2019年6月18日(火)

関西、名より実を取れ 刀CEO 森岡毅さん(もっと関西)
私のかんさい

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2019/3/19 11:30
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■低迷していたユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)の再建に携わった森岡毅さん(46)。復調したUSJを退任し、マーケティング支援会社の刀(東京・品川)を設立して最高経営責任者(CEO)に就いた。「いかに後悔なく生きるか」というモットーは、神戸大学時代の経験がもとになっている。

 もりおか・つよし 1972年福岡県生まれ。96年神戸大学経営学部卒業、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)入社。2010年にユー・エス・ジェイ入社、同社の再建に携わる。17年に刀を設立して現職。著書「苦しかったときの話をしようか」を4月に発売。

もりおか・つよし 1972年福岡県生まれ。96年神戸大学経営学部卒業、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)入社。2010年にユー・エス・ジェイ入社、同社の再建に携わる。17年に刀を設立して現職。著書「苦しかったときの話をしようか」を4月に発売。

大学生のころはバックパッカーとして世界を巡っていた。インドネシアのジャカルタからバリ島までヒッチハイクで移動したり、中東―パリ間をバス旅行したりしていた。インドネシアではデング熱にかかってしまい、救急車で運ばれたこともある。

大学の友人に中国からの留学生がいた。日本人以上に日本語に詳しく、聞いたことのない美しい言葉をたくさん教えてくれた。彼女は1995年の阪神大震災で亡くなった。火葬場で遺骨を拾いながら、死について深く考えた。

死は突然やってくる。常に死と背中合わせならば、やりたいことをやって生きたいと思った。驚くほどのスピードで復旧した阪急電車を見て、人間の強さも実感した。後悔なく世の中の役に立つ大きな仕事をしたい――。このころから経営者を志すようになった。

■森岡氏が得意とする「直感よりも確かなマーケティング」を支える独自の理論は、大学卒業後に入社したプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)で習得した。

就職活動では3社から内定をもらった。経験を最も早く積める会社はどこかを考えた結果、P&Gを選択した。私は追いつめられると力を発揮するタイプ。自分に負荷をかけられる環境として、マーケティングの道を歩みだした。96年の入社1年目に結婚し、98年に長女が生まれた。

仕事は厳しかった。当時はシャンプーのパッケージに女性を引きつけるキャッチコピーを考えていた。自身の性格から物事を感覚的にとらえることが大の苦手だった。しかし、マーケティングは消費者の心理に訴えかける活動だ。「向いていない」と言われたり、納期に間に合わず別の部署から苦情が来たりした。

電話をとれば怒られる毎日が続くなかで長女が生まれた。彼女を初めて抱えたとき、不思議と力がわいてきた。できないことから逃げず、自分の強みで補うにはどうしたらいいのかを冷静に考えた。そこで数学論を使って人間の感覚を定量的に検証し、直感に頼るよりも正確なマーケティング手法を身につけた。

長女が生まれ、仕事への意欲がさらに高まった(2000年ごろ)

長女が生まれ、仕事への意欲がさらに高まった(2000年ごろ)

■関西では2025年に国際博覧会(大阪・関西万博)が開催されるほか、カジノを含む統合型リゾート(IR)構想もある。海外から集客するには地域のブランドを確立する必要があると訴える。

世界の多くの観光地には「海」「ショッピング」というように集客の目玉が決まっている。例えば、バリ島は海になるし、ハワイは海もショッピングも楽しめる。関西では日本の伝統文化を体験できるほか、USJなどのエンターテインメントもある。IR誘致が実現したら、カジノなどのナイトライフが加わる。

目玉がたくさんあるのだから、集客に京都の知名度を活用しない手はない。世界には「KANSAI」よりも「KYOTO」のほうが知られている。電車で1時間圏内のエリアを「大KYOTO圏」としてブランディングしたほうがいい。大阪は国際空港やホテル、USJなどが立地する「コンテンポラリー(現代の)ゾーン」として打ちだしたらどうか。

いまの万博やIRの取り組みを見ると、個人的には「大阪」「関西」の名前を売ろうとしている印象を受ける。京都ブランドを生かしながら熊野古道や淡路島も加えれば、多面性が出てリピーターを取りこめるはずだ。PR活動では地名を知ってもらうことよりも、客単価を上げることが重要になる。

(聞き手は大阪経済部 川崎なつ美)

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