2019年8月23日(金)

投信、進む個人離れ 2月、2年2カ月ぶり流出額
AI投信、人気に陰り

2019/3/13 20:00
保存
共有
印刷
その他

個人の資産運用の受け皿となる投資信託から資金が流出している。誰でも購入できる公募の株式投信は2月に2821億円の流出超になった。金額としては2年2カ月ぶりの大きさ。人工知能(AI)やロボティクス関連など、主力の投信の売却が目立つ。個人にはなお投信を短期売買する傾向が強く、「稼ぎ頭」が不在の投信業界の苦境が深まりそうだ。

投資信託協会が13日、2月の投信概況を発表した。投信のタイプ別を見ると、海外株に投資する株式型の流出額が494億円と2016年12月以来の高水準となった。一方、株高による時価の押し上げ効果で、上場株式投信(ETF)を除く公募株式投信の純資産総額は63兆8436億円と1月より2%増えた。

年明けから株式相場は回復してきたが、この過程で「18年末の急落時に売りそびれた個人が売りを膨らませた」(ニッセイ基礎研究所の前山裕亮氏)という。16年12月に資金が流出した際は、トランプ米大統領の当選後の株高で個人の利益確定売りが出た。その後も株式相場の上昇が続き、個人マネーが回帰した。今回は世界景気の減速懸念が強く、株高期待の後退で投信離れが長期化する恐れもある。

特に個人マネーが流出しているのは、ここ数年人気を集めたAIやロボティクスの投信だ。日興アセットマネジメントの「グローバル・ロボティクス株式ファンド」は18年1月に運用残高が合計1兆円を超えたが、直近は9000億円程度となっている。三井住友アセットマネジメントの「グローバルAIファンド」も資金が流出している。

背景には昨年末の世界的な株安など、不安定さを増す株式市場への警戒感がある。埼玉県の60代男性は2月、日興アセットのロボティクス投信を売却した。地銀で購入したのは2年ほど前。世界的にハイテク株が盛り上がり始めた時期だが、昨年末の株価急落で投信の価格が大きく下げた。結局、手数料などを差し引くと損失が出たという。

AI関連は次世代につながる長期テーマとして、証券や銀行などの販売会社が拡販してきた。巨大企業の「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)やエヌビディアなどを組み入れ、個人マネーが流入した。購入時の販売手数料は3%台と高く、投信業界の収益源になってきた。

だが、新規の設定からまだ数年で資金が流出超に転じたのは、個人の短期志向が根強いことを映す。ファイナンシャルスタンダードの鈴木頼長氏は「テーマ型はわかりやすく見えるが、実際に個人投資家が投信の中身を理解しているかは不透明だ」と指摘する。個人マネーの流出入が激しいテーマ型について、長期の資産形成を重視する金融庁が問題視する可能性がある。

投信業界もビジネスモデル転換に動いてはいる。新しい投信を次々と出して顧客に回転売買を促すのではなく、長く持ち続けられる既存の投信を主軸にするのが柱だ。18年は新規設定の減少や規模の小さい投信の早期償還が進み、投信総本数は14年ぶりに減少した。

もっとも長期投資が進むほど、販売手数料の減少で投信業界の利益は圧迫される。利幅の厚いAI型などの販売に注力してきたのは、利益の下支え役を見込んでのことだ。この「人気商品」も曲がり角を迎えたことで、投信業界の手詰まり感が一段と強まる公算が大きい。

(佐藤亜美)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]

日本経済新聞社の関連サイト

日経IDの関連サイト

日本経済新聞 関連情報

新しい日経電子版のお知らせ

より使いやすく、よりビジュアルに!日経電子版はデザインやページ構成を全面的に見直します。まず新たなトップページをご覧いただけます。

※もとの電子版にもすぐ戻れます。