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数字にできない資本主義(一目均衡)
証券部 関口慶太

2019/3/25 17:00
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JR北鎌倉駅から歩いて20分ほど。鎌倉五山の第一位、建長寺は1253年に建立された日本で最初の禅寺だ。3月22日、この由緒正しきお寺が株主総会の舞台となった。主催は東証マザーズに上場するIT(情報技術)サービス企業、カヤック。本拠を置く鎌倉全体を「ぼくらのオフィス」と呼ぶ。

総会を株主との対話の場と位置付ける企業は増えたが、カヤックは一歩先を行く。昨年は鎌倉を盛り上げる複数のアイデアを提案し株主と議論した。今年のテーマは「企業が地域にできること」。柳沢大輔社長(45)は「地域の住民に株主になってもらう仲間づくり」と話す。

カヤックは2018年12月期にスマートフォン向けゲームの競争激化で赤字になった。「今期は黒字に戻して成長路線に回帰したい」と柳沢氏。だが、本当に重視しているのは数字に示される利益の額ではない。

柳沢氏は「地域資本」という概念を提唱する。人のつながりは「地域社会資本」、自然や文化を「地域環境資本」と位置付ける。どちらも金額ではうまく測れないが、地域資本を厚く持つことで持続的に成長できると説明する。

昨年4月、鎌倉で働く人たちが気軽に利用できる「まちの社員食堂」を開いた。鎌倉投信など鎌倉に拠点を置く企業・団体29社が参画する。鎌倉で働く人が優先的に利用できる「まちの保育園」も開設し利用者がカヤックの株主となる好循環が起きた。「まちの」シリーズは地域創生のモデルとしても全国の自治体から注目を集めている。

かつて産業革命やエネルギー革命が付加価値を生み、金融市場を通じて恩恵が世界に行き渡った。だが経済や社会のシステムが成熟すると成長率が低下する。仏経済学者のトマ・ピケティ氏が資本主義が格差を拡大させると「21世紀の資本」で警鐘を鳴らしてから5年たつが、格差問題が解消する道は見えない。

カヤックの目指す地域密着型の資本主義は、従来の資本主義のアンチテーゼだ。環境や社会への貢献を評価するESG投資や、持続可能な開発目標(SDGs)も見えない価値を評価する動きと言える。アムンディ・ジャパンの岩永泰典チーフ・インベストメント・オフィサーは「いかに成長率を引き上げるかではなく、いかに成長を持続できるかに意識を変化させる投資家が増えた」と話す。

見えない価値をどう測るか。カヤックが試みるのが地域で流通する仮想通貨だ。ためておくだけでは価値が下がるお金、他人のために使うと増えるお金。「それぞれが大切にする価値に合わせて通貨の価値が変わる」(柳沢氏)ことで数字に落とし込む。

カヤックの試みは個人投資家の共感を呼んだ。今年の株価は21%高と日経平均株価の上昇率(5%)を大きく上回る。地域との共生だけではない。人材や技術など企業は数字に表れない資産に支えられている。目に見えるように工夫を凝らせば市場の評価も変わってくる。

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