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米、世界最大の産油国 外交・通商でトランプ流加速

米国の原油生産量が2018年、45年ぶりに世界首位に返り咲いた。シェールオイルの増産で、輸出も5年内に首位サウジアラビアに迫る見通しだ。エネルギーの覇権をめざす米国の攻勢は、石油収入に頼る中東やロシアとのパワーバランスに変化を迫る。親イスラエルに傾くトランプ政権は産油国イランの制裁強化をにらむなど、エネルギー地政学は歴史的な転換点を迎えた。

米エネルギー情報局(EIA)が26日に公表した月次エネルギー報告書によると、18年の米国の原油生産は17年より17%増えた。ロシアとサウジアラビアを上回る日量1095万バレルとなり、世界首位に浮上した。2000年代初頭に地下深くの岩盤層を採掘する技術の確立で「シェール革命」が起き、米国の原油生産は10年前の2倍に膨らんだ。

トランプ政権はエネルギーの国内生産の拡大が雇用を創出すると主張。規制緩和でシェールオイルの増産を促してきた。EIAは米国の生産増は27年まで続き、最大で日量1400万バレル台に達するとの予測を掲げる。

原油生産の拡大はトランプ流の外交・通商政策に拍車をかける。ポンペオ米国務長官は12日、テキサス州の会合で「豊富なエネルギーを外交の道具に使い、米国の国益を強力に追求する」と強調した。

米国はイランやベネズエラなど敵対する産油国に経済制裁を科してきた。米メディアによると、トランプ政権内ではイラン産原油の調達で米国が制裁対象から除外している日本や中国など8カ国・地域について、5月上旬以降は認めない案が浮上している。

米国の増産がトランプ氏の警戒する原油価格の高騰を抑え、イラン産を締め出しても市況への影響は限られるとの読みがある。

トランプ氏は25日、イスラエルが1967年にシリアから奪ったゴラン高原の主権をイスラエルに認めた。シリアのアサド政権の後ろ盾となるイランはトランプ政権を痛烈に批判しているが、米国は親イスラエル路線を一段と鮮明にしている。

原油生産の拡大は貿易赤字の削減にもつながる。オバマ前政権が原油輸出を解禁した15年以降、米国の輸出は急速に伸びてきた。18年の輸出量は日量200万バレルと17年から7割増えた。仕向け先はアジア、欧州、南米など約40カ国・地域にのぼる。

トランプ政権はさらなる輸出にカジを切る。米中貿易協議では、中国が米国から原油などのエネルギーを大量購入する方針を示している。米国との貿易交渉に入る日本も輸入拡大を迫られる可能性がある。

外交・通商の両面で、トランプ政権は原油を「米国第一」に向けた取引材料に使う。成果を形にして、再選を狙う20年の米大統領選の追い風にしたい考えだ。

長期で見れば原油生産の拡大は米国の「脱・中東」を招く。トランプ氏はシリア駐留の米軍撤収をめざすなど、中東から手を引く意向だ。17年末の国家安全保障戦略では中東などでのテロとの戦いから、中国やロシアとの競争に軸足を移す方針を打ち出した。塗り替わるエネルギー覇権は、中東情勢の不安定化などの副作用をもたらすリスクもはらむ。(ワシントン=中村亮、ニューヨーク=中山修志)

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