2019年7月16日(火)

富士通「時田新社長は非常にパワフル」 会見一問一答

2019/3/29 11:33
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日経クロステック

「非常にパワフルな人物」。富士通の田中達也社長は2019年3月28日、東京都内で開いた記者会見で、次期社長に内定した時田隆仁執行役員副社長についてこう語った。記者会見での主な一問一答は以下の通り。

──今、富士通で一番の課題は何か。田中社長が時田新社長にやり遂げてほしいと思うことは何か。

富士通の田中達也社長

富士通の田中達也社長

田中氏 「富士通には優秀な人材や優れた技術力、ノウハウがたくさんあるが、それらをうまく統合してシナジー(相乗効果)を出す必要がある。私自身ずっと感じてきた課題であり、解決に取り組んできたものだが、新社長にも継続してもらうよう期待したい」

「そのことが、当社の成長につながるはずだ。新社長は非常にパワフルな人物。やってくれると信じている」

「もう一つの課題がグローバル化だ。こちらも長年取り組んできたが、グローバルでの存在感をもっと高めたい。時田新社長は英ロンドンに在住していた経験の持ち主。期待している」

──時田新社長が最優先で取り組みたいことは何か。

■「社内の強みを結びつける」

富士通の次期社長に内定した時田隆仁執行役員副社長

富士通の次期社長に内定した時田隆仁執行役員副社長

時田氏 「田中社長の発言の通り、富士通には優秀な人材や技術、アイデアはたくさんあるが、それらを結集することがなかなかできていない」

「長年、お客様に寄り添って要望通りのソリューションを提供してきたが、その半面、進んで提案することが不得意になってしまった部分が否めない。社内の異なる部門の強みを結びつける『横の連携』を可能にするメカニズムを構築していきたい」

「グローバル事業についても同様だ。横の連携が足りない。各拠点が個別に活動するのではなく、各拠点の知見を結集してサービスをつくるようなメカニズムが必要だと感じている」

──田中社長は22年度にテクノロジーソリューション分野で営業利益率10%を達成すると繰り返してきた。道半ばでの交代となる。反省点はどこか。

田中氏 「富士通の人材や技術をグローバルに戦うほど統合できなかった。テクノロジーソリューション分野に経営リソースを集中させたが、ワンステップ上に登ることができなかった」

──社長交代の時期はなぜ今だったのか。変革の成果を見てからでも良かったのではないか。

■「納得感のあるタイミングだ」

田中氏 「確かに自分で変革を見届けたいという気持ちもある。しかし、私の策定した経営計画は22年。その途中で中途半端に退任するよりも、今の時点で思い切って新体制に引き継いだほうが良いと考えた。自分としては納得感のあるタイミングだと考えている」

──田中社長は時田新社長を「非常にパワフルな人物」と評していた。そのことを示すエピソードはあるか。

田中氏 「時田新社長は金融業界で多くの大規模プロジェクトを経験した。プロジェクトには、山も谷もあったと思うが、困難に動じず、自分のビジョンを持って部下をけん引してきた。その力強い姿を見てきたので、富士通の変革を成し遂げるのにふさわしい人材だと考えている」

時田氏 「思い出深い仕事としては、一つは大手生命保険の営業変革プロジェクト。営業担当者をIT(情報技術)の力で強化する業務変革を支援した。このとき、システムエンジニア(SE)だけではなく、パソコン部門やソフトウエア部門、ネットワーク部門など、社内の複数部門の力を結集する重要性を学んだ」

「このほか、メガバンクのシステムトラブルも印象に残っている。精神面を鍛えられた」

──新社長就任はいつどんな形でどのように伝えられたのか。その時、どのように思ったか。

時田氏 「話を持ち掛けられた時期については、発言を控える。山本(正已取締役)会長同席で、指名委員会の小島(和人)委員長から指名を受けた」

「もちろん、聞いた瞬間は驚いた。ただ、迷いながらも話の最中で覚悟を決めた。『期待に応えたい』とその場で回答した」

──時田新社長は、大規模プロジェクトを率いた経験の持ち主。しかし、今後の富士通は大規模であるかどうかよりも、顧客のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援できることが重要になる。この点に関してどう考えるか。

■「顧客接点のフロントシステムが重要に」

時田氏 「大規模プロジェクトも経験したが、金融機関のビジネスの移り変わりと、ITシステムの変遷をすぐ近くで見てきた。例えば、昔はバックエンドのバッチシステムに価値があったが、今は顧客接点のフロントシステムが重要になってきている」

「金融機関は決済基盤としてさまざまな業種の企業と関わりがあるため、金融以外の企業のITシステムやビジネスを見てきた。こうした経験は生きると考える」

──グローバルで富士通の存在感をどう上げていくのか。これまでは米IBMのビジネスモデルを後追いしてきたと思うが、今、技術的に影響力を持つのはGAFA(米グーグル、米アップル、米フェイスブック、米アマゾン・ドット・コム)だ。このような状況で、富士通はグローバル市場に対して何を強みにしていくのか。

