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あばら骨、開いてますか? 良い姿勢の源を探る

ランニングインストラクター 斉藤太郎

9月15日に開催されるマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)とその先の東京五輪に向けて、男女マラソン界が盛り上がっています。NHKの大河ドラマ「いだてん」からも刺激を受けて走り始めようとする方、久々に本腰を入れて走ろうという方がこの春は多いのではないかと思います。

気楽に始められるランニングですが、走り出して1~2カ月でどこかを痛めてしまうこともあります。健康的に走り続けるためには、第1にウオームアップや終了後のストレッチの習慣化、第2にはランよりも着地衝撃が少ないウオーキングに取り組むこと。長く運動から遠ざかっていた方でしたら「20分ウオーキング+10分ラン」といった割合からスタートし、様子を見ながら徐々にランの比率を高めていきましょう。

そして、特に重要なのが第3のポイントとなる姿勢とあばら骨。今回はこれについてのお話です。

痛みの原因は姿勢のゆがみかも

2本の脚で体を垂直に支えて生活している私たちの姿勢。骨盤が前傾して腰の骨(腰椎)が前にカーブを描きます。右側から見ると背筋は「S」の字を描くようにカーブしています。このカーブが着地衝撃をうまく分散してくれます。悪い姿勢では腰椎のカーブが失われ、骨盤が垂直または後傾に。頭は前に出て、左右の肩甲骨の距離は離れます。胸元や両肩は前に縮こまり、後ろ側は伸ばされているような猫背姿勢になります。

このようにバランスが崩れた姿勢で走っている方が多いと感じています。崩れている姿勢で走ると、やがて膝や腰を痛めることになります。違う言い方をすると、痛みや違和感の原因を探っていくと、おおむね姿勢のゆがみにたどり着くのです。

バランスの崩れた姿勢で走ると、膝や腰を痛める原因になる

姿勢の良しあしの見分け方の一つで、私が今注目しているのは、あばら骨とその間にある肋間筋(ろっかんきん)の柔軟性です。上半身、内臓を守るように体の裏側にある脊椎から前側の胸骨に向かって12対の骨がつき、鳥かごのようになっています。深い呼吸はランニング能力を大きく左右しますが、肺もこの鳥かごの中に存在します。あばら骨周辺を緩めることで姿勢が整い、呼吸が深くなり、フォームに柔軟性をもたらします。

あおむけに寝てください。両腕を真横に開いたところから45度上げて万歳の体勢。両腕が床に接した状態を保てるでしょうか。浮いてしまう方は、あばら骨周辺が硬いと思ってください。あばら骨が緩んでいる状態では深い呼吸換気ができます。胸元や両肩といった体の前側はリラックスできていて、ゆったり広くなります。後ろ側の肩甲骨は左右が近づき、背中側が活性化します。

しなりをイメージ、ウエアのしわでチェック

背中側の筋肉のスイッチがオン。前側がリラックス。体の中心線を境目に右左がしなるフォームが理想です。腕振りは腕のみで行うのではありません。鎖骨、肩甲骨、あばら骨を含む上体で生み出すしなりのスイングを総称し、そんな腕振りで下半身に力を伝えているのです。

胴体をたくさんのゴムが縦に通る束とイメージしてください。左右に軽くしならせると元に戻ろうとします。胴体からしなりが繰り返されることで腕も脚も前後に振れる。そんな力の伝達ができてくると、とても楽に走れます。できているかの目安として、ウエアが斜めに引き伸ばされてしわが寄るような動きになっているかどうかを鏡やガラス越しにチェックしてみてください。

石こうで固まったような四角い胴体に腕と脚が4つの支点から伸び、前後のみに振る走り方を想像してみましょう。足運びは太ももからの前後運動で、腕振りも肩から前後への動き。これではただ四肢が動くだけの振り子の動きで、疲労が局所にたまりやすい走りといえます。その疲労が膝や腰の痛みにつながる可能性もあります。

一方で、ゴムのイメージのように体幹から生み出された力が腕と脚のスイング動作に伝わるような動きは、特定の支点に負担がかかることがなく、省エネで持続的な走りが可能になります。頭のてっぺんから糸で真上に引っ張られ、あばら骨の間が開いているイメージ。この姿勢が維持できていれば、骨盤の深層にある腸腰筋を効果的に利用して脚を前に振り出すことができます。反対に猫背姿勢であばら骨とあばら骨の間が縮こまっていると、骨盤が砕ける感じで後ろに傾き、脚はももの力を使って前に振り出す動きになります。この良しあしを分けるキーポイントがあばら骨周辺だと考えています。

しかし、デスクワーク、運転、移動など座りっぱなしの姿勢が続くと、あばら骨周辺は萎縮します。そういう姿勢のときはだいたい呼吸も浅くなっています。あばらを風船でイメージすると、ほとんど伸び縮みしていないのです。鍛錬を積んだ人にもこの部位が固まっている人がいます。ベンチプレスの動きで大胸筋など体の前面が発達している人です。発達した胸元や鎖骨周りが腕を後ろに引く動作を阻害し、上体の効率的なリズムを生み出せないのです。

<上体ツイスト・動的ストレッチ>

<写真(1)>背骨を軸に左右に円運動

棒を背に当てて腕をからめ、手のひらで押さえます。これだけであばら骨が開きます。背骨をコマの中心軸に見立てて、左右に円運動。引いた際にあばら骨が伸ばされる形で、横方向に引き伸ばされる「ため」ができます。伸ばされたゴムが縮むイメージで反対方向にスイング。これを右に左に20回ほど繰り返します。強弱をつけるとよいでしょう。練習前に行うのが効果的です。写真(1)

<あばら開きストレッチ>

<写真(2)>床に胸を押しつけて左右にしならせる

つま先を立てての正座。万歳するように両腕を上げて、上体を折りたたみ、背骨をしならせ床に胸を押しつけます。まっすぐ正面に30秒。続いて背骨を右に左にカーブを描くようにしならせて左右各20~30秒。あばら骨周辺が緩んできます。さらにバレーボールのレシーブのような体勢。手の甲を下にして片腕を前方へ伸ばします。上体の側面が緩んできます。左右各30秒行います。写真(2)

こんなメンテナンスでやわらかいフォームを体得してください。走りのアドバイスも何点か。練習が終わったらひもをほどいてシューズを脱ぎましょう。これはランナーのスイッチになり得ます。腕振り強化のために両手に重りを持って走る人がいますが、腕は振れていませんし、肘や肩がガチガチです。持ち上げよう、保持しようと力が入っているためで、あまりおすすめできません。

さいとう・たろう 1974年生まれ。国学院久我山高―早大。リクルートRCコーチ時代にシドニー五輪代表選手を指導。2002年からNPO法人ニッポンランナーズ(千葉県佐倉市)ヘッドコーチ。走り方、歩き方、ストレッチ法など体の動きのツボを押さえたうえでの指導に定評がある。300人を超える会員を指導するかたわら、国際サッカー連盟(FIFA)ランニングインストラクターとして、各国のレフェリーにも走り方を講習している。「骨盤、肩甲骨、姿勢」の3要素を重視しており、その頭の文字をとった「こけし走り」を提唱。著書に「こけし走り」(池田書店)、「42.195キロ トレーニング編」(フリースペース)、「みんなのマラソン練習365」(ベースボール・マガジン社)、「ランニングと栄養の科学」(新星出版社)など。

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