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25歳競演 学びのタクト 同窓の太田・松本が楽団にポスト(もっと関西)

カルチャー

プロオーケストラの指揮者に25歳の2人が相次ぎ抜てきされる。大阪交響楽団の正指揮者に札幌出身の太田弦、札幌交響楽団の指揮者に大阪出身の松本宗利音(しゅうりひと)がそれぞれ4月から就く。2人は東京芸術大学の同期。くしくも互いの故郷でさらなる成長を期し、クラシック界に新風を吹き込む。

勉強の虫と古風

「2人は正反対の音楽家」。東京芸大で指導した尾高忠明(大阪フィルハーモニー交響楽団音楽監督)は語る。同学年の指揮科は2人だけ。太田については「とにかく勉強の虫。何でも暗譜で振れるようにしてしまうし、指揮が非常に分かりやすい」。一方の松本は「良い意味で古風。分かりやすさよりも、音楽の一番深いところを追求するようなタイプだ」と評する。

幼い頃からピアノとチェロを習った太田は、中学1年で指揮者を目指した。「楽器はあまりうまくないが音楽に関わる仕事がしたいと考えた」。そんな時に札響を指揮する尾高らの姿を見て「研究的なことは得意なので、指揮者の道がある」と気付かされたという。

太田は在学中から頭角を現した。2015年、若手指揮者の登竜門とされる東京国際音楽コンクールで2位。プロオケの指揮経験も重ね、大阪響とは17年6月以来、度々共演する。「リハーサルから全力で応えてくれて毎回、幸せに仕事ができる」と相性も上々だ。

大阪響の二宮光由楽団長は「コンクール後も短期間で成長しており、伸びしろを感じた」と登用理由を説明する。太田は「プロからポストの話が来るのは10年後と思っていた」と謙遜しつつ「自分は研究家肌。それが明確な指揮という評価につながっているのでは」と自信ものぞかせる。

他方、松本も幼少からバイオリンとピアノを学んだ。珍しい名前はドイツの大指揮者、カール・シューリヒトにちなむ。クラシック音楽ファンの両親がシューリヒトの夫人に依頼し、直接名付けられたという。

高校時代に指揮者を志し、シューリヒトらが指揮した演奏のレコードを聴き込んだ。「彼らがどう音楽を作ったかを参考にしつつ、自分にしかない音楽を作る」のが信条。古風と評されるゆえんだ。

札響に抜てきされるまでほぼ無名だった。15年の東京国際コンでは予選どまり。大学卒業後はオーケストラでのアルバイトや、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の指揮研究員を務めた。

札響は18年度末に任期が切れる指揮者の後任を決めるため、若手を相次いで招いた。松本もその一人で、18年7月にベートーベンの交響曲第2番を指揮。「圧倒的な実力」(宮下良介事業部長)と認められ、1度の共演で登用が決まった。松本は「バイトや指揮研究員を通じ、自分の考えを的確に伝えることの大切さを身に染みて感じた。リハーサルからその経験が生きた」と振り返る。

「音楽界を創る」

経営環境が厳しさを増すプロオケで20代の指揮者起用は異例だ。自らも20代で東京フィルハーモニー交響楽団常任指揮者となった尾高は「20代は全てが学び。2人ともやりたいようにやって、失敗しても肥やしになる」とエールを送る。

太田の任期は3年間で、年20回ほど登壇する。今年は楽団主催の「第九特別演奏会」も指揮する。太田は「オケがどう成り立ち、どう動いているか身を持って理解したい」と意欲を燃やす。一方、松本は1年間の任期で更新もある。地方の演奏会や学校公演が中心だ。「与えられた仕事に全力を尽くし、勉強させていただく」と表情を引き締める。

2人は大学入学時、「これからの音楽界を創っていこう」と誓い合ったという。松本は「今の立場からすると大それたことを言っていたが、心の中ではまだ同じ思いだ」と明かす。伸び盛り2人の切磋琢磨(せっさたくま)が楽壇を盛り上げる。

(大阪・文化担当 西原幹喜)

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