春季労使交渉きょう回答 賃上げの行方は(ドキュメント)

2019/3/13 7:00 (2019/3/13 21:46更新)
保存
共有
印刷
その他

2019年の春季労使交渉が13日、集中回答日を迎えた。自動車や電機、小売りなどの主要企業がベースアップ(ベア)や一時金を回答する。米中貿易摩擦の影響などで世界経済の不透明感が強まり、国内では人手不足などの課題が山積するなか、大詰めの交渉をしてきた会社側と労働組合側はどのような答えを導き出すのか。トヨタ自動車は回答日の13日朝まで交渉を続けるなど異例の展開となった。回答現場の一日を追う。

19時25分

@UAゼンセン本部 流通や外食、繊維などの労働組合でつくるUAゼンセンの記者会見が始まった。木暮弘書記長は「前年と比較できる組合での妥結状況は前年を上回っている。特徴的なのは、今年もパートの組合員が正社員を超えた割合で妥結していることだ」と述べた。

17時

経団連の中西宏明会長は2019年春季労使交渉の集中回答について記者団の取材に応じ、「多様な方法から各社の実情に合った方法をとるという真剣な折衝の結果が出ている。賃上げをやっていこうという基本的なモメンタムはきちんと守れたんじゃないか」と述べた。米中貿易摩擦などで世界経済の先行きが読みにくいが、「いまの国際情勢では経営者心理としては相当不安になるなか、(回答は)かなり前向きだ」と話した。中西氏は経済のグローバル化とデジタル化が進む中では働き方改革など総合的な処遇の改善に焦点を当てて社員のやりがいを高める重要性を強調してきた。「会社側はこういう職能を備えてほしいと伝え、個々は自分のキャリアは自分でつくっていくということで自分の能力を磨く。そうすると平均でいくらということではなくなり、仕事に応じて市場で決まることになる」と語った。

コマツは定期昇給が6000円、ベースアップは2000円で妥結したことを明らかにした。60歳から65歳への定年延長については単なる5年間にとらわれず、若い世代を含めた全世代での賃金や定年延長を含めた人事制度の大幅な見直しを今後協議することが決まった。過去10年でこうした大幅な人事制度改定はない。コマツユニオンの松尾大吾中央書記長は「育児や介護、時短勤務などさまざまなニーズを加味したい」と話した。

16時

連合の神津里季生会長は13日までに出そろった春季労使交渉の回答状況について「かつての春闘では代表銘柄の賃上げ水準が天井を形成し、全てに波及する傾向があった。ここ数年は必ずしもそうではなく、とりわけ今年はその傾向があった」と総括した。自動車大手の労組が統一闘争を見送ったことなどを踏まえた。各社の回答水準については「要求との対比で言えば物足りない」と不満を漏らした。一方、今回の労使交渉では中小との賃金格差是正を訴えていることを踏まえ「サプライチェーンの中で適正分配するという我々の主張に(中小企業の交渉が本格化する)これから応ええてほしい」と述べた。

機械・金属関連の中小メーカーを中心に構成するJAM(ものづくり産業労働組合)の記者会見が始まった。公表した労使交渉の状況によると、組合員が300人未満の労組は月1774円、100人未満は同2112円のベアを獲得した。ともに全体平均の同1707円を上回っている。ただ、賃上げ要求をした全単組数974のうち、回答を得たのは116単組にとどまる。安河内賢弘会長は「中小の春闘はここからが本番。大手を上回る傾向を交渉の最終段階まで維持できるよう頑張りたい」と語った。

15時30分

トヨタ自動車グループ企業の労働組合でつくる全トヨタ労働組合連合会とトヨタ労組の記者会見が始まった。トヨタ労組の西野勝義執行委員長は、回答日まで決着を持ち越したことについて「賃金では全員に配分されるかどうか、一時金では冬の分が継続協議になったが水準について話し合いをぎりぎり早朝まで進めた」と話した。西野氏は「交渉では競争力強化について議論してきたが、我々の主張に細かいところがあり、会社の期待するレベルとギャップが出た」と振り返った。組合側の幹部は厳しい交渉を経て一様に疲れたような表情をみせた。

15時

王将フードサービスが正社員を対象に一人あたり月平均1万2677円の賃上げで妥結したと発表。5期ぶりに要求額を上回る回答で、賃上げ総額・率で前年を上回った。

14時30分

労使交渉の回答状況をボードに書き込む金属労協の職員(13日午前、東京都中央区)

労使交渉の回答状況をボードに書き込む金属労協の職員(13日午前、東京都中央区)

@自動車総連 記者会見で日産労組出身の高倉明会長は、日産のベア満額回答について「私が日産労組の委員長をやっていた時も満額以外は受け取ったことがない。やってくれた」と述べた。「日産はいま大きな問題を抱えているが、『新体制で新たなスタートを切るために皆で頑張ろう』という経営のメッセージだと受け止めている」と語った。一方でトヨタ自動車の回答額が18年実績を下回るなど、各社のばらつきについては「自動車総連は統一交渉をしていないのでばらついて当然だ」とした。金子晃浩事務局長は働き方改革について「労働時間の短縮や育児と介護支援など具体的な論議が進んだ。ダイハツ工業のように勤務間インターバルを導入する労使も増えた」と語った。

