ドイツ銀、統合前進もいばらの道 労組・株主に反対論

2019/3/18 8:13
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【ベルリン=石川潤】経営再建中のドイツ銀行は17日、同じ独大手のコメルツ銀行と統合交渉を進めていく方針を正式発表した。ドイツ銀は単独での再生を探っていたが、業績回復の道筋が見通せないなか、政府の後押しを受けて経営統合にカジを切った。だが、大規模なリストラを懸念する労働組合が反対しているほか、株主の態度も分かれており、実際に統合を実現できるかはなお不透明な部分が残る。

独大手銀ドイツ銀行とコメルツ銀行は統合交渉を進めていく方針を正式に発表した=ロイター

独大手銀ドイツ銀行とコメルツ銀行は統合交渉を進めていく方針を正式に発表した=ロイター

「ドイツ、欧州市場をリードするグローバルバンクであり続ける」。ドイツ銀のゼービング最高経営責任者(CEO)は従業員に向けたメッセージのなかで、統合交渉に動いた理由を明確にした。ドイツ銀は相次ぐ不祥事などで業績が低迷し、経営不安までささやかれるようになっていた。じり貧を抜け出すためには、統合で存在感を再び高めることが不可欠との判断を余儀なくされた。

統合交渉を強く後押ししてきたのが独政府だ。中心にいるのが、ショルツ財務相とクーキース副大臣。ショルツ氏は中道左派のドイツ社会民主党(SPD)の所属だが企業寄りの保守派、クーキース氏は米投資銀行ゴールドマン・サックスの元幹部だ。2人が両行と会合を重ね、統合を暗に促してきたとされる。

政府にとって「強い銀行部門」(ショルツ財務相)を取り戻すことは、中小企業が中心のドイツ経済を引っ張っていくうえで欠かせない。仮にコメルツ銀がほかの海外銀行に買収されれば、ドイツ銀は統合相手を失うだけでなく、国内でも競争にさらされて厳しい立場に追い込まれるという危機感も、政府内ではじわり高まっていた。

政府はコメルツ銀行の株式の15%を保有する。ドイツ銀の株価が大幅に下がっているこのタイミングで統合に動けば、統合の条件が有利になり、ほかのコメルツ銀の株主の理解も得やすくなるとの思惑もあった。

だが、統合への道は平たんではない。ゼービングCEOは従業員へのメッセージで、現時点では交渉がどう転ぶかは「不確かだ」と慎重な立場を崩さなかった。「統合ありき」ではなく、ドイツ銀行の再生に向けた選択肢を点検していくというのが経営陣の基本姿勢だ。

大きなハードルになるとみられているのが、労働組合だ。ドイツ銀が9万人、コメルツ銀が5万人の従業員を抱えており、最大で3万人程度のリストラは避けられないとの指摘がある。統一サービス産業労組(ベルディ)は統合に反対の姿勢をいち早く示した。

株主の反応も読み切れない。両行の大株主である米投資会社サーベラスは統合を後押しする姿勢だが、ドイツメディアによると、ほかの大株主からは反対の声も出ているという。統合したからといってすぐに果実を得られるわけではなく、リストラの進め方などによっては経営が混乱し、かえって再建を遠のかせかねない。

まだ統合交渉は緒に就いたばかりで、こうした労働組合や株主らの不安や疑問に答えるだけの回答を両行の経営陣が持ち合わせていないことも、不透明感を強めている。

両行の統合が実現すれば、欧州で第3位の銀行グループが誕生する。グローバルプレーヤーの一角に何とか踏みとどまれるという見方もできるが、英HSBCや仏BNPパリバの背中は遠く、欧州でさえ圧倒的な存在感とは言いにくい。

統合で人員や店舗などのリストラ余地が高まるのは確かだが、それだけでは縮小均衡から逃れられない。統合に踏み出したからといって再建に向けた道筋が自動的に描かれるわけではなく、統合作業に忙殺されて競争力を一段と落としてしまう危うさもつきまとう。

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