である核酸を活用した「核酸医薬」の開発も加速している。

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