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豊島逸夫の金のつぶやき

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春分の日のFOMCにご用心

2019/3/20 11:07
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米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明文発表と米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長記者会見が日本時間21日(春分の日)の早朝に迫っている。予想される市場への影響をまとめておく。

まずは今回、利上げが見送られることは確実といえる。市場の関心は年内の利上げの回数だ。前回のFOMCでは2019年中に利上げ2回を見込むFOMC参加者が多かった。しかし、その後のパウエル議長やクラリダFRB副議長、各地区連銀の総裁たちから「利上げは忍耐強く慎重にデータ次第で決める」とする趣旨の発言が相次いだ。その結果、今や市場では年内の利上げ停止観測が主流になっている。20年には利下げ開始の観測まで浮上しているほどだ。

そこまでFRBの「ハト派」姿勢を織り込んだ市場が注目するのは、FOMC声明文と同時に発表されるFRBの最新経済見通しだ。特にドットチャートといわれるFOMC参加者の金利予測分布で19年は利上げ無しとの観測が主流と確認されれば、債券市場で米ドル金利は軟化、ニューヨーク株式市場は上昇、外国為替市場はドル安・円高進行、商品市場では原油・金価格の上昇が見込まれる。

逆にFOMC参加者の多くが依然として利上げ2回を予測すれば、上記と反対方向の動きとなろう。

さらに重要な問題はFRBの米国経済に関する評価だ。年内の利上げが仮に見送られる観測が強まっても、その理由となる米国経済や中国・欧州への強い懸念が声明文に明示されれば、特に株式市場には下押し圧力となりかねない。一方で、年後半には世界経済が持ち直すとの観測がにじむ現状認識であれば、9月か12月ごろにも1回は「過熱予防」のための利上げが必要との見方もある。その場合は株価にとって、長期的な上げ材料になる可能性がある。

果たして市場は、経済の下振れリスクを重視するのか、あるいは利上げ回避の緩和姿勢を歓迎するか。決め手となるのは、声明文で使われる形容詞・副詞などの単語や、さらに記者会見におけるパウエル議長の受け答えであろう。「忍耐強く(patient)」との単語が繰り返されることになりそうだが、そのpatientという形容詞に、強弱を示す副詞が一語つくか否かで市場の反応は大きく変わる。英文解釈のごとき世界だが、これが市場の実態だ。

例えば、パウエル議長が「FRBの緩和姿勢維持」を語ったとき、そこに「当面は(for now)」という表現をさりげなく加えたことで、市場は、すわ利上げ近しかと反応した実例もある。最近はパウエル議長も発言に慎重となり、壇上での対談でも原稿を読むほどになったが、台本無しの記者会見の発言には要注意だ。

利上げにも「良い利上げ」と「悪い利上げ」がある。今後に期待される景気の好転が労働生産性上昇の結果であれば、景気回復の過熱を防ぐ意味で良い利上げとなる。そこで最新の米国の労働生産性統計を検証すると、18年10~12月には前年同期比で1.8%上昇した。15年1~3月以来の上げ幅である。18年通年で見ても、生産性の上昇トレンドは続いた。FOMCがこの点を評価すれば、仮に利上げとなっても、株式市場で利上げを恐れずとの見解が浮上しよう。

次に市場の注目点は、量的緩和政策で米国債や住宅ローン担保証券(MBS)を買いまくった結果、ピークで4.5兆ドルにまで膨張したFRBの保有資産圧縮プログラムだ。現状では毎月500億ドル程度減らし続け、4兆ドル規模まで縮小している。この資産圧縮は量的緩和政策の巻き戻しゆえ、量的引き締めとも呼ばれ、緩和慣れした株式市場では嫌気される。パウエル議長が、この資産圧縮を今後も「自動操縦」で続けると語ったときには株価は急落し、市場は混乱した。懲りたパウエル氏はその後に発言を撤回して、「年内には資産圧縮終了」との意向を議会公聴会でも語った。市場は今回のFOMCで、9月ごろには資産圧縮が終わると見込み始めている。この終了時期が仮に6月ごろとなれば株式市場は歓迎しよう。一方で、仮に終了時期が明記されないと「ぬか喜び」の疑念が頭をもたげる。ここでも近々に終了かと、いずれ終了かでは、市場の反応が大きく振れるのだ。

なお資産圧縮については、パウエル議長記者会見で、最終的なFRB資産の適正規模が何兆ドルか、との質問も出よう。市場のコンセンサスは3.5兆ドル程度だ。これが3兆ドル以下となれば、まだ資産圧縮が継続すると解釈されかねない。3.5兆ドル以上であれば、おのずと終了間近との観測が強まろう。

さらに保有資産の内訳も重要視される。

MBSは償還時期がかなり先の長期債が多いが、国債は償還を間近に控えた長期債が多い。仮に3.5兆ドルの資産規模を維持するとすれば、償還された国債分は再び国債に再投資される。その際に、長期債と短期債の運用配分が市場の変動要因となるのだ。基本的にはFRBが長期債を買えば長期金利が下がり、市場ではリスク資産が選好される。ゆえに短期債を増やしておけば、将来に短期債から長期債に乗り換えることで市場には緩和効果が働く。これはFRBにとって有力な緩和政策の手段となる。

景気循環では、次の景気後退期において現状でFRBの利下げも2.5%が限界だ。歴史的に見て、過去の利下げサイクルは平均で5%弱の利下げが景気回復のために必要であった。そこで金融政策の手詰まり感が懸念される状況下では、FRBとして金融政策の道具箱にできる限りのツールを備えておかねばならない。

そこでインフレターゲットを2%から引き上げる案も、一部の地区連銀総裁が示唆している。インフレ率が2%を超えても利上げせずとの可能性が語られるだけで、株式市場には買い材料となろう。

最後に東京市場への影響は、明日21日が休日(春分の日)ゆえ22日の金曜日まで待たねばならない。その間、特に海外外為市場で日本時間21日早朝の取引が薄く、東京市場が休日を狙った投機筋が、円売買を仕掛ける可能性に要注意だ。年末年始のような日本の留守中に一気に1ドル=104円台に達するような上昇は考えにくいが、FRBのハト派スタンスが想定以上に強く表現されれば瞬間風速で108円程度まで円が急伸するシナリオも絵空事とは言い切れまい。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
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