タイ、軍政継続軸に連立協議へ タクシン派伸び悩む
【バンコク=小谷洋司】24日のタイ総選挙(下院選、定数500)で、親軍政党が事前予想を上回る票を集め、2014年のクーデターから続く軍事政権が事実上継続する可能性が強まった。5年ぶりの政権奪還をねらったタクシン元首相派は伸び悩んだ。安定政権を樹立したい親軍政党は連立工作で下院の過半数をおさえる考え。第三勢力の出方が次期政権と政局の行方のカギを握る。

選挙管理委員会の24日午後11時半(日本時間25日午前1時半)現在の集計によると、全国の得票数は軍政の継続とプラユット暫定首相の続投をめざす新党「国民国家の力党」が約764万票、タクシン派のタイ貢献党が約716万票だった。
現地メディアは24日夜時点で、小選挙区(定数350)の獲得議席数を貢献党129、国民国家の力党99と伝えた。貢献党は11年の前回総選挙の小選挙区で得た204を大幅に下回る。比例区を含めても両党とも単独過半数には届かない。
タイでは軍が貢献党政権を倒した14年のクーデターまで、約10年もタクシン派と反対派の政治闘争が続いた。国民国家の力党を支持した国民は、対立を封じ込めて政情を安定させた軍政を評価したとみられる。
タイ国会は上院(定数250)と下院の二院制。選挙結果の確定後、上下両院の全750人で首相指名選挙を実施し、過半数を得た候補者が首相に就く。軍政下で発効した新憲法は上院を軍政による任命制に変えたため、親軍政党は下院の126議席をとれば上院とあわせてプラユット氏を選任できる。
ただ予算案や法案の通過には下院での過半数の確保が必要だ。24日夜に記者会見した国民国家の力党のウッタマ党首(前工業相)は「議席の確定を待って次のステップに進む」と述べ、連立工作に意欲を見せた。それを阻みたい貢献党も他党との連携に動く見通しだ。
カギを握るのは、小選挙区でそれぞれ30議席前後をとるとみられる第三勢力の動きだ。
貢献党の長年のライバルだった保守系の民主党は退潮が目立つ。プラユット氏に批判的だった党首のアピシット元首相は24日「支持者におわびし、責任を取らねばならない」と辞意を表明した。対照的に、反軍政で貢献党に立ち位置が近いリベラル系新党、新未来党は得票数で民主党を大きく上回っており、比例区を含めると第3党に躍り出る公算が大きい。