2019年8月24日(土)

30年前のコンビニ店員、時給いくら?(平成のアルバム)
フロム・エー

2019/3/16 6:30
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「フロム・エー」に後から「フロム・エー TO Z」が加わった

「フロム・エー」に後から「フロム・エー TO Z」が加わった

学生が一番熱心に読んでいた雑誌はこれかもしれない。リクルートグループが発行していた「フロム・エー」。学生援護会(現パーソルキャリア)の「an」と並び、平成を彩ったアルバイト求人誌の代表格だった。

「火曜の朝イチでコンビニに買いに行った」と会社員の男性(39)は振り返る。東京都内で学生生活を始めた1999年、新しい家具に囲まれた一人暮らしのワンルームでPHSのリダイヤルを繰り返した。目当ては「丸1日働いて1万5000円くらいになった」という交通調査員。「人気の短期バイトはすぐ埋まる。スピード命だった」

「A 運送・配達ごくろうさん」「B やりたい冬休みのバイト」「C おまかせくださいフード業界」……。数千件に及ぶ求人情報は勤務条件ではなく興味別、嗜好別に振り分けられ、「かっこよく楽しい働き方」を提案。読み物記事も充実させ、ラジオで洋楽を流す冠番組を持ったり、音楽や演劇のイベントを開いたりと、若者文化やライフスタイルにも踏み込んだ。

「『今の若者はこういう背景を持っている』と我々が理解する意味でも重要だった」と初代編集長の道下裕史さん(68)は明かす。そこで得た若者像は求人企業向けの月刊誌「フロム・ビー」に集約され、当時出現した新しい若者たちとの距離感をはかりかねていた雇用者側の不安を和らげた。

新しい若者たちとは、就職せずにバイトで生計を立てる「フリーアルバイター」のこと。フロム・エーは「敷かれたレールを拒否して夢を持ち続ける究極の仕事人」と受け止め、85年ごろから「フリーター」と名付けて応援した。

ところが、バブル崩壊後の就職氷河期に、フリーターの意味は「正社員になれなかった若者」というマイナスの意味合いを持つ。政府は解決すべき社会課題と位置付け、「削減目標」を設定。最近はフリーターの高年齢化も指摘されている。

時代によって変わるバイト像。平成最初の89年1月24日号を開くと時給の低さに驚かされる。「書店販売員、時給500円以上」「コンビニ店員、時給570~800円」。平成が終わるいま、人手不足は深刻化し、都市部には時給1000円以上の求人があふれている。コンビニや飲食店では外国人従業員の姿も目立つようになった。フロム・エーは2009年に、ライバルのanも15年に休刊となり、求人情報の主戦場はインターネットに移った。

フロム・エー 1982年11月29日創刊。アルバイトのAや「基本のAから始める」という意味を込めた誌名は「当時社長だった江副浩正さんには反対された」(道下さん)。創刊当時の価格は100円。毎週火曜日発行だったが、バブル景気で求人広告が増えて製本できなくなったため、89年春から金曜日発行の「フロム・エー TO Z」が加わった。2009年の休刊時は関東、関西、東海の3地域で10万7000部を発行していた。

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