名門ドイツ銀、低収益に再編圧力 コメルツ銀と交渉

2019/3/19 1:31
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【ベルリン=石川潤】経営再建中のドイツ銀行が17日、同じ独大手のコメルツ銀行と統合交渉を進めると発表した。名門といわれたドイツ銀は成長戦略の海外事業でつまずき暗転。単独再建をめざしていたが、収益回復が進まず再編圧力が強まっていた。ドイツ銀が直面する過当競争や超低金利の逆風は欧州銀全体に共通し、再編の動きが広がる可能性もある。

「ドイツ、欧州市場をリードするグローバルバンクであり続ける」。ドイツ銀のゼービング最高経営責任者(CEO)はコメルツ銀との統合交渉に関し、従業員へのメッセージでこう強調した。 2018年に3年続いていた最終赤字を抜け出したものの、黒字額は3億4100万ユーロ(430億円)、利益率はわずか0.5%にとどまった。直近の18年10~12月期では4億900万ユーロの最終赤字。株価は1年で半値と厳しい状況が続く。

ドイツ銀は戦後、企業の海外進出を支えることで母国経済の拡大とともに成長した。高度成長の終わりで収益が伸び悩むと、1980年代末頃から投資銀行部門の強化に軸足を移し始めた。

98年の米バンカース・トラスト買収以降、米ウォール街に本格進出。一時は米銀大手と肩を並べるほどに業績を伸ばし、戦略転換の成功例ともてはやされた。

状況が一変したのは08年のリーマン・ショックだ。危機前に米国で扱っていた住宅ローン担保証券の不正販売を巡り、16年に72億ドル(8000億円)もの巨額罰金を支払う憂き目にあった。

17年には80億ユーロもの資本増強、大規模な人員削減や母国での商業銀行業務の回帰にかじを切った。だが米銀に比べて金融危機に伴う損失処理が中途半端だったことが、いまだに尾を引いているとの指摘が多い。

進まぬ再建に危機感を抱いて統合を後押ししたのが独政府だ。政府にとって「強い銀行部門」(ショルツ財務相)を取り戻すことは、中小企業中心のドイツ経済を支えるうえで不可欠なためだ。政府が15%出資し中小企業向けが強みのコメルツ銀がほかの海外銀行に買収されれば、ドイツ銀は統合相手を失うだけでなく独国内でも厳しい競争にさらされる。

統合はいばらの道だ。ゼービングCEOは従業員に、交渉がどう転ぶかは「不確かだ」と明かしている。ドイツ銀が9万人、コメルツ銀が5万人の従業員を抱え、最大で3万人程度のリストラの観測もあり、労働組合は強く反対している。

両行をあわせた独国内のリテール部門のシェアは20%程度とみられる。これまで域内の銀行統合を促してきた欧州中央銀行(ECB)などの監督当局は再編計画を慎重に見極める構えだが、独禁当局は今のところ容認姿勢をにじませている。

両行の統合が実現すれば欧州で第3位の規模の銀行グループとなるものの、域内でさえ圧倒的な存在とはいえない。欧州金融大手は自己資本利益率(ROE)などでみて米国勢に見劣りし、その中でもドイツ銀とコメルツ銀は特に収益性が低い「弱者連合」だ。

欧州では中小を含めて数千の金融機関がひしめき、過当競争が激しい。ECBが年内利上げを断念し、利ざやを稼ぎにくい超低金利の長期化も避けられなくなっている。ドイツ銀とコメルツ銀の統合交渉が、欧州銀再編の連鎖の先駆けとなる可能性もある。

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