2019年4月26日(金)

ゲノム編集食品 今夏にも流通 厚労省が了承

科学&新技術
2019/3/18 21:03
保存
共有
印刷
その他

遺伝子を効率よく改変できる「ゲノム編集」という技術を使った食品が、早ければ今夏にも市場に流通することになった。厚生労働省が18日、ゲノム編集で開発した一部の食品は従来の品種改良と同じであるとして、同省の安全審査を受けなくても届け出だけすれば流通を認める方針を固めた。ただゲノム編集食品を巡っては安全性を疑問視する消費者もおり、正しい情報を伝える食品表示のあり方などが課題になりそうだ。

ゲノム編集は遺伝子を改変する新しい技術。従来の遺伝子組み換え技術は、微生物などの別の生物の遺伝子を入れることで、農薬や害虫に強い品種を作る。耐病性など限られた機能しか持たせられず、他の生物の遺伝子が入るため安全性に対する不安が根強い。

一方、ゲノム編集を使った品種改良は主に遺伝子を切断して働きを止める方法によって作物自体の遺伝子を改変するので安全性が高いとされる。遺伝子によって味や栄養を自在に変えることもでき、消費者にメリットの大きい品種が短期間で簡単に開発できる。

厚労省は遺伝子を切断して働きを止める方法は、自然に起こる突然変異や従来の品種改良と見分けがつかないため規制の対象外とした。改変した遺伝子や有害物質の有無などの情報を同省へ届け出れば、安全審査を受けなくても販売を認める。

一方、ゲノム編集には新しい遺伝子を挿入する方法もある。同省はこの手法は安全性の確認が必要として、これまでの遺伝子組み換えと同じように安全性を審査する。

厚労省は18日に専門部会を開き、流通に向けたこうしたルール作りの方向性を決めた。届け出の内容などを今後検討し、早ければ夏にも申請の受け付けを開始する。今夏までに申請を受け付ける仕組みなどを設けるほか、申請する民間企業などが相談できる体制も整える。

ゲノム編集食品の扱いは各国で議論が分かれている。米は農務省が2018年3月にゲノム編集食品の栽培を規制しない方針を出し、実際に栽培されている。ただ食品の販売はまだ始まっていないとみられる。一方、欧州では司法裁判所が18年7月に遺伝子組み換えと同様に規制するとの判断を出し、慎重に議論を進めている。今夏にも日本で流通が始まれば、世界で先行することになる。

国内ではゲノム編集食品の研究開発が進んでいる。筑波大学は栄養の多いトマトを開発した。血圧を下げる効果があるとされる「GABA」というアミノ酸を通常のトマトの約15倍多く含む。今年中の販売開始を目指している。

農業・食品産業技術総合研究機構は収量の多いゲノム編集イネを開発した。17年春に野外栽培実験を始め、同年秋に初の収穫を終えている。近畿大学と京都大学は筋肉量が通常の約1.2倍あるマダイを開発した。食べられる部分が増えて付加価値が高まる。

ただ流通に向けた課題は残る。厚労省は届け出の義務化を見送ったからだ。ゲノム編集による遺伝子の変化は突然変異との見分けが難しく検出できないのが理由だが、実際に企業などが届け出をするかは疑問だ。このため厚労省は届け出の義務化も視野に入れた検討を続けるとしている。

春割実施中!無料期間中の解約OK!
日経電子版が5月末まで無料!

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報