2019年5月25日(土)

造船の未来を担う人材と研究 愛媛大の新拠点、始動
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2019/3/27 6:00
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愛媛大学で未来の造船業界を担う人材育成の拠点「船舶海洋工学センター」が始動する。4月から工学部の3、4年生に造船の専門教育を施すほか、地元造船・海運業界との共同研究にも取り組む。「学生と一日かけて地元の造船所を見て回りたい」。大学院理工学研究科の豊田洋通教授(54)は初代センター長の職務に意欲を隠さない。

愛媛大船舶海洋工学センターが開いたキックオフシンポジウムには造船関連各社の参加者に混じって造船を学ぶ高校生の姿も見られた(5日、今治市)

愛媛大船舶海洋工学センターが開いたキックオフシンポジウムには造船関連各社の参加者に混じって造船を学ぶ高校生の姿も見られた(5日、今治市)

愛媛県は国内最大の海事都市、今治市を擁する。2017年の製造品出荷額は8572億円と四国の市町村では最大で四国全体の1割を占めた。このうち輸送用機械器具の2948億円は「ほとんどが造船関連」(今治市商工振興課)だ。

愛媛大は09年度から10年間、大学院で今治造船の寄付講座を開いていたが、地元から「船舶工学に関する学部教育の実現を求められてきた」と大橋裕一学長(68)。そこで18年6月、工学部に同センターを設置。豊田教授はじめ教員25人が学生教育の傍ら、それぞれの専門分野で地元ニーズを探り研究に生かす。大橋学長と県、市や今治造船、渦潮電機、伊予銀行など地元企業がコンソーシアムを組み運営を支える。

その一社、浅川造船(今治市)が豊田教授の訪問先だ。4月上旬、学生と化学品運搬船の内部や3次元CAD(コンピューターによる設計)、鋼材ブロックの組み立てなどの作業を見学する。受け入れる小池久志総務部長(59)は「10~20年先の『将来の船』を造るというロマンを持って学んでほしい」とまだ見ぬ学生たちに期待を込める。

国内で船舶海洋工学を学ぶ学生の多くは自動車など造船以外に就職してしまうという。大阪大学大学院教授で同センターのアドバイザーを兼務する日本船舶海洋工学会の柏木正会長(63)は造船業界の人材確保に「自律運航など夢のある研究開発に本気で取り組む姿勢が大事」と呼びかける。

先日、機械造船科から初の卒業生を送り出した愛媛県立今治工業高校で新3年生となる藤川光希さん(17)は「将来、ロボット船の建造に関わりたい」と目を輝かせる。地元造船業界からは早くも「愛媛大の同センターの卒業生を採用したい」との声が出ている。

「愛媛出身の若者が愛媛大で専門知識を学び、地元で働き、地域を盛り上げる流れが生み出せたら」。大橋学長の思いは造船ニッポン再浮上につながっている。(棗田将吾)

愛媛大学 1949年、旧制松山高等学校などを母体に新制大学として発足。7学部・6研究科の学生約9000人の4割が県内出身。地域産業のニーズに合った人材育成や分野横断型のキャリア形成のほか、紙パルプや柑橘(かんきつ)など地場産業と連携した研究活動にも注力する。

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