小児の肝臓難病、iPSで再現 治療法開発へ前進
東京医科歯科大学の柿沼晴准教授や朝比奈靖浩教授らは、これまで治療法がほとんどなかった小児の肝臓の難病を、iPS細胞で再現することに成功した。治療の標的となる可能性があるたんぱく質を突き止めた。薬剤を加えると病気を起こす異常な細胞の働きを抑えられることも確認した。治療で使える薬剤探索を続け、医師主導治験などを通じて治療法の開発を目指す。
再現した病気は、小児の肝臓の難病のひとつ、先天性肝線維症。消化を助ける液を肝臓に送る胆管が変形したり、肝臓が硬くなったりして機能不全になる。厚生労働省が指定する小児慢性特定疾病の一つで、1万から4万人に1人が発症する。発症すると肝臓移植しか有効な治療法がない。
チームは、健康な人のiPS細胞を使い、ゲノム編集技術で原因遺伝子を欠損させて、病気の胆管細胞を作った。できた細胞は患者の肝臓と同じような状態になり、異常に増えやすくなっていた。
作った胆管細胞を詳しく調べると、抗炎症物質の一種、インターロイキン(IL)8というたんぱく質が大量に分泌されていることが判明。これに伴って、肝臓を硬くする別の分子も増えていた。2種類の薬剤を細胞にかけると、IL-8などの分泌が抑えられた。
これまで先天性肝線維症の原因遺伝子は特定されているが、マウスの遺伝子を操作しても患者の病態にならないため動物モデルとならず、治療法の開発が進まなかった。朝比奈教授は「小児に使える薬剤を探し、具体的な治療法につなげたい」と話す。