2019年6月18日(火)

トヨタとJAXA、国際宇宙探査で協業 有人探査車開発

2019/3/12 23:30
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トヨタ自動車と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12日、月や火星などの宇宙探査での協業を検討することで合意したと発表した。燃料電池車(FCV)の技術を活用し、月面を移動する有人探査車を開発する。国際宇宙探査は米国が主導し、多くの国が協力してプロジェクトが進む一方、中国の追い上げも激しい。日本としては民間との協力関係を築き、いかに存在感を示すかが課題となる。トヨタとの協業は民間の参画を促す「呼び水」となりうる。

対談後、記念写真に納まるトヨタ自動車の寺師茂樹副社長(右)とJAXA理事で宇宙飛行士の若田光一氏(12日、東京都港区)

対談後、記念写真に納まるトヨタ自動車の寺師茂樹副社長(右)とJAXA理事で宇宙飛行士の若田光一氏(12日、東京都港区)

第1弾として開発を検討するのは「有人与圧ローバ」という探査車。全長が6メートル、幅が5メートル強の大きさで、宇宙服を脱いで過ごせる4畳半ほどの居住空間も備える。FCVの技術を活用し、地球から運んだカートリッジに入った水素と酸素を交換しながら、合計で1万キロメートル以上の月面走行が可能だ。トヨタの宇宙での本格的なプロジェクトの参画は初めてとなる。

宇宙開発は月の探査や資源利用を目指す新たな局面に入っている。JAXAの構想では2029~34年に5回に分けて実施予定の有人探査で、探査車を使いたい考え。自動運転技術も盛り込む方向で、有人探査をしない間は次の目的地まで自動で探査車が移動する。

月面ではクレーターや崖が存在するほか、地球よりも過酷な温度環境などにさらされ、この中で長距離を走行することが求められる。こうした中で車の耐久性に加え、FCVや自動運転などの先進技術を試すことで、トヨタは技術力の底上げにつなげる。寺師茂樹副社長は「宇宙開発は高度な技術力が試される道場」と期待を語った。

世界の宇宙プロジェクトは競争が激しい。中国は宇宙産業の育成を掲げ、1月に無人探査機「嫦娥(じょうが)4号」を月の裏側へ世界で初めて着陸させた。

けん引役の米国では「官から民」へと担い手の裾野が広がりつつある。月への物資輸送や着陸機の開発に企業の技術を生かす方針を打ち出している。米航空宇宙局(NASA)だけでも約2兆円の宇宙開発の予算があるが、それでも企業の技術を取り入れるのは開発のスピードを加速するためだ。民間の開発効率の高さは宇宙開発の期間やコストの圧縮に役立つ。

一方、日本の宇宙開発予算は政府全体で約3000億円にとどまる。「日本の技術力を結集してチームジャパンとして取り組むことが重要」(若田光一JAXA理事)。世界を代表するトヨタの協力表明は、様々な企業に宇宙開発への参画を促すきっかけになりうる。

実際、日本企業が宇宙ビジネスに参画する事例は増えている。月の探査機を開発するスタートアップ企業のispace(アイスペース、東京・港)は米スペースXとロケット打ち上げ契約を結んでおり20年半ばに月を周回する探査機、21年に月面に着陸する探査機の打ち上げを予定する。

低コストで安定的に宇宙に探査機を届ける打ち上げ輸送でも競争力の引き上げが進んでいる。三菱重工業はJAXAと組み、次期基幹ロケット「H3」の価格を現行のH2Aに比べて半値にする目標を掲げる。競争力のある価格を実現するため、「簡素化・汎用化・共通化」を掲げ、航空機や自動車などの量産部材を活用。20年度に打ち上げ試験をする計画だ。

参入企業が増えれば、日本の宇宙産業の裾野は広がる。政府は国内の宇宙産業を現在の1.2兆円から30年代の早期に倍増する目標を掲げている。企業にとっても技術が過酷な宇宙環境での利用で磨かれ、新たな技術革新や商機をもたらす可能性がある。(押切智義、加藤宏志、星正道、山田遼太郎)

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