週末レシピ 昭和カスタードプリンVS平成とろプリン

「プリン」と言って、どんな味や食感を思い浮かべるかは、年代によりかなりの差が出る。昭和生まれの私にとってプリンとは、キャラメルがほろ苦く、卵が濃厚なカスタードプリンがスタンダードだ。一方、平成生まれに同じ質問をすると、甘くなめらかで、トロトロかつクリーミーだと言う。どちらのプリンもおいしいのだが、年代によっておいしさの感じ方に違いがあるようだ。
今回は、昭和の「カスタードプリン」と平成のプリンをアレンジした「ハイブリットプリン」の2つのレシピを紹介する。
まずはクラシカルな、昭和の「カスタードプリン」から始めよう。

砂糖 大さじ10 / 水 大さじ2 / ぬるま湯 大さじ2
(1)鍋に水と砂糖を入れ、溶けてから軽く混ぜる
(2)キャラメル色になったら、ぬるま湯を加える
(3)プリンカップの底が隠れるように、等分する
プリン液を作る間、カップはそのまま放置しておこう。キャラメルの表面が固まっていないと、プリン液とキャラメルが混ざってしまうので注意。先に、型の内側にバターを塗っておくと、あとで抜きやすい。

全卵 3個 / 卵黄 1個 / 砂糖 2分の1カップ / 牛乳 2カップ / 生クリーム 2分の1カップ / バニラエッセンスなど 適宜
(1)ボウルで全卵、卵黄、砂糖を泡立てないように混ぜる
(2)牛乳と生クリームを、鍋で沸騰直前まで温める
(3)(1)に(2)を注ぎ混ぜ、バニラエッセンスを加える
(4)ザルなどでこし、<下準備>(3)に流し入れる
(5)天板に湯を張り、150度で30~40分ほど焼いてから冷やしてできあがり

苦みばしったキャラメルと、卵の風味が豊かでしっかりと硬く濃厚な味わい……。私は、これこそが本来のプリンだと思っていた。しかし、平成生まれにとっては、キャラメルはさほど重要でない。とろけるような口触り、ひっくり返せないほどのクリーミーさの方が大切で、それこそがプリンなのだ。
いったいこの差はなぜ生まれたのか。いつからプリンは甘くトロトロになったのだろう。それは平成に入って少したった頃に発売された、とある洋菓子店の「なめらかなプリン」の影響が大きいと考える。
では次に、平成の「クリーミープリン」を作ろう。と、言いたいところだが、その前に……。
昭和派だの、平成派だの言っているが、スーパーなどで売られている、プラスチック容器の裏をプチッと折ると、パカッと中身が出てくるタイプのプルプル派も一定数いることを忘れないでほしい。

関西在住の友人いわく、「ちっさい頃、普段はスーパーで売っとるよおなプリンしか食べへんかったん。たまにカスタードプリンを食べると、プルプルしてへんなあって不思議やったわあ」とのこと。また別のアラフォー男性は、「プリンは、黄色い部分がメインだろ?キャラメルにはあまり興味ないなあ」と。さらに別の友人は、「プリンは好きだけど、キャラメルって苦手なのよね」との声もある。平成派同様、こちらの派閥もキャラメルに重きを置いていないようだ。
昭和派も平成派も、味や食感に違いはあれど、卵、牛乳、砂糖を原料にし、加熱して固めているのは共通している。対して、プルプル派は、熱を加えず、ゼラチンなどを用い、冷やして固められている。そのため、昭和派とも平成派とも違う、プルッとした食感に仕上がる。

そこで、2つ目のプリンとして、平成派とプルプル派のいいとこ取りをした、スプーンを入れるとプルッ、口解けはトロッの両方を楽しめる、「ハイブリッドプリン」の作り方を伝授する。
卵黄 4個 / グラニュー糖 大さじ6 / 牛乳 1カップ / 生クリーム 2カップ / 粉ゼラチン 小さじ4 / バニラエッセンスなど 適量
ゼラチンを使っているので、混ぜて冷やすだけ。オーブンを使わず、手軽に作れるのが魅力のひとつ。ゼラチンは、先に水でふやかしておこう。
(1)牛乳と生クリームを沸騰直前まで温め、ゼラチンを溶かす
(2)卵黄と砂糖を混ぜ、(1)を注いで、ザルなどでこす
(3)容器に流し、冷蔵庫で冷やし固めてできあがり
残った卵白は、捨てずに、中華風スープやみそ汁などに入れるとおいしい。

カフェ文化が根付いてだいぶたつが、その昔、喫茶店で定番のデザートといえば「プリンアラモード」だった。「カスタードプリン」がどっしりと鎮座し、おしゃれにカットされたフルーツが脇をかため、濃厚な生クリームでドレスアップ。最後に、真っ赤なチェリーがちょこんと添えられている。これこそ、昭和の「プリンアラモード」だ。トロトロのプリンはひっくり返せないので、適さないのだろう。
「ア・ラ・モード」とは、フランス語で「最新の」「流行の」を意味するため、「プリンアラモード」は、「最新式の流行プリン」ということになる。
フランスでは、プリンのことを「クレーム・ランベルセ」や、「クレーム・オ・キャラメル」と呼ぶ。それぞれの直訳は、「ひっくり返したクリーム」、「キャラメル添えクリーム」となるので、ひっくり返せないとプリンではない、キャラメルがないとプリンではない。ということか。

平成に入ってからは、なめらかなプリンが優勢で、「カスタードプリン」は「懐メシ」的な扱いを受けていた。ところが、近年では平成生まれに「新しい味」として認識され、カスタードプリンも盛り返しているようだ。
数年前、知り合いがオーナーを務めるワインバーで食べたプリンに衝撃を受けた。ガッチリとしつつも口溶けがよく、濃厚でなめらかなカスタードプリンに、かなり苦めのキャラメル。その苦みと甘みが交わり、ワインとの相性も抜群。オーナーいわく、プリンにエッジが立つような硬さを目指したと言う。もはや、昭和でも平成でもない。次世代派プリンと呼ぶにふさわしい。
色々なプリンを紹介したが、好みのタイプを、ご自身にあった方法で作って楽しんでほしい。もちろん、何種類も作って、味比べをするのもアリだ。クリームや、カラフルなフルーツをたっぷりとトッピングして「マイ・プリン・アラモード」を作ることもお薦めしたい。
(世界料理探究家 T.O.ジャスミン)
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