2019年7月24日(水)

広島、岡山けん引 公示地価 ホテル建設ラッシュ

2019/3/19 17:35
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国土交通省が19日発表した2019年1月1日時点の中国5県の公示地価は、商業地の平均地価変動率が0.9%の上昇と、2年連続でプラスとなった。都心部を中心にホテル建設や商業施設などの整備が進む広島県、岡山県が全体をけん引した。一方、広島県呉市や岡山県倉敷市など、西日本豪雨で被災した地域では爪痕が残り、下落幅が全国の中でも際だって大きかった。

■中心部、ビル建て替え工事も相次ぐ

広島市中心部の紙屋町・八丁堀地区。街を歩けば高い頻度で建設現場の仮囲いを見かける。同地区ではインバウンド増をにらみ、ホテルの建設ラッシュに沸いている。

八丁堀地区にはオフィスビルが数多く立ち並ぶ(広島市)

八丁堀地区にはオフィスビルが数多く立ち並ぶ(広島市)

この1年で1棟200室規模のホテルが3棟相次いで開業した。「広島アンデルセン」の旗艦店や広島銀行の新本店など商業施設やオフィスビルの建て替え工事も相次いでいる。

最高価格地の三菱UFJ信託銀行広島支店は13.9%の上昇。同エリアが18年10月に国から「都市再生緊急整備地域」に指定されたことも追い風になっている。土地の利用制限の規制緩和や、税制上の優遇などが受けられることから、建て替え需要はさらに広がりそうだ。

広島東警察署の跡地一帯では米大手ホテルチェーンのヒルトンが、客室400室数のホテルを22年ごろに開業する。広島駅周辺を含む市内中心部一帯では現在、10棟前後のホテルの建設が進んでおり、22年ごろまでにホテル客室数は約2400室増える見通しだ。

24年春には市内中心部の広島中央公園の広場にサッカースタジアムが開業。加えて広島駅南口一帯の再開発で、25年春にはホテルと映画館を併設し、駅2階中央に路面電車が乗り入れる新しい駅ビルが開業する。不動産鑑定士の中村真二氏は「紙屋町・八丁堀地区に限らず、市内では今後、幅広いエリアでの発展が期待できる」と話す。

広島県福山市でも上昇幅が拡大基調にある。JR福山駅前では18年末から老朽ビルを改装した新店開業が相次ぐ。駅前のトモテツビルやエム・シー福山ビルでは解体が進んでおり、20~21年にもそれぞれホテルに生まれ変わる予定だ。「福山駅前の時間貸し駐車場料金が上がったという。駅前の需要が高まってきたことの表れだ」(築切家守舎の藤本慎介社長)との声もある。

岡山市も岡山駅周辺を中心としたホテルやマンションなどへの再開発需要を背景に活発な取引が続いている。不動産鑑定士の日笠常信氏は「利便性が高い岡山市や倉敷市などの県南部、岡山市内でも中心部に人気が集まっている。人口減少が続く県北部での下落基調は続いており、二極化の流れは止まっていない」と指摘する。

■商業地の平均地価変動率は0.9%上昇

中国5県の商業地の上昇幅は昨年(0.4%)から拡大。商業地の地価上昇地点数は182カ所と、昨年(163カ所)と比べ1割増えた。

広島県は2.7%の上昇となった。上昇は4年連続で、上昇幅も昨年(2.0%)から拡大した。岡山県では0.7%の上昇。調査地点が多い岡山市(2.4%上昇)が押し上げた。

島根県、鳥取県、山口県はそれぞれマイナスとなったが、下落幅はいずれも改善した。山口県では0.3%の下落と、18年(0.6%の下落)から改善。道路に面した「ロードサイド型店舗」の出店の増加に伴い、土地需要が広がっている。

中国5県の住宅地の地価変動率は0.1%の上昇と、27年ぶりにプラスに転じた。景気回復や低金利の影響で住宅需要が堅調に推移していることが背景にある。山口県では0.1%のプラスと、21年ぶりに上昇となった。JR新山口駅や新下関駅周辺の再開発に伴い、新たな住宅需要が生まれている。