時田氏 「富士通のグローバル事業の強みはハードウエアだった。サービス事業もITインフラのマネジメントが中心だ。ただ、この領域は極めて価格競争が激しい。大変苦戦している」

「今後は強みを変えていかなければならないと感じている。製品ビジネスの比率を徐々に下げ、サービスの比率を高めたい」

「サービス比率を高めるために必要になるのが、お客様の業務を理解することだ。日本では、現場のSEがお客様に近いところにいて業務知識を習得してきた。このノウハウをグローバルに展開できるよう、社内に組織的なメカニズムをつくっていきたい」

──事業の選択と集中を進めてきた。このまま進めるのか。人員(削減)について考えはあるか。

■「人員削減、現時点で考えはない」

時田氏 「形を変えるという命題の下、事業構造を変革してきた。これは時代の変化、競争関係、お客様のニーズの変化を捉えた結果だ。今後も、必要に応じて事業構造の変更を進めるつもりだ」

「その中で、人員(削減)に手を付けることもあるかもしれないが、現時点で考えはない」

富士通の田中達也社長(左)と次期社長に内定した時田隆仁執行役員副社長

富士通の田中達也社長(左)と次期社長に内定した時田隆仁執行役員副社長

──久しぶりにSE出身の社長が誕生した。システムインテグレーション(SI)部門をどう変えるか、その意気込みを聞かせてほしい」

時田氏 「入社以降、SIソリューション部門に一貫して所属していたが、部門名称は何度も変わってきた。これは、ビジネスそのものやお客様の要請が変わってきたことを意味している」

「デジタル化の時代、自前のプロダクトやサービスを提供するだけでは不十分だ。社内だけではなく、お客様、他のサービスベンダーと協業することが求められている。その旗振り役を期待され、私が社長に指名されたと考えている」

──田中社長は人材の配置転換を進めてきた。最適配置のめどがたったから社長交代を決めたのか。

田中氏 「指摘の通り、人材については適材適所への配置転換を進めてきた。サービスオリエンテッドカンパニーになるためには、まだまだ社内での人材ミスマッチが残っていると感じていたからだ」

「社員自身が能力を生かす職場へ、本人の意向を聞きながら配置転換を実施し、そのプロジェクトは終わった」

「しかし、そのことは社長交代を決めたこととは直接関係はない。社長交代の時期は自分が社長に就任したときからずっと考えてきたこと。適切なタイミングだと判断したので、今回の発表に至った」

──富士通は顧客に寄り添ってきた半面、顧客に提案できない弱みがあると時田次期社長は話していた。この課題を乗り越える秘策はあるか。

■「今は、自前主義ではできない」

時田氏 「秘策があるのならば、私が教えてもらいたい(笑)」

「日本市場のSI事業に限れば、トラブルが続くとSEの思考はネガティブになりがちだ。お客様の言う通りのシステムを構築することだけで、トラブルのリスクを減らそうとする」

「もちろん、そうではないSEもたくさんいるが、一部にそういう風潮が起こると、自らお客様をリードするメンタリティーが生まれにくくなる。提案活動を阻害する要因の一つといえるだろう」

「もう一つ。我々が若いころは、ハード、ミドル、ネットワークなど全て富士通製でそろえることにプライドを感じており、そのことがお客様のためになると考えていた」

「今は、自前主義ではできない。お客様は富士通製でそろえるかどうかよりも、スピードを求めているかもしれない。様々なニーズに応えるには、外部の力を使わなければいけない」

「富士通のSEは外部企業と協業することが意外と得意ではない。もちろん、多くのSEが海外企業のプラットフォームやパッケージを使ってビジネスをしているが、残念ながらそうではないSEも少なくない。これが正直な感想だ」

「こうしたメンタリティーを変え、より外部の力を活用すべきだ。この点については私の口から後進に伝えていく」

──田中社長がやり残したことは。

田中氏 「人材を適材適所に配置するプロジェクトを進めてきた。だが、さらにグループ会社を含めてシナジーが生まれるように最適な組織形態を求めていきたい。今後も会長として助言していく」

──グローバル事業でのライバルはどこか。GAFAになるのか。それとも企業向けのサービスを提供するIT企業か。

時田氏 「ハードからサービスに収益構造を変えていくためにはデジタル技術の活用が避けて通れない。GAFAと真っ向勝負するかは別にして、お客様ですら競合になり得る時代だ。どこか特定の企業を想定した戦略を立てられないし、立てることはしない」

──自前主義でソリューションを提供したときの付加価値と、外部企業と協業して作る付加価値は異なるはずだ。後者の場合、富士通の付加価値は何になるのか。

時田氏 「プラットフォームやアプリケーション、サービスなど単体でビジネスが成立する時代ではない。それらを統合するプロセスが必要であり、富士通の強みはインテグレーションだ。この強みを生かす」

──クラウド時代に備えた人材育成の方針は。

時田氏 「人材育成はサービスオリエンテッドカンパニーを目指す上で一番大きな課題と考えている。特に、海外のテクノロジーをいち早く取り入れることのできる人材を育成していきたい」

(日経 xTECH 矢口竜太郎、田中陽菜)

[日経 xTECH 2019年3月28日掲載]

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