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大学スポーツ、自ら価値を再発掘し社会に問うとき
FIFAコンサルタント 杉原海太

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2019/3/21 6:30
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3月1日に一般社団法人「大学スポーツ協会」(UNIVAS)が発足した。高校の運動部には全国高等学校体育連盟(高体連)、中学の運動部には日本中学校体育連盟(中体連)という統括組織があるが、大学の運動部にはそういう組織がこれまでなかった。UNIVASは「大学スポーツの収益化」「学生の安全確保」「学業との両立」などを目的に掲げ、改革への第一歩を踏み出したようだが……。

2018年は大学スポーツから、日大アメリカンフットボール部のタックル事件のような問題が噴出した。大学の運動部がきちんとした法人格を持たずに昔からの流れで何となく慣習的に行われていること、それゆえに時代にそぐわない事件が起きる土壌が温存されていること、また事後の対応もなっていないさまを見ると、運動部といってもサークル活動とたいして変わらないのではないか。そんな印象を持たれた人は結構いるのだろう。

スポーツ庁の鈴木大地長官(左)にUNIVAS設立を報告する鎌田薫会長=共同

スポーツ庁の鈴木大地長官(左)にUNIVAS設立を報告する鎌田薫会長=共同

前回の当欄で私は「高校の部活動のバージョンアップが必要だ」と書いたが、大学スポーツもいろいろと刷新すべき点は多いようである。

現状、大学の運動部は任意団体で、運営はOBらの寄付金などで賄われ、伝統も人気もある部は、それなりにお金は循環しているらしい。大学の中に学業と競技の両立を目指せる環境があるのは素晴らしいことなので、大学当局も運営に正式に関わって、側面からでも運動部にガバナンス(組織統治)を利かせるのはいいことだと基本的には思っている。だから、始まる前からUNIVASのことを「どうのこうの」とケチをつける気はない。

カネは目的遂行のための手段

ただ、花形競技のアメリカンフットボールやバスケットボールの放映権料をテコに年間1千億円以上の収入を稼ぐ全米大学体育協会(NCAA)を手本に、大学スポーツの産業化が強調されることには一抹の不安を覚える。「米国の大学はこれだけ稼いでいる」「だから我らも日本版NCAAを」というのは筋としてあまりいい話ではないと思うのだ。カネはあくまでも目的を遂行するための手段であって、それ自体が目的になっては、逆立ちして歩くようなことになってしまう。

大学スポーツ関係者とミーティングを持つ機会はあるので、彼らが資金集めに苦労していることは私も理解しているつもりだ。練習環境をもっと整備したい、有給で有能なコーチをもっと雇いたい、アドミニストレーション(管理)の部門をもっと充実させたい……。そういう彼らの願いをかなえ、スポーツ団体を持続的に運営し発展させるために、お金が必要なのは自明のことだ。

一方で、スポーツ団体は、企業のように稼いだ利益を株主に還元することを目的にしているわけではない。たとえば、公益財団法人の日本サッカー協会は年間200億円規模の予算で動いているが、実入りの大半はサッカーの普及と育成と強化に再投資されている。団体の目指すところが公益にかなうために、スポンサーも安心して協力を申し出ることができる。プロ選手を抱えた日本サッカー協会でもそうなのだから、大半がアマチュア選手の大学スポーツの目的設定も産業化が前に出てくるのはどうかと思えるのだ。

それでは、大学スポーツのバージョンアップはどういう方向でなされるべきか。私は、やはりそれは、スポーツを通じた人間教育にあると思っている。

先日、ある大学ラグビー関係者と話す機会があったが、彼らの問題意識も「最優先すべきはここが大学であり、教育である」ということだった。

彼らがいうには、ラグビー部には監督がいて、練習メニューを考えたり、対戦相手を分析したりするスタッフもいて、練習はシステマチックになっている。が、ある意味、恵まれた環境になったがために、選手が自分の頭で考えなくて済む状況が生まれつつあるという。自分で考える力を養うことはプレーのパフォーマンスに影響する。特にラグビーのような刻一刻と状況が変化する競技では、主体的に動けるかどうかが肝になるにもかかわらず。

そう語った関係者は「そういう人材を社会に送り出した後のことも気になっている」という悩みも吐露された。

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