NATO国防費、目標達成7カ国止まり 米独亀裂拡大も - 日本経済新聞
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NATO国防費、目標達成7カ国止まり 米独亀裂拡大も

【ブリュッセル=森本学】米欧の軍事同盟、北大西洋条約機構(NATO)加盟29カ国のうち、国防費支出を国内総生産(GDP)比で2024年までに2%以上に増やす目標を18年に達成したのは7カ国にとどまった。NATOが今月中旬に公表した資料で明らかになった。前年の4カ国からは増えたが、米国が達成の前倒しを求めるなか、ドイツは逆に23年に約1.25%と下方修正する動きもみせる。国防費問題を巡って米欧の亀裂が広がりかねないとの懸念もある。

NATOは14年のロシアによるウクライナ南部・クリミア半島の併合を受けて対ロ防衛の増強を決定。24年までに各国の国防費をGDP比2%以上に引き上げる目標も設け、欧州での平均は14年の1.44%から18年は1.51%へ上昇した。

しかし17年に就任したトランプ米大統領は米国ばかりに負担が集中して「不公平だ」と訴える。18年7月のNATO首脳会議で各国に「ただちに2%払え」と強く要求、さらに4%への目標倍増も求めていた。

NATOの資料によると、18年にGDP比2%目標を達成したのは7カ国。17年も達成していた米国(3.39%)、ギリシャ(2.22%)、英国(2.15%)、エストニア(2.07%)の4カ国に加え、ロシアの危機に直面するポーランド(2.05%)、ラトビア(2.03%)、リトアニア(2.0%)が伸びた。

目標を大幅に下回ったのは、トランプ氏の最大の標的だった経済大国ドイツだ。18年の国防費は17年から横ばいの同1.23%。ストルテンベルグNATO事務総長は14日の記者会見でドイツが国防費を「さらに増やす意向だと明確にした」と述べたものの、米欧メディアによると独財務省高官は18日、20年には同1.37%に上がるが23年には1.25%程度に再び下がる見通しを示した。

メルケル首相は昨年、24年までに1.5%に引き上げる意向を示した。ただ最近は、イラン核合意やロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約など多くの国際協調の枠組みを否定する「米国第一主義」から距離を置く姿勢もみせる。

メルケル氏は2月中旬のミュンヘン安全保障会議での演説で「多国間主義は困難で複雑だが、単独で問題を解決できるとの考えよりましだと信じている」と強調。出席したペンス副大統領を前にトランプ政権を批判した。今回のドイツの国防費の抑制方針に米側は早くも懸念を示す。米側にはドイツの慎重姿勢の背景にロシアの脅威への認識不足があるとの不満もくすぶっている。

トランプ政権で広がった米欧の亀裂が解消に向かう兆しはみえない。18年、欧州側の信頼が厚かったマティス米国防長官(当時)が同盟国との関係を巡る路線対立で辞任。伝統的に米国と欧州大陸との仲立ち役を務めてきた英国は欧州連合(EU)離脱問題で外交的な余力を失っている。

NATOは4月にワシントンで外相理事会、12月に最初にNATO本部が置かれた英ロンドンで首脳会議を開き、設立70年を祝う予定だ。ただ結束を確認するはずの12月の首脳会議で国防費問題を巡る加盟国の亀裂が広がるとの懸念は根強い。

3月上旬にはトランプ氏がドイツや日本などの同盟国に、米軍駐留経費の支払い拡大の要求を検討していると米ブルームバーグ通信が伝えた。トランプ氏が内々でNATO軽視の発言をしているとの報道も絶えない。NATO関係者からは米欧同盟が揺らげば「ロシアや中国を利することになる」との声も聞かれる。

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