トヨタ労使交渉、異例の回答日決着 労使トップに聞く

2019/3/13 22:05
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トヨタ自動車の2019年春季交渉は成長への危機感に対する認識やベースアップ(ベア)のような一律の賃上げの考え方などを巡って労使で溝が大きく、決着を13日の回答日まで持ち越した。決着に至る考え方などについてトヨタで総務・人事本部長を務める上田達郎執行役員とトヨタ労組の西野勝義執行委員長に聞いた。

トヨタ自動車の上田達郎執行役員(13日、愛知県豊田市)

トヨタ自動車労働組合の西野勝義執行委員長(13日、愛知県豊田市)

トヨタの上田執行役員「トップと幹部、組合員の中で距離感あった」

――ベア非開示などグループ各社の格差是正が課題だ。

「トヨタの話し合いをグループ各社に理解してもらうために、自社サイトで実際の交渉を映像を含めて紹介する取り組みを始めた。何百円の攻防ではないということだ」

――交渉は回答日まで続いた。

「豊田章男社長など会社のトップとそれ以外の幹部、組合員の中で距離感があった。これが今年は一番大きかった。これをどう埋めていくかについて話し合いをしてきた」

「3回目の労使交渉を踏まえて組合側だけでなく、会社の役員、部長、室長など基幹職以上が集まって何が足りていないかしっかり(マネジメント層も)1週間話し合いをし、13日の朝それぞれでしっかりもう一度確認し合って回答に至った。労使が折り合えるところまでとことん話し合って金額を決めている」

――人事制度全般について議論する専門委員会を立ち上げます。

「春季交渉自体が目的なのではなく最終的には日本のものづくりを守ることが目標だ。一番いいやり方を考えて変えていく。前例踏襲ではなく一度リセットして労使で議論しようというのが立ち上げの趣旨だ」

■トヨタ労組の西野執行委員長「要求方式変え、とれたところはあった」

――会社側は一律賃上げに難色を示していた。

「より頑張った人に配分したいという会社の考えは、否定するものではない。今後、専門委員会を立ち上げて議論していく。トヨタでこれまで賃金制度の見直しが全然やられていないわけではない。それぞれの時代をみながら議論していきたい」

――今回からベア額を開示しない総額要求方式に変えた。この評価は。

「いろんな個別の賃金課題については、前向きに回答いただいた。要求方式を変えたことで、とれたところはあった。(ベアの非開示で)企業間の格差の是正につながったかはわかりにくい部分があるが、グループの中には個社の賃金課題で要求を行い、議論が充実している会社もあるという話も聞く。(来年も同様の要求方式かは)来年は年々で考えていきたい」

――交渉の決着が回答日までずれ込んだ。

「トヨタを取り巻く環境を議論する上で、会社側が距離感を感じたという考えからすると、我々の危機意識が薄かったのかなと思う。トヨタは水準ではなく、労使で会社をどうすべきかを議論しているが、年々難しい議論になってきている」

――プロ人材の獲得については。

「年々で課題が高まってくれば、考えていかないといけない」

――今回の回答に対する評価は。

「見た目でいくと昨年から1000円下がっているが、昨年と今年の回答の中身は単純に比較できない。我々がこだわってきた全員に配分される賃金の部分は当然、入っている。回答の1万700円の多くは賃金が占める。個別課題への回答も含め前向きに回答いただけた部分もあり、下を向いているわけではない」

――一時金の回答に対する受け止めは。

「今回、会社とは競争力強化に向けて議論をしてきた。我々の主張の仕方が細かいところに行き過ぎて、会社の期待するレベルとギャップが出たかなと思う。今の断面では『生きるか死ぬか』の状況の認識で隔たりがあった。継続協議は異例のかたちだが、我々の要求の6.7カ月分が消えたわけではない。秋の協議に向けてしっかりやっていきたい。職場と一緒に競争力強化に向けそれぞれが何をすべきか一緒に取り組んでいく」

記者の目)経営側、「CASE」時代にらみ危機感強く

13年ぶりの回答日決着となったトヨタ自動車の春季労使交渉。13日朝、ぎりぎりまで続いた交渉では、つながる車や自動運転など次世代技術「CASE」時代の本格到来を控え、経営陣の強い危機感が目立った。

「創業の原点を見失った会社が大変革の時代を生き抜くことなどできない」。豊田章男社長は13日の交渉で社是である豊田綱領を引きながら厳しい顔つきで話した。

労使でベアを非開示にした点も今回の交渉の特徴だ。非開示の交渉手法はアイシン精機などグループ各社に広がりつつある。総額重視の交渉では賃金以外の課題の話し合いを深められる、というトヨタの狙いが奏功している面もある。ベア偏重と距離を置くトヨタ式の労使交渉は今後、自動車以外の業界にも広がる可能性がある。

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