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豊島逸夫の金のつぶやき

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逆イールド、トランプ氏再選に暗雲

2019/3/26 9:50
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ドル金利下落に歯止めがかからない。市場の関心は、長短どちらの金利の下げペースが速いか、という点だ。

米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測が強まれば、相関が高い短期債の利回りが低下する。中国や欧州の経済指標が悪化すれば、安全性を求めるマネーが米長期債に流入してドル長期金利を押し下げる。

25日のニューヨーク市場では、10年債利回りが一時2.4%の大台を割り込む局面もあった。株価も敏感に反応して、ダウ工業株30種平均も一時は100ドルを超す下げとなった。

通常、金利が下がれば株価は上がるはず。しかし、逆イールドの呪縛に取りつかれた市場では、長期金利が急落すると長短金利逆転の深化が懸念され、株価が下がる。

一方、短期債利回りが下落する局面もあった。シカゴ連銀のエバンズ総裁が1998年アジア経済危機時のFRB利下げを引き合いに出し、当時のグリーンスパンFRB議長の迅速な決断を評価する発言が伝わったときだ。引き締めから緩和への転換の状況が今回と似ているとしている。

短期金利が下がれば、順イールドへの回帰が連想され、株式市場は安堵する。かくして、市場の一喜一憂が繰り返されそうだ。この逆イールドの長期化は必至である。

FRBへの介入姿勢を露骨に強めるトランプ大統領にとっても悩ましい展開だ。過去の事例を見ても、逆イールド発生からタイムラグをおいて景気後退に突入しているので、大統領選のある2020年の米国経済が危うい。そこで、トランプ氏はFRBに「利下げ」圧力をかけることが予想される。

しかし、現在の政策金利水準は2.25~2.5%。利下げの余地は2.5%しかない。過去の景気後退期に実施された利下げは5%程度が必要だった。

FRBの保有資産圧縮プログラム停止という緩和措置も9月にはカードを切ってしまう。そこで、FRBがマイナス金利を導入する可能性もウォール街では議論される。

今や、世界のマイナス金利国債総額が10兆ドルに達するとの報道もあるが、FRBは伝統的に拒否反応が強かった。金融機関の収益悪化という副作用が強すぎるとの配慮であろう。イエレン前議長が議会証言で「米連邦公開市場委員会(FOMC)でも2010年ごろに(マイナス金利を)検討したが、金融市場への影響を懸念し採用しなかった」と語ったこともある。

しかし、トランプ大統領の発想は、これまでの金融市場の常識を超える異次元にある。欧州中央銀行(ECB)と日銀がマイナス金利政策を維持しているのに、なぜFRBはこだわるのか、との疑問が発せられるかもしれない。

今後、FOMC議事録でマイナス金利についての議論が出てくれば、株式市場にとっては買い材料とされよう。外国為替市場ではドル安要因となるので、日本にとっては円高リスクとなる。

中央銀行の緩和比べが進行する中で、日銀の追加緩和も、欧米市場の注目点となってきた。円が通貨投機筋の標的となりやすい地合いである。

なお、これまで中国の米国債売却傾向が市場では意識されてきたが、今後は中国が米国債購入を増やし、ドル長期金利を押し下げ、逆イールド現象を助長するシナリオも考えられよう。中国にとって米国債は米中貿易戦争の「武器」となる。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
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