神鋼、不正の代償なお重く データ改ざんで判決

神戸製鋼所のアルミ・銅製品の品質データ改ざん事件で不正競争防止法違反(虚偽表示)の罪に問われた法人としての同社に、立川簡易裁判所は13日、求刑通り罰金1億円の判決を言い渡した。2017年10月に発覚した事件は1つの区切りを迎える。神鋼は再発防止に向けた検査体制の見直しを進めるが、生産効率が低下するなど業績回復は厳しい状況にある。
神鋼は同日、「この判決を厳粛に受け止め、再発防止策の実行にグループをあげて取り組む」とのコメントを発表した。
今回の事件は国内外の600社以上に出荷されたアルミ・銅製品で品質検査に関する証明書を数十年前から組織的に改ざんしていた。国内で相次いだ企業の品質不正の発覚の引き金となった。
不正から1年超。神鋼は再発防止策を策定し、工場での品質保証の仕組みを見直した。試験や検査装置の自動化を進めているほか、納期や利益を優先して無理な受注をしていた体制も改めた。
ただ、新たな対策を講じたことで「生産現場が混乱している」(勝川四志彦取締役)のが事実だ。「不正ありき」だった現場に手を入れたことで歩留まりや生産効率の低下を招き、結果的に受注を逃したり、生産量が減ったりしている。
2月に発表した19年3月期のアルミ・銅事業の経常損益見通しは40億円の赤字(前期は118億円の黒字)で10月の予想から赤字幅は倍増する。不正の影響に加え、中国の景気減速で半導体製造装置に使うアルミ素材の販売も減り、収益回復の道のりが厳しい状況だ。
神鋼の山口貢社長は「まずは信頼回復が最優先」と強調する。各事業所を社長が回り、社員と対話するなど、不正の教訓を風化させない取り組みを継続。検査自動化などの再発防止策で100億~200億円を計上したが、今後の成長投資などを勘案すれば、収益基盤の強化に向けたさらなる資産売却も不可欠となる。
神鋼の不正発覚が引き金となった製造業での不正発覚ドミノは止まる気配がない。3月にはIHIで航空機エンジン整備の検査不正が発覚。IHIや神鋼に共通するのは、過去にもデータ改ざんなどの不正があったにも関わらず教訓を生かせていない点だ。受注の増加や利益優先主義のなか、現場の人手が追いついていないことも背景にある。人が減った製造現場への負荷の高まりも不正の連鎖を招いており、突きつけられた課題は多いといえる。
(川上梓)