14時

トヨタ自動車の交渉決着後に会社側が開いた記者会見が始まった。会見の冒頭で、今日の交渉の様子が映像で紹介された。映像では豊田章男社長が社是の豊田綱領を引用しながら「創業の原点を見失った会社が大変革の時代を生き抜くことなどできない」などと厳しい顔で語った。総務・人事本部長を務める上田達郎執行役員は「会社のトップとそれ以外の幹部、組合員の中で(会社の成長への危機感に対する)距離感があったということが今年は一番大きい。それをどう埋めていくかということについて話し合いをしてきた」と回答日まで決着がもつれた理由を話した。

13時すぎ

@金属労協 18年実績より500円低い1000円でベアを妥結した電機連合。野中孝泰・中央執行委員長は「会社側は『賃上げ以外の処遇改善も選択肢だ』と譲らず、大変難しい春闘だった。例年ならまだこの時間には交渉が終わっていない労使も多いが、本日は既に全て(回答額が)埋まったホワイトボードを見て鳥肌が立つ気持ちだった」と険しい顔だ。

@東京・丸の内 日立製作所の中畑英信執行役専務は本社で取材に応じ、「売上高の1割を占める中国の景気減速など、世界経済の不安定さが増している」と述べた。日立は1000円のベア実施で妥結したと発表。前年実績を500円下回った。ベアと定昇を合わせた賃上げ率は月額ベースで2%となった。一時金の回答は6.3カ月分(要求6.4カ月分)だった。前年の6カ月分より増え、金額、月数ともに過去最高となった。働き方改革ではサテライトオフィスや在宅勤務制度を利用しやすい環境を整えるほか、育児や介護と仕事を両立できるようにする各種施策を提供している。

~13時

@自動車総連 総連内部のホワイトボードでも回答状況の書き込みが始まった。

12時30分

@金属労協 記者会見が始まった。現時点で集計対象53組合中、36組合が回答を引き出し、賃上げ額の平均は1373円。高倉明議長は「交渉では産業構造の変化への対応や生産性向上の取り組み、働き方の見直しなど、労働条件にとどまらない広い論議が繰り広げられた。そのため賃上げ交渉は最終局面までもつれこんだ」と語った。会見では、ものづくり関連の各産別労組のトップも並び、それぞれが妥結額の受け止めを語った。自動車総連の高倉明会長は「先行きが不透明ななか、会社側は厳しい姿勢を最後まで崩さなかった。満額回答もあった一方で、前年実績に届かなかった労使もあったがギリギリまで交渉した各単組にとってどれも最大限の結果を引き出した」とまとめた。

12時すぎ

三菱重工業では定期昇給分を除く1500円の賃金改善で労使が妥結。年間一時金は社員平均5.8カ月とした。

SUBARU(スバル)が回答。ベースアップに相当する賃金改善分は1000円と18年実績の1300円を300円下回った。同社は完成検査の不正問題が長引いている。同じく問題があった日産自動車がベア3000円の満額回答したのとは対照的な結果となった。

11時30分

@金属労協 「カルロス・ゴーン被告の事件で揺れる日産の回答が出ました!満額です!」。自動車の欄で初めて日産自動車が書き込まれると、テレビ局のカメラが次々と中継や収録を始めた。静かだった事務所内もざわつき、「あらためてゴーン氏の報酬は桁が違いすぎるよね」といった声も聞こえてきた。

11時

「すき家」など展開する外食最大手ゼンショーホールディングスが正社員を対象に月1300円のベアを実施することで妥結したと発表。7年連続のベアになる。

@金属労協 電機大手ではまず三菱電機の欄が埋まった。30歳相当の開発設計職の賃金が32万500円で、一時金は5.89カ月(要求は6.43カ月)。ベアに相当する改善額は、電機連合の統一交渉で妥結した1000円(要求は3000円)で、18年回答を500円下回った。このほか、OKI富士電機などが書き込まれた。

~11時

日産自動車が組合に回答。ベースアップに相当する賃金改善分は3000円と、組合要求に2年連続で満額回答した。元会長のカルロス・ゴーン被告の問題で揺れる同社。従業員の士気向上につなげたい狙いもあるようだ。

@金属労協 ホワイトボードへの、今年の妥結額の書き込みがようやく始まった。最初はオークマ(ベア2438円)。このほか島津など機械や金属関連の中小企業の労組で構成するものづくり産業労働組合(JAM)の加盟組合の欄が次々と埋まっていく。

9時30分すぎ

トヨタ自動車の春季交渉で会社側が1万700円の賃上げを回答し交渉が決着した。組合は1万2000円を要求していた。賃上げに慎重な姿勢を崩さなかった会社側と、一律配分にこだわった組合側で溝が大きく、将来への危機感の認識の差も埋まらず交渉が難航。06年以来となる回答日当日まで交渉がもつれる異例の展開となった。豊田章男社長は「創業の原点を見失った会社が大変革の時代を生き抜くことはできない」と述べ、通年で労使での話し合いを続ける考えを示した。

9時

@金属労協 主要製造業の労働組合で構成する金属労協の事務所(東京・中央)がオープン。トヨタ自動車やパナソニックなど各社の回答状況を書き込むホワイトボードの準備が整い、目の前には職員が2人、速報の電話を待っている。既に30人以上の報道陣が詰めかけた。

@愛知県豊田市 4回目の労使交渉がトヨタ自動車の本社で始まった。回答日当日まで交渉が持ち越したのは2006年以来。決着に至るのか、注目が高まる。

(指宿伸一郎、工藤正晃、京塚環、大本幸宏、川上梓、古川慶一、矢尾隆行、石橋茉莉、中藤玲、佐藤初姫、西岡杏、清水孝輔)

保存
共有
印刷
その他

電子版トップ



[PR]