携帯電話から五輪メダル 目標5000個分達成へ
不要になった携帯電話や小型家電の素材から2020年東京五輪・パラリンピックのメダルを作る「みんなのメダルプロジェクト」が3月末で終了する。大会組織委員会が目標に掲げたメダル約5000個分の金、銀、銅が集まるめどが立った。持続可能な社会の実現を訴える五輪初の試み。多くの人の協力で作られたメダルが表彰台の選手の胸で輝くことになる。

3月中旬、リサイクル会社「リーテム」の水戸工場(茨城県茨城町)では、自治体から回収した携帯電話やパソコンなどが破砕され、金・銀・銅を抽出するための選別作業が進められていた。
携帯電話は、強い磁力を当てるなどして内部の個人情報などを破棄。抽出した金属は別の工場に送られ、精製される。

組織委は17年4月から、環境省や都などと協力して事業を推進。開始当初の参加自治体は624にとどまったが、現時点では国内の全自治体の9割にあたる約1500に拡大した。各自治体は専用の回収箱を設置したり、イベントで提供を呼びかけたりしてきた。
組織委によると、18年10月末の時点で、銅は目標の100%にあたる2700キロを確保。金は28.4キロ(93%)、銀は3500キロ(85%)が集まった。3月末の回収事業の終了までに「メダル約5000個分の素材が集まるめどが立った」(組織委の担当者)という。
横浜市の会社員、田辺典一さん(55)は、13年に病気で亡くなった妻、真理子さんの形見の携帯電話をプロジェクトに提供した。「いつまでも持っていても仕方ないと思っていたところ、願ってもないチャンスだと思った。妻の携帯電話の素材が使われたメダルが選手の胸で輝くのを見るのが楽しみ」と話す。

NTTドコモの店舗で集めた携帯電話約507万台のほか、各自治体が集めた携帯電話などの小型家電は約4万8千トンに上った。2月には駐日フランス大使のローラン・ピック氏が小池百合子都知事を訪ね、パリ市民から回収した携帯電話の電子基板約300枚を手渡した。
事業を運営する一般財団法人「日本環境衛生センター」(川崎市)の担当者は「これを機に資源リサイクルへの意識が高まれば」と期待する。
国際オリンピック委員会(IOC)は、五輪のメダルのサイズや材質を細かく規定しており、直径は7~12センチ、厚さは3~10ミリ、重さは500~800グラム。金メダルは6グラム以上の純金で覆う金張りで、銀メダルは純度92.5以上の銀製とされている。
メダルの製造は19年1月から始まっており、デザインは既にIOCの承認を受けており、組織委は開幕1年前の19年夏にも公表する方針だ。
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