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災害伝える無人スタジオ AIアナウンサー「ナナコ」(もっと関西)

ここに技あり

関西を昨年直撃し、大きな被害をもたらした台風21号。台風が通過した9月4日、ラジオ局「エフエム和歌山」は和歌山市で深夜の午前1時まで災害情報を提供し続けた。放送を支えたのが人工知能(AI)アナウンサー「ナナコ」だ。2017年7月から同局が活用している。

原稿を読む「ナナコ」の画面が薄暗いスタジオに光る

コミュニティFMは、災害時には地域住民の貴重な情報源となる。同局の従業員は現在8人だが、AIアナを活用するとスタジオが無人でも放送することができる。緊急時は限られた人員を情報収集などにも充てることができるため、全国のラジオ局から注目を浴びている。

同局でAIアナが話す声を聴いてみた。事前に知っていなければ、人間と区別ができないほどの自然な声だ。米アマゾン・ドット・コム子会社が提供するテキストの読み上げサービスを使って作っている。アマゾンへの支払いは年間千円程度だ。

AIがアナウンス技術を日々学習しており、間の取り方なども以前に比べ上達しているという。開発に携わったクロスメディア局長の山口誠二さんは「あと数年で人間と変わらなくなるでしょう」と笑う。

システム開発の契機となったのが11年の東日本大震災だ。山口さんは東北に設置された臨時災害FM局を視察した。人手不足のため災害情報の発信が1日数回だけにとどまる局もあり、「自動で放送できないか」と考えた。ウェブエンジニアをしていた経験を生かしてシステムを開発。ラジオ放送のノウハウをもとに、合成音声で読み上げやすいようにルビや句読点の位置などを自動修正するプログラムを作成した。

開発したシステム「オンタイムプレーヤー」は、AIアナがニュースや天気予報などの情報を取得し、あらかじめ設定した時刻に自動で放送する。普段は人間による生放送が始まる前の朝の放送を担っており、AIアナは今や同局にとって立派な「同僚」となっている。

災害時のシステム「ダカーポ」は、原稿を人間が用意する必要があるが、AIアナが従業員が入力した災害情報や救援情報、安否情報を繰り返し放送し続ける。情報はスタジオ外から上書きすることができ、従業員は家にいながら作業することが可能だ。リスナーは災害時、いつエフエム和歌山を聴いても最新の関連情報を得られる。

和歌山県では近い将来、南海トラフ地震で甚大な被害が出ると予想されている。今後、大きな台風が来ることもあるだろう。そんなときナナコは力強い味方になってくれるに違いない。

文 和歌山支局長 細川博史

写真 淡嶋健人

 カメラマンひとこと 実体のないAIアナウンサーはカメラマン泣かせの被写体だ。どう撮るか頭を悩ませながら、過去の実績をリサーチする。関西空港が孤立した昨年の台風21号時には、和歌山県内で停電が発生する中、情報を発信し続けたと分かった。照明を落とした無人のスタジオにぽつんと光る画面で、非常時に人の手を介さず放送する様子を表現した。

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