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今日も走ろう(鏑木毅)

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宿命にあらがわず 許容したい「人生いろいろ」

2019/3/21 6:30
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娘がこの春から小学生になる。赤ん坊だったあの子が小学生なのかと感慨にふけることしきりだ。親なら誰しも感じることだろう。我が家は結婚して15年目に授かった一人娘のため、とりわけ思いが強くなるのかもしれない。

長い間子どもがいない時間を過ごしていると周囲から頻繁に「お子さんは?」と問われる。「いない」と答えると、多くの場合、「子どもはかわいいですよ」「人生に張り合いができるよ」「年をとると産むのは大変だし、子育ても楽ではないよ」などと言葉をかけられる。なかには「どうして子どもができないの?」と直接的に問う人や、「子どもがいないなんて親が勝手すぎる」と叱責する人もいた。

もちろんそうした言葉の多くは親切心から発せられたものだと頭では理解していても、私たち夫婦は次第にうんざりし、人との付き合いを避けることもあった。「年をとったら誰があなたの面倒をみるの? 老後が寂しいよ」と言われることがあっても、妻の大好きな犬を飼い、夫婦で十分楽しめる人間関係を築いていこうと前向きに考えていた。子どもがいればそれはそれでよいけれど、いなくても別段寂しいわけではなく、二人の生活は気ままで楽しく、いつも互いの夢を全力でサポートしあいながら満ち足りていた。

結婚15年目に授かった娘とヨーロッパアルプスをトレッキング

結婚15年目に授かった娘とヨーロッパアルプスをトレッキング

だが社会的には、結婚してしばらくすれば子どもがいて当たり前で、いない私たち夫婦はいろいろな場面で一人前になりきれない人間のようにみなされ、扱われているような気がしていた。

妻は43歳で出産し、それまでとはまるで異なる日々を送ることになった。今度は「やはり子どもがいるといいでしょう?」と問われる。子育ての苦労や将来への不安は絶えないけれども、娘が一つひとつ何かができるようになる過程を楽しむ経験は確かにある意味充実している。

とはいえ最近思うのは、私たち夫婦には子どものいない人生であってもきっと楽しいものだったに違いない、ということだ。こんなことを耳にすれば、娘は悲しむかもしれない。ただ、子どもを望んでいてもさまざまな理由で思うようにならない人々もたくさんいる。それなのに何となく世の中全体で子どもを持つことが幸せの大前提という空気感が膨らんでいるような気がしてならない。こうした風潮には息苦しさを感じるし、違和感もある。

人生には自分ではどうにもならない宿命のようなものがある。例えば生まれた家庭の環境や性別、容姿など、どうにも変えられないものから、就職や人との出会いと別れなど一見、自分でコントロールできるようでいて実際にはできないことまで。子どもを持つか否かということもそのひとつではないか。このような宿命にあらがおうとすると心は晴れず人生を存分に楽しめない可能性がある。それよりも素直に従う心の持ちようが重要だろう。人生いろいろな立場の人々を広く受け止め、理解できる懐の深い社会になることを願う。娘の未来のためにも。

(プロトレイルランナー)

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