2019年6月20日(木)

ブラジル、前大統領逮捕が波紋 改革後退で通貨安懸念も

中南米
2019/3/26 7:38
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【サンパウロ=外山尚之】ブラジルのテメル前大統領が汚職に関わった容疑で逮捕され、ボルソナロ政権が推進する改革路線に対する不安材料となっている。ブラジル政界を揺るがした汚職問題がまだ終わっていないことが明らかになり、議会の不安定化が新たなリスクとして浮上したためだ。財政再建に不可欠な年金改革実現への懸念で通貨レアルが対ドルで一時年初来安値を更新するなど、市場では神経質な動きが続く。

就任式でテメル前大統領(右)から大統領綬を受け取るブラジルのボルソナロ大統領(1月1日、ブラジリア)=ロイター

テメル氏は21日に原子力発電所の建設を巡る収賄容疑で逮捕された。2018年末まで大統領を務めていた同氏は在任中から数々の汚職疑惑を抱えており、検察は本件を含む10件の汚職事件で捜査しているとされる。逮捕自体は既定路線だったとはいえ、退任から3カ月もたたないうちの身柄拘束は現地でも驚きを持って報じられた。

市場は今回の逮捕劇が年金改革に与える影響を注視する。逮捕翌日の22日、外国為替市場で通貨レアルは前日比2.9%安の1ドル=3.9レアルと、年初来安値で取引を終えた。25日にテメル氏が保釈されると伝えられたことでやや反発したものの、1月末につけた直近の高値から5%以上低い水準だ。

もともと年金改革法案が計画通りに進むのか懐疑論が持ち上がりレアル安基調が続いていた中、今回の逮捕が追い打ちをかけた形だ。投資助言会社XPインベスチメントスのチーフアナリスト、カレル・ルケチッキ氏は「今回の逮捕で、年金改革に向けた交渉が複雑化することが意識されている」と説明する。

市場が警戒するのは、議会が混乱することで、年金改革が頓挫するシナリオだ。14年に発覚した政界汚職に対する捜査は「ラバジャット(洗車場)」と呼ばれ、これまでもルラ元大統領を含む有力政治家が次々と逮捕されてきた。まだ発覚していないだけで、すねに傷を持つ現職議員も多いとされる。「捜査対象になることを恐れる議員にとり、年金改革の優先順位が下がるだろう」とインスペル大学のレアンドロ・コンセンチノ教授は分析する。

大手調査会社IBOPEが20日に発表した最新の世論調査によると、ボルソナロ氏の支持率は34%と、就任時から15ポイント下落した。国民の痛みを伴う年金改革に対する反発に加え、閣僚や家族の醜聞や自身の奔放な言動が足を引っ張っているが、選挙公約で掲げた汚職や治安対策で目に見える成果が出ていないことも大きな要因だ。

ボルソナロ氏は昨年の大統領選で汚職根絶を掲げ、テメル氏ら既存の大政党を厳しく批判してきた。今回の逮捕劇は格好の人気回復の機会のはずだが、年金改革法成立には議会でテメル氏が率いる中道政党との協力が不可欠。ボルソナロ氏は事件発覚後も表だった批判は控えており、歯切れの悪さも国民から批判される材料となっている。

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