2019年6月27日(木)

肝臓再生 ロボが細胞培養 渋谷工業と山口大

2019/3/28 19:53
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瓶詰め充填装置大手で金沢市に本社を置く渋谷工業と山口大学は28日、新たな肝臓再生治療の実用化に本格的に着手すると発表した。充填装置で培った同社の技術を応用し、自動ロボットによる細胞培養システムを使う。山口大が2020年3月までに治験を始め、21年の実用化を目指す。病院側の作業負担を抑えながら、重度の肝硬変の治療につなげる取り組みだ。

記者会見で握手する渋谷工業の渋谷社長(右)と山口大の坂井田教授(28日、金沢市)

治験に活用する渋谷工業の自動細胞培養システム(金沢市)

両者は5年ほど前から、肝硬変患者の骨髄細胞を取り出して自動装置で無菌培養し、患者自身の体内に戻して肝臓を再生させるシステムの研究を進めてきた。これまでの安全性試験などで必要なデータを蓄積できたことから、治験に向けたプロセスを本格化させる。

具体的には、渋谷工業が山口大に7500万円を提供し、4月から2年間にわたり寄付講座を開設。同社のロボットを使った細胞培養と治療法確立に向けて詰めの研究に入る。治験申請は今年8月を予定する。治験を踏まえ早期の実用化を目指す。同社の装置が治験段階に至るのは初めてとなる。

日本には約30万人の肝硬変患者が存在し、その1割が重症化しているとされる。通常、骨髄液の採取には全身麻酔が必要だが、重症患者には負担が大きい。山口大が開発した新手法は局所麻酔で40ミリリットル程度の少量の骨髄液を採取し、細胞を培養し患者に戻す。すでに臨床研究を経て安全性を確認した。

従来、細胞培養は無菌室内で特殊な作業服を着る必要があり、病院にとっては人的・物的負担も大きい。渋谷工業は医薬品や飲料の充填で培った無菌技術を生かし、細胞をロボットで自動培養して充填するシステムを手掛ける。細胞を均質に供給でき、医療機関側のコストを半分程度に抑えられるとみている。

渋谷工業は昨年、同システムを運用する細胞培養加工センターを金沢市内の生産拠点に開設。国から特定細胞加工物製造許可を得た。今後は山口大病院で採取した骨髄液を冷蔵で同センターに空輸し、2週間ほどかけて培養。凍結保存した幹細胞を同病院に空輸して患者に投与する流れを想定する。

28日に金沢市内で記者会見した山口大の坂井田功教授は「肝硬変以外の再生医療への応用も期待できる」と意義を強調した。

■再生医療分野「4~5年以内に業績に寄与」

渋谷工業は2013年に再生医療システム本部を立ち上げ、渋谷弘利社長が自ら本部長となって事業を進めてきた。ボトリングの無菌技術を生かした細胞培養システムは研究用に納入実績があるが、治験段階に至ったケースはまだなかった。肝硬変治療が軌道に乗れば、将来、再生医療分野の事業拡大に弾みが付きそうだ。

同社は2019年6月期の売上高が前期比10%増の1080億円と、初めて1000億円に到達する見通し。酒類や清涼飲料、薬品などを瓶詰めする主力のボトリング機械が好調に推移する。一方、半導体製造装置などの分野は足元で米中貿易摩擦が影響し、増益ペースに濃淡も目立つ。

渋谷社長は記者会見で「4~5年内には再生医療事業が業績に大きく寄与するだろう」と述べ、生医療事業の収益化に意欲を示した。「次の目標の2000億円達成に向けて社内で号令をかけている」と話した。

汎用機械や電子部品の比重が大きい北陸の製造業は国内外の景気変動の影響を受けやすいとされる。医療分野が柱の一つに育てば、ものづくりの基盤強化のモデルになりそうだ。(小野嘉伸)

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