魅惑の宇宙グルメ、日本企業とJAXAが連携
宇宙に滞在し、細胞培養マグロや月面産フォアグラをぺろり――。そんな未来に向け、日本勢が動き始めた。ベンチャーキャピタル(VC)のリアルテックファンド(東京・港)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)、シグマクシスは27日、宇宙食分野で30以上の企業や研究機関が連携する取り組みを始めると発表した。食品大手や新興企業などが加わり、宇宙食市場の拡大を目指す。
リアルテックファンドやJAXAが宇宙食での協業プログラム「スペースフードX」を立ち上げた。食糧の生産・加工、宇宙への輸送の各分野を担う企業などが参加し、連携して研究開発を進める。藻類を活用するユーグレナや人工培養肉の開発に取り組むインテグリカルチャー(東京・文京)が宇宙での食糧生産を狙う。日清食品ホールディングスやハウス食品グループ本社、サッポロホールディングスが食品加工で参加する。
発表会では2040年の月での食卓のイメージを披露した。月面の植物工場で生産した野菜のサラダや、藻類のスープ、人工培養肉のステーキなど、宇宙での地産地消を意識したメニューが並ぶ。研究開発段階のメニューが多いが、20~21年にも宇宙で実証も始めたい考えという。牛肉などで培養肉を模したステーキを試食した宇宙飛行士の向井千秋氏は「宇宙はサバイバルの場から楽しめる場所になっていく。食文化が浸透した日本の企業も活躍できる」と話した。
宇宙開発では、有人で月や火星を目指す動きが米国や中国で出てきている。宇宙に滞在する人が増えれば食糧を輸送するだけでなく、現地で食糧を生産する必要がある。リアルテックファンドの小正瑞季氏は「食糧が循環する仕組みが必要になる。生産の省人化や効率化などの課題を、ロボットやバイオなど日本の技術で解決したい」と意気込む。JAXAからは技術やノウハウの提供を受ける。各社の具体的な協業内容は今後検討する。
食品以外からもANAホールディングスや清水建設のほか、月探査のispace(東京・港)や宇宙商社のスペースBD(同・中央)などのスタートアップが参画する。今回のプログラムはJAXAが宇宙産業の振興を目的に18年に始めた「宇宙イノベーションパートナーシップ」の一部。
(企業報道部 山田遼太郎)
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