2019年7月21日(日)

東北3県の大学への寄付金1.7倍(復興の実像)

大学
2019/3/17 20:44
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「災害が起きた時、正しく行動して被害をぎゅーっと小さくしましょう」。東北大災害科学国際研究所の助手、保田真理さんは各地の小学校で「減災」を教えている。同研究所は2014~18年度、防災知識を伝える出前授業を計179の小学校で行ってきた。

東北大の出前授業で学んだ防災知識を発表する児童(2016年7月、岩手県雫石町)

東北大の出前授業で学んだ防災知識を発表する児童(2016年7月、岩手県雫石町)

「防潮堤などのハード整備だけでなく、子供に災害に関する正しい知識や対応策を身に付けさせることが大事」と保田さん。授業ではスタンプラリーやイラストによる間違い探しもしながら防災を学ぶ。教材費などの原資になっているのが全国から集まる寄付金だ。同研究所は地震や津波の海外調査にも寄付を充てる。

使い道の自由度が大きい寄付金は大学にとって貴重な財源だ。岩手、宮城、福島3県に法人本部がある27校にアンケート調査をしたところ、震災前の09年度と比較できた19校のうち17年度時点で14校が増額となっていることがわかった。

19校の総額は25億2800万円で、09年度比で74%増。1校当たり平均額は1億3300万円だった。年度による増減はあるものの震災後は増加傾向にある。寄付の獲得には全国の大学が力を入れているが、1校当たりで見た全国立大への寄付は同期間に微増。私立大も20%程度の増加にとどまっており、被災地の大学の伸びは際だっている。

19校中、最も寄付金が多かったのは福島県立医科大(福島市)で14億3200万円。次いで東北医科薬科大(仙台市)の1億9600万円と医科系が並んだ。東北大は3番目に多い1億9500万円だった。

寄付金の増加幅は東日本国際大(福島県いわき市)が09年度の175倍、会津大(同県会津若松市)が14倍と大きい。両校とも震災前の金額は少なかったが、東日本国際大は復興支援として著名な研究者の協力が得られ、14年に「エジプト考古学研究所」を設立したことが呼び水となった。

会津大は震災を機に、地元有志の寄付が増えたという。寄付を募っている「会津大学生生活支援会」の宮沢洋一会長(63)は「生活が厳しく、大学をやめざるを得ない学生が多い」と指摘。「学生と地域の未来への投資として寄付を続けていく」と話す。

寄付の使い道としては、多くの大学が学生への経済支援を挙げた。東北福祉大(仙台市)は学納金の減免などに活用。18年度の入学者1513人のうち、延べ221人が入学金や授業料の減免を受けた。東北学院大(同)は震災で家族を失ったり、自宅が損壊したりした学生に最大30万円を給付。18年度で学生の2割が受給したという。

学生のボランティア活動支援に充てる大学も複数ある。例えば宮城教育大(同)は、学生が宮城県内の小学生などに無料の学習支援をする際の交通費や滞在費を支給している。

尚絅学院大(宮城県名取市)は「地域の復興に携わりたいと、地元での就職を希望する学生も多い」とする。被災地の大学への寄付は復興人材の育成を後押しすることになりそうだ。一方で寄付の増加は社会の期待の表れといえ、大学が負う責任は一段と重くなる。

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