英議会「合意なき離脱」回避を可決 「延期」が次の焦点
メイ政権、議会で2日連続の敗北

2019/3/14 4:36 (2019/3/14 6:24更新)
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【ロンドン=中島裕介】英議会下院は13日夜(日本時間14日未明)、英国が欧州連合(EU)との合意なく離脱することに反対する動議を賛成多数で可決した。これを受けて英議会は14日に「合意なし」を回避するための対応として、3月末の離脱時期を延期するかどうかを採決する。英議会の意思が離脱延期で固まれば、企業が懸念していた経済の混乱の回避に一歩前進する。英・EUが延期で合意できるかどうかが次の焦点となる。

外国為替市場では採決の後、ひとまず経済の混乱が回避されるとの安心感が広がり、英ポンドが一時期、1ポンド=1.33ドル台後半と約9カ月ぶりの水準まで上昇した。市場は英議会の判断を歓迎したが、その裏で実はメイ首相は採決で12日に続く連敗を喫した。

英・EUの離脱協議はアイルランド国境問題を巡って膠着し、離脱予定日が約2週間前に迫っても混迷が続く。12日には英・EUの離脱案を英議会に示したが、1月に続いて大差で否決された。

これを受けてメイ首相は自身の2月末の発言に従い、13日に経済の混乱を防ぐために「合意なき離脱の回避」の是非を問う動議を提出した。だがメイ政権の案は「3月末にEUと合意なく離脱することに反対する」というもの。

ひとまず「3月末」の合意なき離脱の回避は約束するものの、離脱を延期した場合の保証はしていないと解釈できる内容だった。背景には「EUが嫌がる合意なき離脱のカードを持っていた方が、EUとの交渉力を維持できる」とのメイ首相の考えがある。

だがEU残留派を中心とする与野党超党派の議員グループがこれに反発し、「いかなる場合でも合意なき離脱を回避する」という議員提案を提出。この案が賛成321票、反対278票で可決した。同じ「合意なしの回避」を問う内容ではあるが、12日の英・EU案の否決に続く政府案の敗北。メイ首相の求心力の低下がここでも浮き彫りになった。

メイ首相は2回否決されても英・EUの合意案の手直しで、英議会の承認を勝ち取る意向を崩していない。13日の採決後には「私たちが数日以内に議会で打開策を見いだせなければ、延期は長期にわたるだろう」と強調した。

5月に欧州議会選がある点にも言及し「長期延期になれば、(離脱協議をしているのに)英国も欧州議会選に参加する必要が出てくる。これは正しいことではない」と訴えた。英・EUの離脱案に賛同しないと、EUの仕組みから日に日に抜けにくくなるという主張だ。だが脅しに近い情報で議員の支持を得ようというメイ首相の手法は効かなくなっている。

離脱の延期にはEU全加盟国の承認が必要になる。このため14日の採決で延期が可決されれば英政府はEUに延期を申し入れ、21日からのEU首脳会議で延期期間など条件面の協議に入る見通しだ。ここで英・EUが延期で合意できるかが焦点になる。

EU側は延期協議には応じる姿勢だ。だが「なぜ延長するのか」(バルニエ首席交渉官)と英側の合理的な延期理由が欠かせないとの意見が大勢を占める。英とEUが延期理由や期間で合意を得られず、偶発的に3月末に合意なき離脱に陥る可能性は残っている。

もっとも13日の英議会でいかなる場合でも「合意なし」を回避することを可決したとはいえ、延期後の新しい期限までに何も合意を得られなければ「合意なし」は避けられない。

EU残留派は合意なしの回避を盾に2度目の国民投票の要求を強める。23日には再投票を求める大規模なデモも予定する。最大野党・労働党は「首相退陣がEUとの合意の近道」との理屈で、政権打倒を主張し続ける。13日の採決は「3月末危機」の回避につながる意味では大きいが、英政治の混迷を打開する切り札にはならない。

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