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米「双子の赤字」再び懸念 揺れるドル、G20で議論へ

【ワシントン=河浪武史】米商務省が27日発表した2018年の経常収支は4885億ドル(約54兆円)の赤字となり、10年ぶりの高水準となった。1兆ドル規模の財政赤字とともに「双子の赤字」の懸念が再燃する。米政権の大型減税が経済にゆがみをもたらし、将来的に投資家のドル離れにつながる可能性もある。日本が議長国となる20カ国・地域(G20)会議でも中心議題の一つになる。

ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は貿易赤字の是正をめざしているが、2018年の米経常赤字は高水準だった=ロイター

経常収支は海外とのモノやサービス、投資などの流れを表す。18年の米経常赤字は前年比8.8%増えたが、最大の要因はモノの貿易赤字だ。18年の貿易赤字は8913億ドルと前年比10.4%増えた。トランプ政権は17年末に1980年代のレーガン政権以来という大型減税を実現し、国内の消費や投資が増えて海外からの輸入も膨らんだ。

一時的な経常赤字の拡大は「景気の調整弁」であり、必ずしも悪いことではない。米経済は失業率が半世紀ぶりの水準に下がって雇用が逼迫している。インフレ圧力が高まりかねないが、輸入を増やせば供給不足による物価上昇を抑えられる。実際、米国のインフレ率は2%弱にとどまり、米連邦準備理事会(FRB)の利上げも緩やかなペースにとどまってきた。

財政赤字と「双子の赤字」となれば話は別だ。米経済は税収が増えやすい好況期にあるが、減税の影響で財政赤字が20会計年度(19年10月~20年9月)に1兆ドルを突破しそうだ。米国は対外資産負債残高が9兆ドル弱のマイナスと群を抜く純債務国。双子の赤字で不足するマネーを、海外からさらに取り込まなくてはならない。

1980年代のレーガン政権でも、大型減税で内需が過熱して双子の赤字が発生した。日米貿易摩擦に代表される保護主義が急激に高まり、最終的には日米欧の「プラザ合意」でドル高是正を表明。異例の国際協調で米国の経常収支の改善に乗り出すことになった。

足元でも双子の赤字にもかかわらず、ドルは高値圏で立ち止まったままだ。FRBの利上げ停止で長期金利は下落したものの、「ドル指数」は18年1月時点と比べ8%も高い水準にある。経常赤字の解消に向け、トランプ政権はドル高是正に駆られやすい局面にある。

ただ、米財務省幹部は「今は強いドルを手放す時期ではない」と主張する。プラザ合意を結んだ1980年代は東西冷戦に米国が打ち勝ち、政治も経済も覇権国家としての地位が鮮明だった。現在の米国内総生産(GDP)は世界全体の24%に低下し、いずれ中国に追い越されかねない。

基軸通貨を持つ米国には大きな特権がある。貿易や投資で為替リスクを負わないだけでなく、原油などの取引を自国通貨建てで決済できる。米国の双子の赤字は、最終的にはドルの信認を傷つけ、投資家のドル離れに直結する。トランプ政権がこれまでドル高是正に中途半端だったのは「強いドル」を失うリスクを意識しているからだ。

実際、世界では「ドル覇権」に挑戦する動きが相次ぐ。中国は東南アジア諸国連合(ASEAN)内で人民元取引を増やす5カ年計画を公表。ロシアも貿易取引で8割あったドル建て比率を7割に落とした。トランプ政権が「武器」とする金融制裁への警戒も根強く、トルコなどもドル資産の圧縮に動いている。

G20は4月にワシントンで財務相・中央銀行総裁会議を開くが、議長国の日本は経常収支の不均衡問題を主要議題の一つに据える。中国などアジア新興国の過剰貯蓄が米国に投資マネーとして流入し、住宅バブルを呼び込んだとの痛烈な反省がある。米政権は貿易赤字の解消を公約に掲げており、国際協調に背を向けるトランプ氏も不均衡の議論には乗りやすい。

問題は処方箋だ。国際収支の不均衡の解消には「米国の過剰消費を改める必要がある」(日本の財務省高官)。ただ、欧州や中国の景気は弱含んでおり、皮肉にも「双子の赤字」を生み出す米国の内需は世界経済の最後のエンジンだ。トランプ氏は日欧や中国に米国製品の購入拡大を求めるのは確実で、不均衡問題は再び袋小路に入り込むリスクがある。

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