広島県は0.9%の上昇。岡山県では倉敷市など西日本豪雨で被災した地域の下落が重荷となり、0.6%の下落となった。

山陰地方では下落幅の改善がみられる一方、高齢化や過疎化が進む地域での地価の下落は加速している。鳥取県の住宅地は0.8%のマイナスだった。マイナスは19年連続。利便性の高い鳥取市、米子市を中心に上昇地点は増えたが、中山間地域の若桜、智頭両町の地点などで下落し、二極化の傾向が目立った。

両地点とも地域の拠点となる鉄道駅から近い場所にあるが、住宅需要は減少している。不動産鑑定士の村上保雄氏は「人口減・過疎化が進む中山間地域で下落が目立つ」と話す。

島根県で住宅地、商業地とも下落率が最も高かったのは川本町。人口減少や高齢化による地域の衰退が響いた。同県の住宅地では下落率10位内に、益田市内の地点が4カ所入った。住宅の供給過剰に伴う需要バランスの変調が影響したもよう。

■爪痕残る豪雨被災地、下落幅2桁も

2018年7月の西日本豪雨で大きな被害を受けた広島県南部の商業地も地価下落幅ワースト5位に2地点が入った。

商業地の地価で全国最大の下落幅となった呉市安浦町(奥がJR安浦駅)

商業地の地価で全国最大の下落幅となった呉市安浦町(奥がJR安浦駅)

全国で唯一2ケタの下落幅(11%)を記録した呉市安浦町中央。JR呉線の安浦駅前の一帯で、05年に呉市に編入される前は旧安浦町の中心市街地だった。ここに豪雨で氾濫した河川の泥水が押し寄せ、市街地が幅広く床上浸水の被害を受けた。30年近くにわたり地域のくらしを支えていたスーパー「ゆめマート安浦」も長期の営業休止の末、昨年11月に閉店を決めた。

JR安浦駅近くにあったスーパー店舗跡。浸水のダメージが大きく営業再開を断念した(呉市安浦町)

JR安浦駅近くにあったスーパー店舗跡。浸水のダメージが大きく営業再開を断念した(呉市安浦町)

「豪雨以降、浸水被害で駅近くの店が次々と閉じ、ドラッグストアもなくなった。今はスーパーが1キロメートル以上離れたところにしかなく、買い物が不便になった。高齢者がかわいそうだ」。同地区の喫茶店の店員は話す。この店も3カ月近く営業中断を余儀なくされたという。安浦町地区は山沿いでも土砂災害で4人の犠牲者があった。豪雨がこの地域に残した爪痕は深い。

全国4位の下落幅(7.6%)だった東広島市安芸津町三津も、安浦町地区と同様に近くを流れる河川氾濫による浸水で大きなダメージを受けた地域だ。豪雨でJR安芸津駅前の商店街一帯が1メートル前後浸水した。5カ月以上ストップしていたJR呉線は昨年12月半ばに全線で運転を再開したが、商店街で営業を再開した店はまばら。歩く人の姿もほとんどなく、地域は活力を奪われたままだ。

豪雨で浸水被害を受けたJR安芸津駅周辺は商業地で全国4位の下落幅を記録した(広島県東広島市)

豪雨で浸水被害を受けたJR安芸津駅周辺は商業地で全国4位の下落幅を記録した(広島県東広島市)

ただ、今月16日のJRダイヤ改正が明るい話題にもなっている。商店街近くに住む高齢女性は「呉線に新型車両が走る。運転本数も増えたので街も少しずつ元気を取り戻すと思う」と話していた。

岡山県の被災地域では住宅地が大幅に下落した。浸水被害が大きかった倉敷市真備町地区の3地点の下落率は17.7~17.4%と全国1~3位を占め、総社市も1地点で下落幅が2ケタを超えた。不動産鑑定士の日笠常信氏は「両地区はもともと緩やかな下落基調にあった」としたうえで、「水害による人口減少や店舗の閉店などで、土地取引が急減した」と話す。

ただ、先行きに関しては底を打ったとする見方もあり、「下落幅は今回ほど大きくはならないだろう」(日笠氏)としている。

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