2019年3月24日(日)

対ベネズエラ、米国が包囲網強める
金融制裁で原油輸出抑え込む

中南米
2019/3/13 19:30
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【サンパウロ=外山尚之】トランプ米政権が南米ベネズエラのマドゥロ政権への退陣圧力を強めている。外貨獲得手段である原油の米国向け輸出を制限したのに続き、米国以外への輸出も抑え込むために同政権を支える海外金融機関への制裁を予告した。米国は世界50カ国以上とともに野党指導者を暫定大統領として承認した。ベネズエラ産原油の輸入国も巻き込み、包囲網強化を急ぐ。

ベネズエラ国営石油会社PDVSAの石油採掘設備(西部ラグニジャス)=ロイター

「数日以内に、非常に重大な追加制裁を目にすることになるだろう」。ベネズエラ問題を担当する米国のエイブラムス特使は12日、記者会見で宣言した。具体策として、同特使はすでに「金融機関への制裁を準備している」と表明していた。

制裁の狙いは米国以外の第三国への原油輸出も制限することだ。米国はマドゥロ政権の原油輸出を支える金融機関のドル決済を制限する構え。金融機関は国際決済通貨のドルを使えなくなれば、国際業務で大打撃を受ける。金融機関に制裁をちらつかせることの効果は、イランの原油輸出を標的にした米国の制裁で証明済みだ。

焦点はベネズエラからの原油輸出の2割を占めるインドの動向だ。同国にはロシアの国営石油ロスネフチが出資する石油会社があり、ベネズエラ産原油の受け皿となっている。ポンペオ米国務長官は11日、インドを名指しして「マドゥロ政権の生命線にならないよう求めている」と述べた。

すでに4割を占める最大の輸出先である米国は、1月28日に国営石油会社PDVSAへの制裁を発動して大幅に輸入を制限。民間シンクタンクのエコアナリティカの分析によると、べネズエラの2月の原油輸出は制裁で前月比約19%減となり、過去80年で最低の日量93万バレルに落ち込んだ。

マドゥロ政権の後ろ盾となってきたのは中国とロシアだ。苦境に陥った同政権は中国への原油輸出拡大を図ったが、米国との貿易協議への影響を恐れる中国側は応じていない。米国は11日にロシアの銀行エブロフィナンス・モスナルバンクに制裁を発動し、同国とベネズエラの間の資金流通にもくさびを打ち込んだ。

米国はコロンビアやブラジルなどベネズエラ周辺国も含む50カ国以上とともに、マドゥロ政権に抵抗する野党指導者のグアイド国会議長を暫定大統領として承認。マドゥロ氏への退陣圧力を強めてきた。

民間世論調査によるとグアイド氏は国民の61%から支持され、14%のマドゥロ氏を引き離す。こうした状況下、マドゥロ政権の命綱となっているのが軍の支持だ。マドゥロ氏は石油利権を軍幹部に分配し、支持をつなぎとめてきた。米国は原油輸出を妨げ、石油利権を突き崩すことで軍幹部の離反を招きたいようだ。

もっとも、軍幹部は反政権デモの弾圧でも政権と一体化しており、いまさら反政権側に回りにくいとの見方も根強い。

マドゥロ政権は足元でさらに強硬姿勢に傾斜している。マドゥロ氏に近いサーブ検事総長は12日、大規模停電に関与した疑いで、グアイド氏への捜査を開始したと発表した。マドゥロ氏は「米国のサイバー攻撃が停電の原因だ」と主張し、否定するジャーナリストの身柄を拘束するなど言論弾圧も強化している。

マドゥロ氏が米国への抵抗を続ける場合、制裁が国民生活に影響を与えるのは避けられない。7日の大規模停電発生から丸5日たった12日時点でもインフラの復旧は遅れ、断水も深刻だ。商流のまひや冷蔵施設の機能停止で、食料不足やインフレにも拍車がかかる。

マドゥロ政権は米国など海外からの人道支援物資の受け取りを拒否する一方、コロンビアやブラジルとの国境も閉ざし、ほとんどの国民は逃げ場がない状態だ。トランプ政権は制裁の拡大で早期決着を狙うが、時間がかかれば米国内外で「トランプ氏がベネズエラの人道危機を深刻化させている」との批判が高まる可能性も指摘されている。

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