2019年4月21日(日)

創業100年超の中小企業がReスタートアップ

日経産業新聞
コラム(ビジネス)
スタートアップ
2019/3/26 6:30
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NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞

創業100年を超える老舗企業による新事業創出が目立っている。伝統を守りつつ新たなアイデアや技術を用い積極的な新陳代謝を図る。安定した収益基盤に安住せず、果敢にリスクを取る姿勢はスタートアップに近い。共通するのは経営者が新規技術開発やIT(情報技術)の活用など様々な挑戦に積極的な点だ。

乳酸菌サプリを発売した船橋屋の渡辺雅司社長

乳酸菌サプリを発売した船橋屋の渡辺雅司社長

老舗和菓子屋の船橋屋(東京・江東)は健康食品事業に参入した。看板商品のくず餅の製造工程で発生する乳酸菌をカプセルに凝縮したサプリメント「REBIRTH(リバース)」を2月に販売した。腸内環境の改善に役立つという。創業214年目の同社が菓子以外の製品を販売するのは初めて。1箱90粒入りで7千円で、年間1億円の売上高を目指す。

船橋屋のくず餅は小麦粉を約450日間発酵させて作る。製造工程で発生し廃棄してきた上澄み液に多くの乳酸菌が含まれていることが分かり、そのなかで効用の高い乳酸菌を培養・乾燥させてサプリメントにした。事前に8人が試用したところ全員の腸内環境に改善が見られたという。

船橋屋の8代目当主、渡辺雅司社長自らが旗を振り事業化を推進した。「長く受け継がれてきた乳酸菌を消費者の健康に役立てるべくさらなる研究開発を進めたい」と意気込む。サプリメントだけでなく、くず餅乳酸菌入りのゼリードリンクや和菓子、化粧品分野など多展開を進める方針だ。

船橋屋は昔ながらの製法を守りながら渡辺社長が中心となり積極的なソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)発信など時代に合った取り組みでここ数年の売上高は年率5~10%増で伸びてきた。新規事業立ち上げでさらなる収益基盤の強化を図る考えだ。

東港金属の福田隆社長は法人向けに不用品の売買から廃棄まで一括でできるサービス「ReSACO」を始めた

東港金属の福田隆社長は法人向けに不用品の売買から廃棄まで一括でできるサービス「ReSACO」を始めた

ITによる新たなビジネスモデル構築に取り組むのは金属リサイクルなどを手がける東港金属(東京・大田)。2月中旬、不用品事業を手掛ける子会社トライシクル(同・品川)を通じ事業者間の不用品買い取り促進サービス「ReSACO(リサコ)」を始めた。

いわばフリマアプリ「メルカリ」の法人版で、事務所で使う椅子や机といった家具から変電盤や産業機械など幅広い不用品の再流通を図る。具体的にはアプリをダウンロードし、不用品の写真を撮影すると人工知能(AI)が売却の予測価格を提示。売り手はその価格を参考にして不用品を出品できる。清掃代や運送費などは利用者間の負担。トライシクルは売り主から売却価格の12%を手数料として受け取る。利用者は基本的に法人や個人事業主に限定する。

仮に買い手がつかなかった場合は廃棄を選択できる。トライシクルが契約した産廃業者が有料で引き取る仕組みで、不用品の売却から廃棄まで一括処理できるサービスとした。廃棄依頼に関してはまずは東京都内のみ対応し順次地域を広げる。

これまで法人の廃業や改修に伴う不用品は、個別に引き取り先が見つからない場合、産業廃棄物処理法に基づき有料で廃棄することがほとんどだったという。福田隆社長が産廃や金属リサイクルの現場でまだまだ使えそうな製品が日々廃棄されるのを見て、事業化を思いついた。福田社長は「新車に対する中古車の市場規模が16%の一方で法人の不用品の流通規模は電力を除く設備投資の1~2%と低く開拓の余地は大きい」とみる。開始1年で専用アプリの80万ダウンロードを目指す。

東港金属は創業116年目で、福田社長は4代目にあたる。17年前に事業を承継し、本業の売上高を当時の約8倍の73億円(18年6月期)に引き上げた実績を持つ。

主力事業の子ども服というキーワードで新たな取り組みを始めたのがギンザのサヱグサ(東京・中央)だ。2015年にコメをブランド化して販売する事業を始めた。11年の長野県北部地震で被害を受けた長野県栄村小滝地区で生産するコシヒカリを「コタキホワイト」という名称でギフト商品として主にネットで販売する。

18年の買い付け量は約20トンと開始時の2倍に拡大した。60キロあたりの買い取り価格は全国でも最高水準という。なぜ子ども服の会社がコメ事業を手掛けるのか。創業150年を迎えた5代目の三枝亮社長が「子どもの学びの場」として田園の原風景を保護したい、と考えたのがきっかけだった。同事業の売上高は全体に比べ1割未満の年間数千万円規模とまだ小さいが、調達地域を栄村全域に広げるなど事業も拡大方針。今後教育事業などの展開も検討する。

老舗企業の経営に詳しいFBマネジメント(東京・中央)の山田一歩社長は「イノベーション(革新)を起こす老舗企業の特徴は社長自らが常に新しい情報を取り入れ創造力を沸かせて経営にいかせる企業」と指摘する。船橋屋の渡辺社長もギンザのサヱグサの三枝社長もスタートアップ経営者や異業種の経営者らとの交流に積極的だ。老舗の挑戦は全国約360万社の中小企業にも参考となりそうだ。

(企業報道部 京塚環、鈴木健二朗)

[日経産業新聞 2019年3月25日付]

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