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262安打の衝撃 「魔法のつえ」単打量産
イチローの時代(中)

2019/3/23 20:00
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「いやはや、とんでもないことになってきた。彼の素質の深さと学習能力の高さと進化の速さは、私の予想を上回っていたのだろう」。2004年9月、大リーグ通の評論家、芝山幹郎さんが記したコラムは当時の驚きと熱狂を伝えている。

年間最多安打記録を84年ぶりに更新、スタンドの歓声に応えるマリナーズのイチロー=共同

年間最多安打記録を84年ぶりに更新、スタンドの歓声に応えるマリナーズのイチロー=共同

同年のイチローは6月まで105安打で打率3割1分5厘。目立ったペースではなかったが、スタンスを微調整して感覚をつかんだ7月以降、量産体制に入る。9月には1920年にジョージ・シスラーが記録したシーズン最多安打(257本)を射程圏に捉えた。

その瞬間が訪れたのは10月1日、本拠地でのレンジャーズ戦だ。大観衆が総立ちで見守る第2打席、フルカウントからの内角球を中前へ。メジャーの歴史を塗り替えると、262本まで伸ばしてシーズンを終えた。

イチローが海を渡った当時、大リーグは本塁打の花盛りだった。98年にはマーク・マグワイアが70本、サミー・ソーサが66本と球史に残る本塁打王争いを演じ、イチローがデビューした01年にはバリー・ボンズが歴代最多の73本塁打を放った。

そんなトレンドに逆行するように、細身の日本人左打者は単打を積み重ねた。体勢を崩されても安打を生む打棒は「魔法のつえ」と称され、01年は当時歴代9位の242安打。10年連続の200安打以上は「不滅」の呼び声高い金字塔だ。

四球や長打が少ない打撃スタイルに批判の声が上がることはあっても、それが多数派でなかったことは現地の好意的な報道を見ればわかる。04年のスポーツ・イラストレイテッド誌は「(本塁打の増加をもたらした)道具の進化や薬物と無縁に、イチローは歴史上のすべての選手と同じ土俵で戦っている」と安打記録の価値を強調する。ニューヨーク・タイムズ紙は引退に際し「キャリア通算の安打王にはなれなかったが、日米での活躍は彼をそれ以上の存在にした」とたたえた。

262本目の安打を放ち、シーズン最多安打記録を樹立したイチロー=共同

262本目の安打を放ち、シーズン最多安打記録を樹立したイチロー=共同

四球を増やして打率4割を狙うこともできたイチローが率より量にこだわったのはなぜか。芝山さんは「それが彼にとって野球から最も喜びを引き出せる方法だったのではないか」とみる。イチローは元来が究極の「打ちたがり」である。悪球でも積極的に手を出し、死球でも気付かれなければ、知らん顔で打席に残ろうとする。

イチローは引退会見で「野球への愛は変わらなかった。夢中になれるものがあれば壁にも立ち向かえる。僕は我慢もできないですし」と語った。厳密なルーティーンや妥協のない鍛錬は「禁欲的」と評されがちだが、自己規律や義務感といった窮屈な原動力だけでこれほどの高みにたどり着くことはできない。

ヒットを打つ快楽と、常軌を逸した情熱に裏打ちされた28年間。その名人芸は見ていて楽しく、多くの人に愛された。

(吉野浩一郎)

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