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豊島逸夫の金のつぶやき

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春分の日の円高はあるか

2019/3/19 9:57
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昨年には3%台に定着すると語られていた米10年債利回りが、先週から2.5%台まで下落する局面が見られる。低インフレ時代を象徴するごとき現象だ。このような経済環境で、市場は19~20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)に向け助走を開始している。

金融政策を巡る議論もヒートアップしてきた。

まず、金融政策の方向性を明示するツールとして、3カ月ごとに発表されるドット・チャート(FOMC参加者の金利予測分布)を廃止すべきか否か。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、無用の市場混乱を引き起こす可能性を懸念している。イエレン前議長は、金利予測はあくまでFOMC参加者の個人的見解と強調していた。

ドット・チャートを重視して将来の利上げ回数を議論してきた市場では、廃止論に懸念の声があがる。何をよすがに、金融政策の先行きを測ればよいのか。唐突にFOMC声明文で金融政策変更が告げられ、市場が乱高下するリスクを無視できない。

代替的な金融政策ツールとしては、インフレ・ターゲットを引き上げる案が論じられている。目標インフレ率を2%から引き上げる可能性だ。2%を突破しても利上げせず、量的引き締め(FRBのバランスシート圧縮)は停止するシナリオだ。マーケットでは、かなりの緩和姿勢と評価されよう。

量的引き締めについては、落としどころ、すなわち「最終的にFRBの保有資産は何兆ドルが適当か」との議論も関心が高い。イエレン時代には、2020年を過ぎても徐々に減らし続けるとの方針が明示された。量的緩和終了時に4.5兆ドル規模まで膨張したFRB保有資産の最終的な適正規模は、2兆ドルから多くて3兆ドル、という見方が大半であった。しかし、現在は3.5兆ドル程度との意見が増えている。3兆ドル以下まで減らすと、金融引き締め効果がオーバーキル(締めすぎ)となるリスクが警戒されているのだ。バーナンキ元FRB議長は「経済が成長すれば、FRBの資産規模が増えるのは当然」との意見だ。

仮に3.5兆ドルとすれば、もはや、資産規模の減少余地は5000億ドル程度である。現在の月減少ペースが最大500億ドルとされるので、年内には終了となる。秋口には量的引き締めが終了するとの観測の根拠にもなっている。

利下げの可能性を巡る議論も日々顕在化している。

18日には、コチャラコタ前ミネアポリス連銀総裁が経済テレビで「インフレ率が上がらない状況では、次の景気後退に備える予防的措置として利下げも考慮すべきだ」と発言した。現状の米政策金利は2.25~2.5%のレンジで、すでに中立金利に近い水準と見られる。FRBの次の一手は「もはや利上げではなく利下げ」との見解だ。

FOMC後の記者会見で頻繁に質問者となる米国連邦準備制度(FED)ウオッチャーのスティーブ・リースマン氏は、米CNBCの調査結果として、約3割の市場関係者が2020年の利下げを見込んでいると報告した。メディアでは「利下げに備えよ」との特集も見られた。

ただし、利下げせねばならぬほどの米国経済の下振れや欧州・中国経済の波乱は「ブラックスワン」(確率は低いが起これば壊滅的被害を引き起こすイベント)と位置づけられる。

米朝関係がきしみ始め、今月末に予定されていた米中トップ会談も米朝会談不調を受けて先送りされそうな状況だ。北朝鮮の核実験再開や米中通商協議不合意シナリオがリスクとして浮かぶ。

習近平(シー・ジンピン)氏は、ブラックスワンだけではなく、「灰色のサイ」にも警鐘を発した。起こる確率は高いものの、だれも何もできずに見ているしかないリスクのことだ。具体的には中国の債務膨張リスクを指すと理解されている。

かくして、日本時間の春分の日早朝に行われるパウエル議長の記者会見への注目度は高い。FRBのハト派姿勢がさらに強まれば、休日のドル安・円高進行に要注意である。

豊島逸夫(としま・いつお)
 豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・公式サイト(www.toshimajibu.org)
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
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