2019年5月24日(金)

松橋事件で再審無罪判決 熊本の殺人、確定審から29年

九州・沖縄
2019/3/28 10:04 (2019/3/28 11:11更新)
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熊本県松橋(まつばせ)町(現宇城市)で1985年、男性(当時59)が刺殺された松橋事件で、殺人罪などで懲役13年が確定し服役した宮田浩喜さん(85)の再審判決公判が28日、熊本地裁であり、溝国禎久裁判長は殺人罪について無罪を言い渡した。弁護側は検察側に上訴権(控訴する権利)の放棄を求めており、確定審から29年で無罪が確定する見通し。

熊本地裁前で「再審無罪」の垂れ幕を掲げる弁護団(28日、熊本市中央区)

熊本地裁前で「再審無罪」の垂れ幕を掲げる弁護団(28日、熊本市中央区)

再審公判は今年2月に初公判が開かれ即日結審。検察側は殺人罪についての有罪立証を断念し、再審無罪判決が確実視されていた。

溝国裁判長は判決理由で「再審請求審の新たな証拠で、自白全体の信用性に疑義が生じた」と指摘。「被告が被害者を殺害したことは認められない」とした。

その上で「確定審から長い年月が経過していることを踏まえると、新たな検討は必要なく、可能な限り早く判決を言い渡すことが適当だ」と説明し「殺人の点については被告は無罪といたします」と述べた。

初公判では、検察側が確定判決で有罪認定の根拠となった当時の自白調書をはじめ全ての証拠を採用するよう求めたが、溝国裁判長は「再審請求審までの経緯を踏まえると必要がない」として退けた。凶器とされた小刀を含め約150点の証拠が不採用となった。

検察側は論告で「再審請求手続きで、自白の信用性が揺らいだと裁判所が判断した」と説明。「改めて慎重に検討した結果、殺人について被告が有罪である旨の新たな主張・立証は行わない」とした。弁護側は最終弁論で「殺人事件の犯人と被告とを結びつける証拠は何一つ存在しない」と主張。「無罪は明らかだ」として速やかな無罪判決を求めていた。

熊本地裁は2016年6月、宮田さんが「燃やした」と自白したシャツ片が検察の保管証拠から見つかったことなどを理由に「自白の重要部分に疑義が生まれた」として再審開始を決定。溝国裁判長はこの決定でも裁判長を務めた。今回の再審公判に向けた検察、弁護団との3者協議では、高齢の宮田さんに配慮し「迅速な審理」の方針を打ち出していた。

認知症を患い熊本市内の施設で暮らす宮田さんは出廷せず、後見人の弁護人らが法廷でこの日の判決を聞いた。閉廷すると、弁護団からは笑みがこぼれた。

事件は85年1月に発生。岡村又雄さんが松橋町の自宅で殺害され、熊本県警は任意聴取で殺害を認めた将棋仲間の宮田さんを殺人容疑などで逮捕した。

宮田さんは公判途中から否認に転じたが、熊本地裁は86年、捜査段階の自白の信用性を認め懲役13年を言い渡した。90年に最高裁で確定した。

出所後、認知症を患った宮田さんに代わり弁護士が再審請求。16年6月に熊本地裁が再審開始を決定、18年10月に再審開始が確定し、19年2月から再審公判が始まった。

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